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栄養コラム

秋から始める運動習慣

No.262

2025年10月1日

管理栄養士 豊泉友加里

気温が落ち着き、体を動かしやすい季節になりました。今年も酷暑が続きましたので、運動を一旦お休みしていた方も運動習慣を始める良いタイミングにもなるかと思います。運動を取り入れることで、体重や腹囲、内臓脂肪の減少だけでなく、生活習慣病予防やリスク軽減につながります。今回は運動の健康効果と運動の目安、続けるコツについてまとめました。ぜひ少しずつ運動習慣を取り入れていきましょう。


運動不足によるリスク

運動不足による筋肉量、筋力の低下

筋肉量は40歳代頃から徐々に減少し、運動習慣などが無い場合は80歳までにおよそ30~40%も減るといわれています。筋肉量が30~40%低下すると、以下のような動作が難しくなり、日常生活に大きな影響が出てきます。

 ・椅子から立ち上がる
 ・階段を上がる、降りる
 ・しゃがむ、立ち上がる
 ・速く歩く
 ・長時間立ち続ける
 ・荷物を持ったまま歩く

また、ある研究では、わずか2週間足を動かさないだけでも筋力の3〜4割を失う可能性があることが示されています。さらに、同じ対象者に週3~4回の自転車運動を6週間行ってもらっても、元の筋力までは完全に回復できなかったという報告もあります。
失った筋力を取り戻すには3倍以上の時間がかかるため、運動不足が長く続くと筋力低下の影響は非常に大きいといえます。

座位時間と死亡リスクについて

座位時間の長さと死亡リスクとの関連を検討した研究では、座位時間が長いほど死亡リスクが高まることが報告されています。一方で、1日あたり60分以上の中強度以上の身体活動を行うことにより、長時間の座位行動に伴う死亡リスクの低下が期待できるとされ、座位時間が多くても、適宜運動をすることが有効であることが示されています。さらに、座位時間を頻繁に中断して体を動かすことは、食後血糖値や中性脂肪の上昇を抑制し、インスリン抵抗性を改善するなど、心臓や血管に関連する疾患のリスク低減に寄与することが明らかになっています。

少しの運動でも健康効果が期待

例えば、1日あたり10分身体活動を増やすだけで、生活習慣病の発症や死亡リスクが約3%低下すると推測されています。
また、最近の研究では10分未満の"ちょっとした"運動・身体活動でも、積み重ねることで健康効果が得られることがわかってきました。実際に歩数と死亡リスクの関連の研究では、1日の歩数が6,000~8,000歩に達するにつれて総死亡リスクが低下していきますが、歩数が1,000歩(およそ10分の歩行)増えるだけでも死亡リスクが大きく低下していることが分かります。


また、近年の研究では、1日の歩数や中強度の歩行時間と、予防できる可能性のある病気との関連も明らかにされ、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・メタボリックシンドロームといった生活習慣病の予防には、「1日8,000歩、そのうち中強度の歩行を20分程度」 が適切な目安とされています。
単に歩数を多くすることが健康に良いわけではなく、日常生活の中で「少し息が弾む程度の中強度の運動」を取り入れることが、より大きな効果につながると考えられています。


適切な運動量(強度・時間・頻度)

運動量を判断する基本的な目安は、「強度」「時間」「頻度」の3つの要素で成り立っています。 

強度

軽く息が上がる程度を目安に行いましょう。安全で効果的な運動を行うためには、「楽である」または「ややきつい」と感じる程度の強さの身体活動が適切であり、「きつい」と感じるような身体活動は避けた方がよいでしょう。
また、脈拍も強度の目安になります。40~50 歳代の方は 1 分間に 130~150 拍、60 歳代の方は120~125 拍を目安にしていきましょう。

時間

運動の開始から約20分が経つと、身体に蓄えられている糖質や脂肪がエネルギー源として使われやすくなるため、1回20分を目安に行うのがより効果的とされています。ただし、長時間続けなくても5分や10分の運動を積み重ねることでも、同じような効果が期待できます。

頻度

週3日以上を目安に運動すると効果的です。有酸素運動に加えて、筋力・バランス運動を取り入れると効果的と言われ、3日以上間隔をあけずに続けることで、効果を持続しやすくなります。


消費エネルギーの目安

日常のウォーキングや自宅での運動などが、実際にはどのくらいのエネルギーになるのか食品に置き換えて考えるとイメージしやすくなります。歩数や運動時間は活動量の目安になりますのでぜひ参考にして自分の消費エネルギーを確認してみましょう。

また、自宅での環境やちょっとした隙間時間を活用することで運動を取り入れやすくなります。以下のポイントを参考にしながら、無理なく体を動かす習慣を続けていきましょう。

日常生活でできる運動「プラス10分」の工夫 

移動で:買い物や通勤時に少し長めに歩く(例:電車やバスで1駅分歩く)
階段で:エスカレーターではなく階段を選ぶ
家事で:掃除や庭仕事をこまめに行う
ちょっとした時間で:テレビのCM中に足踏みをする

続けるコツ

① 目標設定の工夫
・「週2〜3回」「1回5〜10分」など小さな目標から始め、慣れたら少しずつ増やす
・継続が難しい場合は、運動内容、時間、頻度を見直し、無理のない範囲に再調整する

② 習慣化の工夫
・運動する時間や曜日を決めて、生活リズムに組み込む
・歩数や運動をアプリや記録で見える化する

③ 楽しみながら続ける工夫
・好きな音楽を聴きながら、ドラマを見ながら行う
・好きなウェアを着たり、運動器具を調達するなど環境を整える

④ 無理せず続ける工夫
・天候や体調に合わせて「外で歩く/家でストレッチ」など選択肢を持つ
・「体を動かした」という達成感を積み重ねることを大切にする


運動時の注意点

【運動前】

・ 体調チェック(血圧、痛み、疲労感などを確認)
 ※血圧が高かったり、体調不良や痛みがある場合は無理せず休養する
・ ウォームアップやストレッチで体を慣らす

【運動中】

・体調に合わせて強度を調整する 
・急に運動時間や強度を上げ過ぎずに、徐々に慣らしていく
・こまめな水分補給をおこなう
・必要に応じて専門家の指導を受ける

【運動後】

・クールダウンやストレッチで疲労予防
・発汗時は水分+ミネラル補給を心がける
・体調の再確認


運動効果を高めるには食事も大切!

運動効果を高めるには、筋肉の材料となるたんぱく質や、代謝を助けるビタミン類、疲労回復に役立つ成分を食事から取り入れることが重要です。食事を整えることで、ケガの予防や疲労回復など継続的な運動習慣にもつながります。食事を上手に組み合わせ、運動の効果をより高めていきましょう。


おすすめレシピ

今回ご紹介するレシピは、たんぱく質を中心に疲労回復を高めるビタミンB1やC、それらの吸収や働きを高めるネギや酢と組み合わせた運動後の体づくりをサポートしてくれるおすすめの一品です。栄養バランスも彩りもよく、運動後でもさっぱりいただけます。

カツオのカルパッチョ

【材料】2人分
・カツオ(刺身)   150g
・玉ねぎ       1/4個(50g)
・トマト       1/2個
・かいわれ大根    1パック
(タレ)
・オリーブオイル     大さじ1
・しょうゆ        大さじ1
・酢           大さじ1
・おろしにんにく       小さじ1
・ブラックペッパー    適量

【作り方】 
1. タレの材料を混ぜておきます。
2. 玉ねぎは薄切りに、トマトは薄くスライスし、かいわれ大根は洗って根を切り落とします。
3. お皿にカツオとトマトを並べ、玉ねぎ、かいわれ大根をのせ、タレをかけて完成です。

【ワンポイント】
・カツオのたたきや、マグロ、サーモンもおすすめです。
・ピーマンやパプリカなどを加えると栄養、彩りのバランスがアップします。
・レタスやベビーリーフと葉物野菜とあわせてサラダ代わりにも。