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栄養コラム

煮干し

No.182

2019年2月1日

管理栄養士 板橋彩子

2月は節分ですね。節分といえば、豆まきや恵方巻きを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はイワシも節分に食べる食材であることはご存知でしょうか。イワシはおかずとして食卓によくあがる魚ですが、おかずとしてよりも馴染みがあるのは「煮干し」の方かも知れませんね。今回は「煮干し」についてご紹介致します。ぜひ、節分は煮干しを使って料理をしてみてはいかがでしょうか。


煮干しについて

煮干しとは

煮干しは、小型の魚類を煮て干したもので、イワシ、アジ、タイ、トビウオ(アゴ)など様々な魚が煮干しに加工されます。その中で一番生産量の多い煮干しは、イワシ類を原料としたもので、中でもカタクチイワシを用いたものが最も多く、一般的に煮干しと呼ばれています。また、煮干しの呼び名は地域で違い、主に東日本では「にぼし」、西日本では「いりこ」と呼ばれています。呼び名は大きく異なりますが、全く同じものです。

煮干しの種類

イワシを原料とした煮干しだけでも様々な種類があり、それぞれ風味や特徴が異なります。

カエリ煮干し
カタクチイワシの稚魚の煮干しです。稚魚は脂肪が少ないので、魚臭くなく、あっさりとしたダシがとれます。身が柔らかいため、食べる煮干しとしてそのまま食べるのがおすすめです。佃煮等に加工されたりもします。

片口(カタクチ)煮干し
カタクチイワシの煮干しです。最も生産量が多く、一般的に「煮干し」と呼ばれている種類で、ダシに利用するのがおすすめです。

ウルメ煮干し
ウルメイワシを原料とした煮干しです。主な産地は長崎で市場に出回る量は少ないです。主にダシ用として使われ、くせが少なく甘味のあるダシが取れるので、味噌汁やおでん、うどん等のダシを取るのに向いています。煮物の場合は、ダシがらをそのまま具として入れることもあります。

平子(ヒラゴ)煮干し
マイワシを原料とした煮干しです。水出しがおすすめで、魚臭さが少なく、すっきりしながらも濃いダシが取れます。味噌汁や昆布のダシと合わせてうどんなどに利用すると良いでしょう。

煮干しの作り方

煮干しの製法は産地などによって多少異なりますが、一般的には洗浄、煮熟、乾燥という工程で作られます。

①洗浄
水揚げされた魚は、鮮度を保つため砕氷と共に工場へ運び込まれ、まず洗浄されます。ここで、魚のぬめりやゴミなどが取り除かれます。

②煮熟(しゃじゅく)
洗浄された魚を塩水で5~10分程度煮ます。煮て酵素の働きを止ることで、腐敗やうま味成分であるイノシン酸の分解を防ぎます。

③乾燥
煮熟後は、大型の乾燥機を使って乾燥させ、水分が15~18%になれば出来上がりです。天日での乾燥は、紫外線が強すぎてうま味成分であるイノシン酸が分解されてしまうので、機械乾燥が良いとされています。


ダシの取り方

煮干しのダシは風味が強く、味噌汁や煮物などの料理と良く合いますので、是非ダシを取って様々な料理に使いましょう。

【材料】
・水    1リットル
・煮干し  30g程度
※煮干しの量は、お好みで変えてください。

【ダシの取り方】
1.頭とはらわたを一緒に煮出すとえぐみや生臭さが出やすいので、取り除きます。
2.水を入れた鍋に煮干しを入れて一晩(5~10時間)、時間がないときは30分程度置いておきます。
3.鍋を火にかけます。煮干しは入れたままで中火にかけ、煮立つ直前に弱火にしてアクを取り除きながら5~10分煮出します。
4.目の細かいザル、もしくはキッチンペーパー、布巾等で濾したらダシの完成です。

※ダシに香ばしさが欲しいときは、下ごしらえした煮干しを、油は使わずフライパンで乾煎りすると良いです。魚臭さも軽減します。
※水出しのみもできます。水出しのみの場合は、一晩水に浸して置き、濾して使います。

【うま味を活かす組み合わせ】
うま味成分の異なるものを組み合わせると、相乗効果でうま味がアップします。 例えば煮干しはイノシン酸が多いので、グルタミン酸を多く含む「昆布」と 合わせてダシをとると旨みが増え、味付けが薄くても美味しく食べられ 減塩になります。また、グルタミン酸を多く含む「わかめ、大根、白菜」等を煮干しのダシと合わせて料理しても減塩につながります。


煮干しの栄養

煮干しには、日本人が不足しやすい栄養素が多く含まれています。最も流通の多いカタクチイワシの煮干しの栄養について見ていきたいと思います。 

カルシウムが豊富

平成29年国民健康・栄養調査の結果によると、どの年代でもカルシウムの摂取量は不足しており、特に20~50歳の成人男女で摂取量が少ない傾向にあるようです。煮干しは、カルシウムが豊富であり、例えば、煮干し5匹程度(大きさ7~8cmの煮干し)で、牛乳コップ1杯分に含まれるカルシウムの約7割を摂ることができます。6Pチーズ1個やヨーグルト1個など、その他の乳製品と比較してもカルシウム含有量は多く、煮干しは少量で手軽にカルシウムが補える食品といえます。さらに、煮干しはカルシウムの吸収を高めるビタミンDも多いので、骨の形成や骨粗鬆症の予防にもつながり、成人だけでなく成長期のお子様や骨密度の低下が心配な高齢者にもおすすめです。

(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)

吸収率の良い鉄分が含まれる

煮干しは鉄分も豊富に含んでいます。鉄分は様々な食品に含まれていますが、野菜類や海藻類に含まれる鉄分は、非ヘム鉄と呼ばれ吸収率は約5%と低めです。一方、煮干しに含まれる鉄分は、ヘム鉄と呼ばれ吸収率は約30%と高く、効率良く鉄分を摂ることができます。
例えば、煮干し5匹程度(大きさ7~8cmの煮干し)には1.3mg、ほうれん草のお浸しには1.8mgの鉄分が含まれています。食品中に含まれている鉄分の量だけで見るとほうれん草の方が多くなりますが、吸収率を考慮すると、煮干しが約0.4mg、ほうれん草が約0.1mgとなり、煮干しの方が多く鉄分を吸収できることが分かります。
貧血予防の代表的な食材であるレバーに含まれる鉄分も吸収率の良いヘム鉄で、レバーひとくち分の鉄分を煮干し5匹程度で摂ることができるため、レバーが苦手な方は貧血予防に煮干しを利用するのも良いでしょう。

(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より算出)


品質の良い煮干し

煮干しには、血中脂質の改善や血栓予防等の効果が確認されているEPA・DHAが含まれています。健康や生活習慣病予防のために、積極的に摂りたい栄養素ではありますが、EPAやDHAは酸化されやすく、煮干しを作る工程や煮干しに加工されてからも酸化が進むため、購入の際は、下記の点に気をつけて、品質の良いものを選ぶようにしましょう。

(1)色
酸化が進むと油焼けという現象が起き、煮干しの表面は黄ばみ、赤くなってきます。青みがかった銀白色の煮干しが良質です。

(2)大きさや形
煮干しに向いているのは、脂質の少ない痩せた魚です。大きさが少し小さめで頭や尾びれがしっかりついているか確認しましょう。また、鮮度が低下した鰯を原料としたものは、腹部が盛り上がっていたり、破れて壊れていたりするので注意しましょう。

(3)重さ
見た目よりずっしりと重みがあるように感じる煮干しは、余分な脂質が含まれていたり、乾燥が不十分である可能性があります。良質な煮干しは、十分乾燥されていて軽く感じます。


煮干しの保存

煮干しは、空気に触れると酸化が進むので、密封した袋等に入れましょう。
保存期間が短ければ、常温でも保存は可能ですが、季節や環境によっては品質が落ちることがあるので、早めに使い切るようにしましょう。1ヶ月以上の保存になる場合は、冷蔵か冷凍保存がおすすめです。冷蔵なら3~4ヶ月、冷凍ではさらに長期の保存も可能ですが、使用前は臭いや状態を確認してから使うようにしましょう。


レシピ

煮干しはダシを取るだけではもったいないです。栄養たっぷりの煮干しは、ぜひとも身も全て食べたいものですね。煮干しを丸ごと食べられる煮干しのエスカベッシュを紹介します。エスカベッシュは、洋風の南蛮漬けで、魚を油で揚げてから漬け汁に漬け混んで食べる料理です。ここでは揚げずに焼くことで脂質を控えたレシピを紹介します。和食で使われることの多い煮干しですが、洋食の料理も是非お試しください。

●煮干しのエスカベッシュ

【材料】(2人分)
・煮干し・・・25g(7~8cm程度の大きさ約20匹)
・たまねぎ・・・30g(1/6個)
・ピーマン・・・15g(小1/2個)
・にんじん・・・10g(厚さ1cm程度
・薄力粉・・・5g(大さじ1/2)
・油・・・6g(大さじ1/2)

漬け汁
・白ワインビネガー・・・30g(大さじ2)
・レモン汁・・・15g(大さじ1)
・オリーブオイル・・・24g(大さじ2)
・砂糖・・・3g(小さじ1)
・塩・・・少々
・白コショウ・・・少々

【作り方】
1.たまねぎを薄切り、にんじん、ピーマンを細切りにします。
2.漬け汁の材料を鍋に入れ、火にかけます。沸騰したら火を止め、たまねぎ、にんじん、ピーマンを入れておきます。【A】
3.別の小なべでお湯を沸かし、数分煮て煮干しを柔らかくします。
4.煮干しが柔らかくなったら小なべから取り出し、粗熱を取って薄力粉をまぶします。
5.フライパンに油をしいて、両面を焼きます。
6.煮干しが熱いうちに【A】の漬け汁に漬けます。
7.30分程度漬け込み、なじませたら完成です。

【アレンジ】
※ダシを取った後のだしがらを利用しても良いです。
※漬け汁は白ワインビネガーやレモン汁、オリーブオイルを、酢やみりん、醤油等に変えて、南蛮漬けとして食べるのも良いです。