身近な野菜であるものの、独特の苦みと香りを持つピーマンは、苦手な人が多い食材でもありますが、料理に加えることで栄養価を高めたり、彩りもよくなります。今回は、ピーマンをおいしく食べための選び方やおすすめの調理方法などもご紹介します。
ピーマンについて
ピーマンは中南米が原産で、ナス科トウガラシ属に分類される野菜です。トウガラシを品種改良して生まれた野菜で、辛みがなく、楕円形のものがピーマンと呼ばれます。
現在は一年中出回っていますが、旬は6~9月です。
ピーマンが日本に広まったのは16世紀ごろと言われています。第二次世界大戦後の食糧不足で野菜が高騰する中、政府の規制を受けないピーマンの生産が拡大、さらに昭和30年代になると食生活の洋風化(洋食ブーム)がすすみ、和洋中にと幅広く調理でき、ビタミンC豊富で美容にもよい健康野菜として注目を集めました。
ビタミンCは18世紀頃から壊血病を予防する因子として研究されてきましたが、1930年頃ウシの副腎から分離した「ヘキスロ酸」と呼ばれる物質が発見され、その後の研究で同様の物質を果物や野菜からも分離することができ、これがビタミンCの発見へとつながりました。
ここで研究された野菜がピーマンでした。
ピーマンの色と大きさの違い
ピーマンといっても緑や赤色、サイズも大中様々なバリエーションがあります。この色や大きさの違いは成熟度や品種によって変わります。
未熟(緑色ピーマン)
おなじみの緑色のピーマンは、熟しきっていないうちに収穫したもので、青臭さがあり苦味も強いのが特徴です。
完熟(カラーピーマン)
赤、黄、オレンジなどカラフルな色合いが特徴のピーマンは、完熟した状態で収穫したものです。品種や色素の違いによって成熟の過程で色が変化します。赤ピーマンの色はカプサンチンという赤色カロチノイドの色で、カプサンチンが少ないと黄色くなるともいわれています。
呼び方は品種によってかわり、緑色のピーマンと同じサイズの中型は「カラーピーマン」
大型のものは「パプリカ」、近年はトマトのような見た目の「ミニパプリカ」もあります。
また、カラーピーマンは苦味が少なく、緑色ピーマンが苦手な方でも美味しく召し上がれます。
完熟までに時間をかけて育てるため、生産量は限られていますが、その分甘みが強く、料理に彩りを添えてくれます。
栄養的特長
緑色ピーマンとカラーピーマン
ピーマンは、可食部の100g中90%ほどが水分ですが、栄養豊富な野菜です。成熟度によって栄養価も変わり、β-カロテンやビタミンCなどは成熟に伴い高くなっていく傾向があります。
緑色ピーマンとカラーピーマン(赤色)を比べてみると、糖質量やβ-カロテン、ビタミンKやCの含有量に違いが出ています。緑色ピーマンと比べてビタミンCやβ-カロテンが多く含まれる
カラーピーマンは、彩りだけでなく栄養価をアップしたい時にもぜひ取り入れたい食材です。
ビタミンC
ピーマンにはビタミンCが多く含まれ、緑色ピーマンなら約3個分で1日に必要なビタミンC量をとることができます。ビタミンCには抗酸化作用の働きがあり、老化防止や疾病予防が期待できます。100gあたりで比較するとトマトの約5倍、ほうれん草の約2倍となります。
また、一般的にビタミンCは熱に弱く流出しやすいと言われますが、ピーマンの場合は果肉が厚いので加熱しても損失が少ないという特徴もあります。
β-カロテン
皮膚や粘膜の健康維持に働きかけ、感染症から身体を守る効果も期待できるβ-カロテンが含まれています。緑黄色野菜の定義とされるβ-カロテン含量の基準量(100gあたり600㎍)は満たしていませんが、摂取量と頻度が考慮され緑黄色野菜として取り扱われています。
ピーマンの苦みの正体
ポリフェノールの一種である「クエルシトリン」とピーマン特有の香気成分である「ピラジン」が組み合わさることによって、ピーマン独特の苦みを感じることが解明されました。
クエルシトリンは、どくだみ茶に多く含まれ、脂肪細胞の蓄積抑制や高血圧の抑制、抗うつ作用、血中中性脂肪の上昇抑制や血流改善などの効果が発表されています。
また、ピラジンは緑色ピーマンの独特な青臭さや香ばしさの香りのもとで、種やわたに多く含まれていますが、血液の流れをよくするといわれ生活習慣病を予防する効果が期待されています。
最近では、苦みのもとであるクエルシトリンが少ない、「こどもピーマン」と呼ばれる品種も登場しました。
ピーマンの選び方と保存方法
ヘタの緑が鮮やかで切り口がみずみずしく黒く変色していないものが新鮮な証しです。
果皮の表面がツヤツヤしてハリがあり、肉厚なものを選びましょう。
また、ヘタの角の数が多いほど栄養が豊富で甘みが強い傾向にあります。
保存方法
ピーマンは、鮮度が落ちると苦みが出たり、中の種の部分から腐敗し始めます。
ピーマンの保存に適した温度は10℃前後と言われています。冷やしすぎると、黒く変色するので注意しましょう。また、保存している間に腐敗につながるエチレンガスを出すため、1つずつキッチンペーパーなどで包んでから保存袋へ入れるなどで保存するのが理想的です。
また、冷蔵庫で保存した場合、丸ごとであれば約2~3週間、カットした場合は約3日程度日持ちします。すぐに使い切るのが難しい場合は、種と綿を取って、カットしてから冷凍するのがおすすめです。冷凍することで1ヶ月ほど鮮度を保つことができます。
おすすめの食べ方
調理方法によって食感の違いを楽しめるのもピーマンの魅力の1つです。
パリッと食感を楽しむ
生の状態で肉みそや、ディップソースをつけて食べると、ピーマンのみずみずしさとパリッと食感を味わうことができます。特に緑色ピーマンは、生で食べるとパリっとする食感が特長です。また、水につけることでピーマンの食感が良くなり、塩水に浸すことで細胞膜が破れ、苦みの成分が溶け出しやすくなり、苦みを和らげることができます。ただし、ビタミンCを逃さないためにも、水につける時間は1時間までに抑えることをおすすめします。
シャキシャキ食感を楽しむ
さっと炒めることで苦味を抑えつつ、シャキシャキ食感を楽しめます。
さらに切り方でも、繊維を断つように切ることでシャキシャキとした食感がでやすくなり、反対に繊維に沿って切ることで苦味や青臭さを感じにくくなります。
また、加熱することで苦みが減少します。特に炒め物や焼き物にすると、ピーマンの甘味が引き立ちます。油で炒めることで脂溶性の栄養素(β-カロテン、ビタミンEなど)を吸収し
やすくなり、さらにたんぱく質と併せることで栄養バランスの整ったおかずの1品になり
ます。
クタクタ食感を楽しむ
ピーマンを丸ごと煮て、種ごと食べてみましょう。
煮る時に少量の砂糖を加えることで、苦みを中和することができます。
調理時には捨ててしまうことの多い種やヘタにも栄養価があり、丸ごと食べることにより、調理の時間短縮にもつながります。
もし、種が黒ずんでいる場合は、ピーマンの実が食べられる状態かを確認し、ヘタと種は取り除き、加熱して召し上がってください。種が黒ずんでいる場合でもピーマンの実は食べられる状態であることが多くあります。実が柔らかくなっていたり、酸っぱいにおいやカビなどがある場合は食べるのは控えましょう。
おすすめレシピ
ピーマンをそのまま使ったトースターで加熱するだけの簡単レシピを紹介します。
1食に必要なビタミンCが摂れ、アレンジも楽しめるメニューでお弁当のおかずにもおすすめです。新鮮なピーマンを使って種ごと味わいましょう。
ピーマンのまるごとチーズ焼き
【材料】1人分
・緑色ピーマン 1個
・スライスベーコン 2枚(80g)
・玉ねぎ 1/8個
・スライスチーズ 1枚
・塩 ひとつまみ
・コショウ 適量
【作り方】
1. ピーマンを縦半分に切り、内側を上にして耐熱容器に並べ塩をかけます。
※新鮮なものは、種やヘタは取らずにそのまま調理しましょう
2. ベーコンは短冊切りにし、玉ねぎは薄くスライス、スライスチーズは半分に切ります。
3. 1の上にベーコン、スライスした玉ねぎをのせ、最後にスライスチーズをのせます。
4. トースターで5分ほど加熱してお好みでコショウをかけて完成です。
【アレンジ】
ベーコンをゆで卵やサバ水煮缶、つくねに替えてもおすすめです。
また、ケチャップをかけることで甘さがプラスされ、苦みが苦手な方も食べやすくなります。
さらに豆板醤を少量加えると辛さがプラスされて、チリソースのような味つけも楽しめます。
他にもお好み焼きソースと青のり、かつお節をかけて和風アレンジなども試してみてください。