2月9日は語呂合わせで2(に)・9(く)の日です。最新の国民健康・栄養調査では、肉類の摂取量が魚介類の1.3倍になるほど肉類の摂取が増えています。肉は、太りそう、健康に悪いなどのイメージがありますが、私たちの体を作る上で重要な食品の一つである良さが認識され始めています。今回は肉類の中から豚肉を紹介します。
肉と長寿の関係
日本では明治時代以降に肉を食べる習慣が見られるようになりました。肉食が広まったことで日本人の体格が大きくなり、寿命を延ばしたといわれています。肉が健康に悪いという情報は、肉類に多く含まれる脂質の過剰摂取が生活習慣病や心疾患などの発症に影響を及ぼすことから広まりましたが、食べる量や部位に注意すれば健康維持に必要な栄養をとるための優れた栄養源となります。
肉類の必要性が注目されていることの一つに、現代の日本における若年女性のやせや高齢者のフレイル(※)問題があり、これらには、食事からとるエネルギーが不足しているだけでなく、たんぱく質が不足することも原因とされているため、たんぱく質が豊富な肉類の活用が見直されています。(下記<豚肉の良さ>参照)
また、肉を含む動物性食品に多い脂質に関しても、適量を摂取することで脳卒中のリスクを低減させるという研究もあり、適切な摂取であれば体に悪い影響を及ぼす食品ではありません。
※フレイル:加齢とともに心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態。(厚生労働省より)
肉類の摂取量について
肉類と魚介類の摂取量変化をみると、十年程前までは肉類よりも魚介類の摂取量が多かったのですが、その後徐々に肉類が増え、現在では肉類と魚介類が逆転しています。「若者の魚離れ」など食の欧米化による好みの変化が考えられていますが、価格が手ごろな外国産の肉の需要が高まり、魚介類より肉類の方が手に入りやすいこと、また調理などの扱いやすさや食べやすさからも魚より肉が好まれる要因となっています。
【肉類と魚介類の摂取量変化】
豚肉の良さ
丈夫な体をつくり、健康を維持する大切な栄養が含まれています。
●疲労回復やスタミナアップ
豚肉には体のスタミナの元となる「糖質」からエネルギーを作り出す働きを助けるビタミンB1が特に多く含まれています。そのため効率よくエネルギーを作り出すことができ、疲労回復に役立ちます。牛肉や鶏肉、豆腐と比べると、9~10倍多く含まれます。
【ビタミンB1量(食品100g中)】
ビタミンB1(mg) | |
豚肉(もも) | 0.90 |
鶏肉(もも) | 0.10 |
牛肉(もも) | 0.08 |
木綿豆腐 | 0.07 |
成人男性推奨量(1食目安) | 0.46 |
成人女性推奨量(1食目安) | 0.36 |
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年、日本人の食事摂取基準(2015年版)より)
●筋肉の維持や免疫力を高める
健康維持に必要な 第一の栄養といわれる「たんぱく質」は、体を作る基本的な栄養で毎日の食事に欠かせません。たんぱく質は筋肉や皮膚、血液や免疫に関わる物質の材料となります。極端な食事制限や偏った食事はたんぱく質不足を起こしやすいため、貧血や筋肉量の減少、免疫力の低下などに繋がります。
例えば、豚肉の食事「豚肉の生姜焼き定食」と、簡単に済ませる食事としてありがちな「カップラーメン+おにぎり」のたんぱく質量を比較すると、同程度のエネルギーでありながら、たんぱく質量は2倍とることができ、推奨量の1食目安を満たすことができます。
【エネルギーとたんぱく質量】
エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | |
豚肉生姜焼き定食(ご飯、味噌汁) | 674 | 25.7 |
カップラーメン+おにぎり | 593 | 12.9 |
成人男性推奨量(1食目安) | 20.0 | |
成人女性推奨量(1食目安) | 16.0 |
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年、日本人の食事摂取基準(2015年版)より)
部位の注意点
肉類は全般的に脂質が多めなので食べ過ぎは注意ですが、部位によって脂質量に違いがあるため、選び方によっては脂質過剰やエネルギー過剰になる場合があります。肥満やメタボリックシンドローム、血中脂質に異常のある方は高脂質な部位は控えたり、調理を工夫しましょう。
○部位別の脂質量
バラ肉はヒレ肉の約10倍の脂質が含まれます。
○脂を落とす調理の工夫
・焼く
網焼きにしたり、フライパンなどで焼いて流れ出た脂はキッチンペーパーで吸いとりましょう。
・下ゆでする
沸騰したお湯に余分な肪が落ち、味も付きやすくなります。
肉を柔らかくする方法
肉の硬さは筋(すじ)が収縮する、たんぱく質が変性する、水分量が変化することで変わります。下処理をすることによってたんぱく質を先に分解して変性しないようにしたり、保水性を高めたりして調理すると肉が硬くなることを防ぐことができます。
・筋(すじ)を切る
厚切りの肉は筋(すじ)を切ったり、肉たたきや包丁の峰でたたいたりすると繊維が収縮するのを防ぎます。
・漬けこむ
玉ねぎ、大根、牛乳、ヨーグルト、炭酸、塩麹を30分程度漬けこみ、水分をキッチンぺーパーでふき取ります。豚肉をフライパンに並べてから火をかけ始めると収縮せずにふっくら焼きあがります。
・煮込む
水と一緒に赤ワインや酢を加えて煮込みます。
おすすめレシピ
肉を柔らかくし、さらに豚肉に多く含まれるビタミンB1の働きを助ける「アリシン」が多い玉ねぎを使用して、疲労回復に効果的な一品をご紹介します。蒸すことでさっぱり食べることができます。
●蒸し豚のオニオンソース
【材料】(2人前)
・豚肩ロース(かたまり)…200g
・玉ねぎ…1/2個
・白菜…100g
・酒…大さじ2
・ソース
a.おろししょうが…小さじ1/2
b.酒…大さじ2
c.醤油・・・大さじ1
d.酢…大さじ1/2
e.みりん…大さじ1
f.砂糖…大さじ1/2
【下準備】
1.豚肉は5mm程度の厚さに切り、玉ねぎはすりおろします。
2.ビニールなどに1の豚肉とすりおろした玉ねぎを一緒に入れ、30分程漬けこみます。
3.30分程経ったら豚肉の玉ねぎをふき取り、玉ねぎはソース用の小鍋に移しておきます。
【作り方】
1.白菜は3cm幅ぐらいのザク切りにして鍋底に敷き、下準備した豚肉を並べます。
2.酒を入れて弱火にかけ、蓋をして蒸し焼きにします。
3.下準備の玉ねぎとソースの調味料を火にかけて10分程度混ぜながら玉ねぎに甘味がでるまで加熱します。
4.白菜と豚肉をお皿に盛りつけ、4のソースをかけて完成です。
※しっかりした味を好まれる方は蒸し焼きの際に顆粒だしや塩を少量加えると食べやすいです。
※白菜はお好みの野菜やきのこでも美味しくいただけます。