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栄養コラム

ローストチキン

No.180

2018年12月3日

管理栄養士 板橋彩子

12月になりクリスマスツリーが様々な場所で飾られ、街中はクリスマスムードに溢れています。クリスマスの食べ物としてローストチキンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。骨付きの鶏もも肉は、特別感があり、見た目にも食卓が華やかになりますね。
今回は、ローストチキンについてのお話です。


ローストチキンの歴史

クリスマスにローストチキンを食べることの始まりは、1860年代からのアメリカの開拓時代まで遡ります。ヨーロッパからアメリカに移住してきた移民が食糧難で厳しい冬を越せず困っていたところ、先住民のインディアンが七面鳥をはじめ、様々な食材を贈ったそうです。移民たちはそのおかげで、飢えをしのぎ苦難を乗り越えることができたことから、新大陸での生活の発展をお祝いする際に七面鳥の料理を並べました。これが、感謝祭の原型となり、現在では感謝祭やクリスマスなど大勢の人が集まる行事で七面鳥のローストが食べられるようになっています。

日本では、明治時代以降にクリスマスがイベントとして浸透したと言われており、日本独自の文化に発展していきました。本来、クリスマスはキリストの生誕を祝う行事ですが、日本ではイベントとして楽しむ要素が強いのが特徴です。また、日本でもチキンを食べる習慣がありますが、七面鳥は入手しにくいため、鶏肉を使用するのが一般的で、1匹丸ごと調理するよりも、骨付きのもも肉を調理して食べることが多くなっています。


ローストについて

ローストの調理法
ローストは、西洋料理の調理法の1つで、材料(主に大きな肉の塊)をオーブンで焼き上げることを言います。鶏を丸ごと焼き串に刺して、直火で回転させながら焼き上げることもあり、その際はロースターと呼ばれる専用の焼き器が使用されます。フランス語ではロティと言い、フランス料理にはロティサリーチキンという料理があります。

ローストの良い点
◆火を通しても柔らかい
大きな肉の塊が使われることが多いですが、高温での蒸し焼き状態になるので、旨味を閉じ込めたまま、皮はパリっと、中身はふっくらと焼けます。

◆肉以外にも、魚、野菜など色々な食材を扱うことができる
例えば、魚は腹の中に香草を詰めたり、網脂を巻いたりして、丸ごと1尾オーブンで焼き上げます。野菜類は、たまねぎやニンジン等を肉や魚の周りに置いて、一緒に焼くことができます。

◆油を使わないで調理できる
オーブンで焼き上げるので、余分な油を使わなくて済みます。


ローストチキンの栄養

(1)低エネルギー

ローストチキンは油を使わないので、他の鶏肉料理と比較してエネルギーは低めです。例えば、揚げ物のチキンカツと比較するとエネルギーは約1/2、唐揚げと比較すると約2/3です。また、塩やハーブ等のシンプルな味付けが可能なので、砂糖やみりん等の調味料を控えることができ、低糖質にもなります。

※他の鶏肉料理との比較(100gあたり)
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より算出)

(2)ロイシンが多い

ローストチキンに使われる鶏肉は、高たんぱく質の食材で、ロイシンを多く含んでいます。ロイシンとは、体のたんぱく質を構成している必須アミノ酸で、肝機能を高めて、筋肉のたんぱく質合成を促進したり、傷ついた筋肉を修復する働きがあることから、近年、筋力低下などで要介護になる危険度が高くなる「ロコモティブシンドローム」予防のための効率的なたんぱく質摂取方法の一つとして注目されているアミノ酸です。そのため、ロイシンを多く含む鶏肉は、激しい運動をした後やスポーツ選手、さらには、加齢やその他の原因で筋肉量が減りやすい高齢者にも、摂取が勧められる食材と言えます。

ロイシンの推定平均必要量は、WHOより、18歳以上で1日あたり39mg/kg体重と報告されています。例えば、体重60kgの人であれば1日あたり2340mgとなり、ローストチキン1/2本で必要量の約80%のロイシンが摂取できます。この量は、鶏肉以外のたんぱく質源である、魚や豚肉等の常用量に含まれるロイシンと比較しても多い量であり、鶏肉は効率良くロイシンを摂取できる食材であることが分かります。

   
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編より)


ローストチキンのアレンジ

ローストチキンが余ったら、他の料理に使いましょう。アレンジ例をご紹介します。

①サラダ 
サラダの具としてアレンジができます。食べやすい大きさにカットし、シーザーサラダやチョップドサラダ等、野菜と和えて一緒に食べるのがおすすめです。

②パスタソース
一口サイズの適当な大きさに切り分け、パスタソースの具としても良いでしょう。最近はレトルトや缶等の出来合いのソースを利用する機会も多くなっていますが、具が少ないものが多いので、その際にも具としての追加がおすすめです。トマトソース、クリームソース、オイルソース等、様々なソースと合います。

③トーストやサンドイッチ
薄くスライスして、食パンに並べ上からチーズをのせて焼けば、ボリュームのあるトーストになります。また、レタス等と一緒にロールパンに挟んでサンドイッチとしても良いでしょう。


おすすめレシピ

オーブンで作るのも良いですが、余熱等の準備が面倒だったり、オーブンを使うのはハードルが高いという場合は、フライパンで手軽に作ることもできます。ローズマリーを使った香りの良いローストチキンレシピです。何も付けずに食べても美味しいですが、ソースを付けて食べると味の変化が楽しめます。赤と白のクリスマスカラーのソースも合わせてご紹介します。

 ●フライパンでお手軽ローストチキン

【材料(2人前)】
◆ローストチキン
・骨付き鶏もも肉 ・・・2本(600g)
・塩 ・・・小さじ1/3
・コショウ ・・・少々
・フレッシュローズマリー ・・・2本
(無ければ乾燥ローズマリーでも可)
・オリーブオイル ・・・小さじ2
・水またはお湯 ・・・50ml

◆付け合わせ
・クレソン ・・・2本
・レモン ・・・1/3個

◆ソース
赤いソース
・トマト缶(ダイスカット) ・・・1/2缶
・たまねぎ ・・・30g
・にんにく ・・・1カケ
・塩 ・・・2つまみ程度
白いソース
・マヨネーズ ・・・大さじ1
・ヨーグルト ・・・大さじ1
・カレー粉 ・・・小さじ1/4

【下準備】
1.骨付き鶏もも肉は、骨に沿って包丁を入れ、余分な脂を取り除きます。
2.骨の周りの肉は、平らになるよう切り開き厚さを均一にします。皮はフォークで数か所刺しておきます。
3.フレッシュローズマリーの葉は外しておきます。
4.塩、コショウをもも肉に揉み込み、フレッシュローズマリーを全体に散らして、1時間程度おいて味をなじませます。
5.クレソンは水洗いし、水気を拭き取ります。レモンは6等分にくし切りにします。

【作り方】
◆ローストチキン
1.フライパンでオリーブオイルをあたためます。
2.皮目を下にして骨付き鶏もも肉をフライパンに入れ、中火で1~2分焼きます。
3.皮に焼き色が付いたら裏返し、フライパンの余分な脂を拭き取ります。50mlの水またはお湯を入れ、蓋をして10分蒸し焼きにします。
4.フライパンから取り出してお皿に盛り付け、持ち手に銀紙を巻きます。クレソン、レモンを添えて完成です。

◆ソース
[赤いソース]
1.たまねぎはみじん切り、にんにくはスライスしておきます。
2.チキンを焼いた後のフライパンで、残っている脂を使ってにんにくとたまねぎを炒めます。
3.トマト缶を入れ、5分程度火にかけ水分を飛ばし、塩で味付けをします。
  ※お好みでタバスコを加えても良いです。

[白いソース]
1.分量のマヨネーズ、ヨーグルト、カレー粉を混ぜ合わせます。
  ※火を使わないので、ローストチキンを焼いている間に作れます。

[盛り付け]
深さのある小さめの小鉢サイズの器を2つ用意し、それぞれ盛り付けます。

【アレンジ】
カレー粉を鶏もも肉にまぶして焼き、カレー風味の味付けにしても美味しくいただけます。焦げやすくなりますので、調理の際は火加減に注意しましょう。