
新米の季節になりました。近年では白米の価格高騰もあり、玄米や発芽玄米、麦ごはんなど、
白米以外の主食も注目されています。今回は、それぞれの特徴と取り入れ方をご紹介します。
特徴
「玄米」
稲穂を乾燥させて籾殻を外したお米です。白米では取り除かれる外皮や胚芽部分が残るので、栄養価が高く白米に比べるとビタミンやミネラルなどが多いことが特徴です。栄養価は高いですが、よく噛んで食べないと消化が悪いため、胃腸に負担をかけます。6時間以上しっかり浸水させてから炊くともっちりした食感になり、圧力鍋や土鍋で炊くとふっ
くらしておいしい玄米ご飯になります。
「発芽玄米」
玄米を発芽させたお米です。発芽の際に眠っていた酸素が活性化し、さらに発芽のために必要な栄養が内部に増加し、糖分やたんぱく質も分解されて、玄米より甘味やアミノ酸が増した玄米になります。発芽が始まると胚乳やそれを包んでいるぬか層が柔らかくなるため、白米と同じ水分量で炊くことができ、玄米より浸水時間が短く、柔らかい食感で食べられます。
食物繊維は、白米・玄米・胚芽米の中で最も多く、白米の6倍です。![]()
「麦ごはん」
麦ごはんの中でも特に取り入れやすく、人気が高いのが「押し麦」や「もち麦」です。
どちらも大麦を加工したものですが、風味や食感、栄養面に少しずつ違いがあります。白米に混ぜても食べやすく、腸内環境改善や血糖値コントロールなど健康づくりに役立つことから注目されています。最近ではコンビニおにぎりや弁当などでも取り扱いが増えています。
・押し麦
押し麦は、大麦を蒸して平たく押しつぶしたもので、白米となじみやすく、あっさりとした食感が特徴です。炊くとふっくらして冷めてもおいしく、お弁当やおにぎりにも向いています。
不溶性食物繊維だけでなく水溶性食物繊維が多く含まれ、水溶性食物繊維のβ-グルカンが含まれることが特徴です。
・もち麦
もち麦は、大麦の中でももち性(粘り)のある品種で、プチプチ・もちもちした食感が特徴です。白米に混ぜると見た目にもきれいで、噛みごたえがあり、満腹感が得られやすい穀物です。水溶性食物繊維のβ-グルカンは押し麦よりも多く含まれ、腸内の善玉菌を増やす働きも期待され、「腸活」食
材としても人気です。
栄養的な特長
精米の度合いや加工方法の違いによって栄養価や食感、健康効果に差があります。
玄米や発芽玄米、麦ごはんはいずれも食物繊維を豊富に含み、白米では不足しやすいビタミンB群やミネラルも補えます。普段の主食を玄米や麦ごはんに変えるだけで、無理なく栄養価を高めることができます。

食物繊維
白米と比べて、玄米や麦ごはんには約4~6倍の食物繊維が含まれています。
例えば、麦ごはん1杯でおおよそ1食に必要な食物繊維を摂ることができるため、普段のご飯を玄米や麦ごはんに置き換えることで、不足しがちな食物繊維を手軽に補うことができます。

特に麦ごはんに含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を含み、β-グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富です。
このβ-グルカンは、小腸で糖や脂質の吸収をゆるやかにし、血糖値や血中コレステロール値の上昇を抑える作用が期待できます。
ビタミンB1
ビタミンB₁は、糖質をエネルギーに変える際に欠かせない栄養素で、疲労回復や集中力の維持にも関わります。中でも玄米や発芽玄米には、白米の約10倍ものビタミンB₁が含まれています。
ビタミンB₁を多く含む玄米や発芽玄米を食事に取り入れることで、エネルギー代謝がスムーズに進み、日中の活動をしっかりサポートしてくれます。朝食に取り入れると午前中の集中力アップにつながり、昼食に取り入れれば午後のパフォーマンス維持に、夕食で取り入れると疲労回復をサポートする効果も期待できます。

効果
咀嚼(そしゃく)効果
玄米や麦ごはんは白米に比べて噛み応えがあり、自然と咀嚼回数が増えます。よく噛むことで唾液の分泌が促され、虫歯や歯周病、口臭の予防につながるほか、消化を助ける働きもあります。また、ゆっくり食べることで血糖値の急上昇を抑え、満腹中枢が刺激されるため、少ない量でも満足感が得られやすくなります。
血糖値コントロール
食物繊維は、消化吸収をゆるやかにし、食後の血糖値上昇を抑える働きがあります。
また、血糖値の上がりやすさを表すGI(グリセミック・インデックス)値においても、主食となる穀類は糖質を多く含んでいるためGIが高い傾向がありますが、白米に比べて玄米・発芽玄米・麦ごはんはいずれも低く、血糖値コントロールに有効な穀類です。
GI値とは、食品が血糖値を上昇させる度合いを表す指標です。一般的に、70以上になると
“高GI”、50以下は“低GI”と表されます。GI値が低い食品ほど糖質が緩やかに吸収され、
血糖コントロールに役立ちます。

ただ、低GI食品=糖質量が少ない、というわけではありません。低GI食品でも糖質量が多ければ、血糖値が高くなる場合もあります。さらに、血糖値の上がり方には個人差があり、消化・吸収スピードやインスリン(血糖値を下げるホルモン)の反応によっても異なります。1回量や食べ方に気を付けつつ、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い食事を心がけましょう。
コレステロール改善
大麦に含まれる水溶性食物繊維のβ-グルカンには、コレステロールの吸収や排出を促し、血中コレステロール値を低下させる作用が認められています。
実際に白米と麦ごはんを食べた場合の総コレステロール値、LDL(悪玉)コレステロール値の変化を比べると、麦ごはんを食べることでコレステロール数値の改善傾向が確認されています。
また、玄米や発芽玄米に含まれるビタミンE や不飽和脂肪酸、ポリフェノール類は抗酸化作用をもち、血中脂質の改善や動脈硬化予防に役立ちます。
おすすめの活用方法
白米に混ぜて炊く
「玄米」
白米2合に対して玄米を1/2合混ぜ、6時間以上浸水させてから炊くとふっくらと仕上がります。玄米だけでは炊きにくい場合も、白米に混ぜることで食べやすく、かつ香ばしさと栄養をプラスできます。
「発芽玄米」
白米と同じ水加減で炊けるため扱いやすく、混ぜご飯やお弁当にもおすすめです。玄米よりも柔らかく、食感も良いのが特徴で、白米2合に対し、発芽玄米1合混ぜるのがおすすめです。
「麦ごはん(押し麦・もち麦)」
白米2合に対して麦大さじ2〜3を加え、水は麦の1.5倍量を足して炊きます。慣れるまでは少量ずつ取り入れてみましょう。栄養価だけでなく、プチプチ・もちもちした食感が楽しめ、
食べ応えもアップできます。
市販のご飯パックを活用
「もち麦入りごはん」「発芽玄米ごはん」「玄米ごはん」など、電子レンジで温めるだけの便利な商品も多く販売されています。忙しい日でも手軽に取り入れられます。
外食・コンビニで選ぶ
コンビニやスーパーでは「もち麦おにぎり」や「発芽玄米おにぎり」などの選択肢が増えています。外食でも玄米や麦ごはんを選ぶことで、無理なく食物繊維やビタミンを摂取できます。
スープやサラダに加える
もち麦は「茹でる」ことで手軽に使えるのも特徴です。茹でたもち麦をスープやサラダの具材に加えることで栄養価が高まり、食感のアクセントにもなります。最近では、もち麦入りサラダや玄米スープなどの商品も見かけられます。
*もち麦の茹で方
もち麦 … 1カップ(約150g)/水 …たっぷり(もち麦の約10倍が目安)
①もち麦を軽く水で洗います。
②鍋に水を沸騰させ、もち麦を加え、中火で約15〜20分お好みのかたさになるまで茹でます。
③ザルにあげてしっかり湯を切り、冷水でさっと洗います。
※水でぬめりを取ると、食感がより良くなります
粗熱をとってから冷蔵庫で3日ほど保存可能です。
冷凍する場合は小分けにしておくと便利です。
おすすめレシピ
食感や香りが特徴的な麦ごはんや玄米の取り入れやすいレシピを紹介します。
鮭と枝豆の麦ごはん混ぜご飯
炊いた麦ごはんと鮭や枝豆を混ぜるだけの簡単レシピ。
麦ごはんのプチプチした食感がアクセントに、また鮭と枝豆で満足感のある一品です。
材料(2人分)
麦ごはん 2杯分
鮭フレーク 大さじ2
枝豆 1/4カップ
(冷凍でもOK)
白ごま 小さじ1
大葉 お好み
<作り方>
1.枝豆は塩茹でしてさやから取り出しておきます。(冷凍枝豆を使う場合は解凍しておく)
2.麦ごはんが温かいうちに鮭フレーク・枝豆・白ごまを加えて混ぜます。
3.お好みで千切りにした大葉を添えて完成です。
<ポイント>
・冷めても美味しく召し上がれるため、お弁当やおにぎりでもおすすめです。
・枝豆の代わりにゆで大豆やコーン、塩昆布を加えてアレンジも楽しめます。
※塩昆布を加える場合は、しょうゆを半量にして味を見ながら調整しましょう
玄米雑炊
玄米ごはんをやわらかく煮ることで、食べやすく消化もしやすくなり、寒い日にぴったりのあったかメニューです。
ご飯1杯がボリュームアップしているので、エネルギーを抑えながら食べ応えが感じられる一品です。
材料(1〜2人分)
玄米ごはん お茶碗1杯(約150g)
水 300ml
顆粒だし 小さじ1
しょうゆ 小さじ1
卵 1個
<作り方>
1.鍋に水・顆粒だし・玄米ごはんを入れて火にかけます。
2.沸いたら3〜5分ほど煮てしょうゆを加えて味をととのえ、
溶いた卵を回し入れ、ふんわり火が通ったら完成です。
<ポイント>
・お好みで大葉や生姜、ごま、刻みねぎ等をのせると風味がアップします。
・葉物野菜を加えることで栄養価と彩りもアップします。
・味を変えたいときは、「中華スープの素+ごま油」や、「コンソメ+チーズ」などでアレンジが楽しめます。


