秋も一段と深まり、紅葉がキレイに色づく行楽シーズンになりました。少し肌寒いですが、お弁当を持ってお出かけするにも良い時季ですね。今回は、コンビ二などでも手軽に買え、お弁当としても持ち運びしやすく食べやすい「いなり寿司(おいなりさん)」についてのお話です。
いなり寿司について
いなり寿司は江戸時代から食べられており、当初から安価で庶民にも親しまれている手軽な食べ物だったそうです。初牛の日に商売と豊作の神(お稲荷様)のいる稲荷神社のお供え物として置かれたことから始まり「いなり」という名前がつき、お稲荷様の使いのキツネの大好物であった「油揚げ」と農作のひとつである「米」を使い繁盛を願った食べ物といわれています。
東と西でいなり寿司の形状が異なり、東は米俵をイメージした「円柱」のような形で、西はキツネの耳をイメージした「三角形」の形が特徴です。また、油揚げを裏返しにしているいなり寿司もありますが、これは長野県松本市の郷土料理で油揚げの内側にからしを塗る「からしいなり」というのがあり、それを通常のいなり寿司と間違えないように裏返しにしていたり、裏面のほうがふっくらして味が染みているのでおいしい、ご飯が入れやすい、などで裏返しにして作られることもあるようです。また、通常のいなり寿司は「酢飯」を詰めることが多いですが、白飯に紅しょうがを加えてピンク色にしたご飯を入れたり、炊き込みご飯を入れる地域もあり、様々ないなり寿司があります。
いなり寿司の栄養的特長
古くから伝わり今もよく食べられているいなり寿司には、すばらしい栄養的特長があります。
(1)エネルギー産生栄養素バランスが良い
いなり寿司は、エネルギー産生栄養素のバランスがよいことが特長です。エネルギー産生栄養素とは、エネルギーをつくる三大栄養素「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」のことで、これらは適正量とともにそれぞれの割合が重要で、食事の栄養バランスを評価する一つの指標になっています。
例えば、おにぎり(昆布)2個と、いなり寿司3個のエネルギー産生栄養バランスを比較すると、おにぎり(昆布)は炭水化物に偏っていますが、いなり寿司は3つの栄養素がバランスよくとれることがわかります。これはレバニラ定食の1食分のバランスとほぼ同じです。
【エネルギー産生栄養素バランス】
※理想的なエネルギー産生栄養素バランス割合
たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 |
13~20% | 20~30% | 50~65% |
いなり寿司はご飯と油揚げの組み合わせでこれらエネルギーバランスがよくなります。油揚げは、大豆が原料の豆腐を揚げてつくられているので、たんぱく質と脂質が適量含まれています。炭水化物に偏る食事よりも、たんぱく質と脂質がとれる食事にすることで、血糖値が急上昇しにくく腹持ちも良くなるので、定食のように揃えられないときや、さっと食べたいときにはいなり寿司がおすすめです。
(2)必須アミノ酸バランスが良い
体をつくる材料であるたんぱく質を構成しているのがアミノ酸で、中でも食品から必ずとらなければならないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸をバランス良くとることは体を維持していくうえで重要です。これらは9種類ありますが、ご飯のみの食事では必須アミノ酸の一つである「リジン」が不足しています。それに対していなり寿司は油揚げを組み合わせることでリジンが供給され、食事として必須アミノ酸のバランスが整います。
いなり寿司とおすすめの組み合わせ
いなり寿司だけでも栄養バランスは良いですが、他の食品と組み合わせることでより食事全体の栄養バランスが整います。一緒に組み合わせたいおすすめのおかずをご紹介します。
①肉、魚、卵、大豆・大豆製品、乳製品
いなり寿司のたんぱく質量は1食あたりの充足率でみると60%ほどなので、たんぱく質の多い食品を少し補うとさらに全体の栄養バランスが良くなります。
例)やきとり、ツナ缶、さんまの蒲焼缶、ゆで卵、卵焼き、豆腐、納豆、豆乳、牛乳 など
②野菜、海藻、きのこ類、果物
いなり寿司だけでは「ビタミン」や「ミネラル」「食物繊維」が不十分です。なかでも葉酸やビタミンC、カリウム、食物繊維が少ないため、これらが多く含まれる野菜や海藻、きのこ類のおかずも組み合わせることがおすすめです。ビタミンやミネラルは健康維持や体調管理には欠かせない栄養素で、しっかり補うことで三大栄養素の働きを円滑にさせます。
例)野菜サラダ、きんぴらごぼう、ほうれん草のごま和え、わかめの酢の物、焼きしいたけ、
なめこ、オレンジ など
【①②を組み合わせた1食例】
コンビ二で組み合わせられる1食例です。例2は①②が合わさった1品を選びました。
例1)いなり寿司(3個)+ゆで卵(1個)+野菜サラダ(1皿または1パック)
例2)いなり寿司(3個)+豚汁(1杯)
具の違いによる寿司の楽しみ方
いなり寿司は油揚げに包まれているので、おにぎりと違って中に多めに具を入れてもこぼさずにうまく食べることができます。手作りするときはご飯だけでなく、いろんな具を入れるといつもと違ったいなり寿司が楽しめて、さらに栄養バランスも整います。
●食感、歯ごたえアップ
海老、大豆、枝豆、ごぼう、れんこん、たくあん、梅、きゅうり、きのこ類、こんにゃく など
●香り、風味アップ
ごま、生姜、大葉、さくらえび、みょうが など
●彩りアップ
卵、桜でんぶ、いくら、さやいんげん、ほうれん草、ブロッコリー、人参、紅しょうが など
おすすめレシピ
たんぱく質と野菜、きのこ、海藻が合わせてとれ、彩りや食感、いろんな風味が楽しめる3種類のいなり寿司レシピです。お弁当としても持ち運びしやすく、パーティーなどでも楽しめるいなり寿司です。
●見て楽しい!おいなりさん
【材料】(2人分:3種類6個分)
[いなりあげ]
・油揚げ ・・・3枚
・煮汁
a.しょうゆ ・・・大さじ1杯
b.砂糖 ・・・大さじ1杯
c.みりん ・・・大さじ1杯
d.だしの素 ・・・小さじ1/4杯
e.水 ・・・3/4カップ
[酢飯]
・ご飯 ・・・普通茶碗2杯分(300g程)
・すし酢
a.酢 ・・・大さじ1杯強
b.砂糖 ・・・小さじ1.5杯
c.塩 ・・・小さじ1/3杯
[いなり寿司トッピング]
①枝豆・昆布
・冷凍枝豆 ・・・7房
・昆布の佃煮 ・・・大さじ1杯分程度
②海老・卵
・いりごま ・・・大さじ1
・芝海老(ゆで) ・・・6尾
・いり卵
a.溶き卵 ・・・1/2個
b.塩 ・・・少々
c.油 ・・・少々
③小松菜・まいたけ
・小松菜 ・・・中2本
・まいたけ ・・・4カケ
・カニカマ ・・・1本
・甘辛ダレ
a.しょうゆ ・・・小さじ1/2杯強
b.砂糖 ・・・小さじ1/2杯
c.みりん ・・・小さじ1/2杯
・油 ・・・少々
【下準備】
・枝豆は解凍し、房から粒を出しておきます。(4粒ほど飾り用として残しておく)
・すし酢、甘辛ダレの調味料はそれぞれ混ぜ合わせておきます。
【作り方】
[いなりあげ]
1.油揚げをまな板にのせ、上から菜箸などで転がして油揚げ全体を潰します。
2.1の油揚げを半分に切り、中がはがれて袋状になっていることを確認し、熱湯をかけて
油抜きをします。
3.鍋に煮汁の材料全てと2の油揚げを入れ、落し蓋をして煮ます。
4.煮汁が少なくなったら火を止め、そのまま冷まし、煮汁を吸わせます。
[酢飯]
1.ボールなどにご飯とすし酢をいれ、うちわで扇ぎながら人肌程度になるまで、混ぜながら
冷まします。
2.すし酢が全体に混ざったら3等分に分けておきます。
[いなり寿司トッピング]
1.昆布の佃煮を細かく切ります。
2.油を入れて熱したフライパンに溶き卵と塩を入れていり卵を作ります。
3.小松菜は湯を沸かしてゆで、軽く火が通ったら水気を絞り、細かくみじん切りにします。
(飾り用に少し残しておくと良いです)
4.まいたけは細かく切り、油を入れて熱したフライパンに、切ったまいたけと甘辛ダレを
入れて炒めます。
5.3等分に分けた酢飯を3つのボールに移し、1つには枝豆と1、もう1つにはいりごま、
残り1つには3と4を入れてそれぞれ混ぜます。
6.5をそれぞれ2等分に分け、半分ずついなりあげに入れていき、口の部分は内側に折り
曲げます。これを3種類で計6個つくります。
7.枝豆と昆布の佃煮のいなりの上には、飾り用の枝豆をのせます。
8.いりごまのいなりの上には、芝海老(ゆで)と2のいり卵をのせます。
9.小松菜とまいたけのいなりの上には、細かく裂いたカニカマと飾り用に残した小松菜を
のせて完成です。
【ポイント・アレンジ】
・酢飯は、少し硬めに炊いたご飯でつくるほうが、酢が全体に混ざりおいしい酢飯になります。
・油揚げを煮るときの砂糖は、黒糖やきび糖にするとコクのあるいなりあげになり、おいしい
です。
【時短で簡単に作りたいとき!】
●酢飯・・・市販の「すし酢」を活用すると簡単に酢飯が作れます。すし酢の場合は、上記ご飯
量に対して「大さじ1.5杯程」が目安です。また、酢飯ではなく普通ご飯でも良い
でしょう。
●いなりあげ・・・前日などに作って冷蔵保存しておくとその後の工程が楽です。また、市販で
売られている「味付きいなりあげ」にするといなりあげを作る手間が省け
ます。