ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

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栄養コラム

No.167

2017年11月1日

管理栄養士 田口瑛里沙

価額の変動が少なく比較的安価なため家庭の食卓に並びやすく、お弁当や外食の定食メニュー、寿司、刺身などにもよく使われているため、鮭(サーモン)を食べる機会は多いのではないでしょうか。農林水産省によると、この10年間で鮭の消費量は著しく増加し、日本で最も多く食べられている魚といわれています。日本の鮭は、今がまさに旬でとてもおいしい時季です。今回は、栄養や活用法などをご説明しながら、鮭の魅力をお伝えします。


鮭について

鮭は川で生まれた後、数年間は海で成長し、産卵期を迎えた秋に再び川に戻る回遊魚です。現在は7割以上が養殖で海外からの輸入品も増加したため、鮭を使用する機会が増えています。種類も豊富で、刺身のように生食で食べやすいものから、焼き魚などの料理にして食べるものまで、鮭の種類によって特徴があり、合う料理が異なります。

【鮭の種類と特徴】
●白鮭
日本でとれる鮭の多くは白鮭で、北海道から東北地方で多く漁獲されています。身は淡いオレンジ色で脂肪分は漁場や時季によって異なります。9~12月頃にとれる旬の鮭は「秋鮭(アキサケ)」と呼ばれ、産卵のために川へ戻ってきたときに漁獲することから、脂が少ないことが特徴で、バターや油を使った料理でもさっぱり食べられます。

 ≪適した活用法≫
 ムニエル、ホイル焼き、フライ など

●紅鮭
北太平洋に生息しているため、日本で流通しているものはロシアやアラスカからの輸入品がほとんどです。産卵期を迎えると身が濃紅色になることから紅鮭と呼ばれ、身が厚く引き締まり、適度に脂が乗っていることが特徴です。キレイな色合いから加工品として使用されたり、塩漬けとして保存されていることが多いです。

 ≪適した活用法≫
 スモークサーモン、冷凍加工品、お弁当やおにぎりの具 など

●銀鮭
紅鮭と同様に北太平洋に生息していますが、銀鮭は白鮭など他の魚より成長のスピードが速いことから養殖が盛んです。日本では、宮城県や鳥取県で養殖され、他国ではチリが盛んで、日本にもチリ産が多く輸入されています。「塩鮭」としてお店に並ぶことが多く、身はオレンジ色で、脂が多く、柔らかいことが特徴です。

 ≪適した活用法≫
 焼き物、蒸し物、鍋物、スープ、煮込み料理 など

●アトランティックサーモン
日本では、輸入品のノルウェー産が流通しています。生食用にチルド加工されており、皮のない大きめの切り身や刺身状で販売されています。身は淡い赤のサーモンピンク色で、脂がのっていて柔らかいことが特徴です。主に生食用として食べられますが、脂が多いので加熱しても身が柔らかく、おいしく食べられます。

 ≪適した活用法≫
 刺身、寿司ネタ、カルパッチョ、パスタの具、シチュー など

●トラウトサーモン
サーモンという名前がついていますが、通常の鮭とは異なり、身の色、味が良いニジマスを海で人工的に養殖された魚のことです。日本ではチリ産が多く流通しています。アトランティックサーモンと似ていて、脂が多く、生食用として食べられます。また、アトランティックサーモンより安価なことが特徴です。

 ≪適した活用法≫
 刺身、寿司ネタ、カルパッチョ など


鮭の栄養

鮭は味にクセがなく、身が柔らかいため、子供から高齢者まで食べやすい魚であり、体に必要な栄養をしっかり補えます。鮭の中でも特長的な栄養をご紹介します。

●高たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や臓器、皮膚などの体をつくったり、健康を維持するためには欠かせない栄養素ですが、国民健康栄養調査によるとたんぱく質の摂取量は近年減少傾向にあります。特に若い女性では、やせ傾向で食事の摂取量が少ないことからたんぱく質も不足し、低栄養による体調不良などが問題となっており、また高齢者でもたんぱく質不足により骨や関節、筋肉など運動器の衰えによるロコモティブシンドローム(歩行や立ち座りなどの日常生活に障害を来たしている状態)になりやすいため、積極的に補いたいものです。鮭には良質なたんぱく質が多く、1切れで成人女性の1食分以上、成人男性でも1食分の約9割は必要なたんぱく質をとることができます。
例えば手軽に用意できるおかず「納豆」「目玉焼き」「ウインナー」の1食分と比較すると、たんぱく質は鮭1切れの半分以下程度です。たんぱく質の多い鮭をうまく取り入れるようにしましょう。

 たんぱく質(g)
鮭 1切れ17.8
納豆 1パック7.4
目玉焼き 1個6.2
ソーセージ 3本7.2
1食の必要量成人男性20.0
成人女性16.6

(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年、日本人の食事摂取基準(2015年版)より)

●ビタミンDが多い
ビタミンDは、カルシウムを効率よく吸収するために必要不可欠で、骨の形成に関わる重要なビタミンです。カルシウムと合わせてとることで、骨粗鬆症予防に繋がります。ビタミンDは日光を浴びることで皮膚からも合成されますが、紫外線対策が盛んで紫外線を避けがちな現代では、若年女性を中心に、幼児や寝たきりの高齢者で血液中のビタミンD量の不足が指摘されており、ビタミンDを食品から積極的に摂取することが重要になっています。
鮭にはビタミンDがとても多く含まれており、フレーク状にほぐして瓶詰されている鮭フレーク大さじ2杯程度でも、成人男女1日分の目安量をとることができます。また、ビタミンDには「植物性」と「動物性」があり、鮭などの「動物性」の方がヒトの体ですぐに活用できる状態なので、植物性でとるよりも体への吸収が良いという特徴があります。

 ビタミンD(μg)
鮭 1切れ32.0
鮭フレーク 大さじ2杯(約20g)6.4
焼きしいたけ 3枚0.2
1日の目安量(成人男女)5.5

(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年、日本人の食事摂取基準(2015年版)より)


鮭の選び方

スーパーなどで売られている鮭は、運ぶ際に鮮度を保ち、保存性を高めるために塩を使用しています。生魚で購入する際は「甘口(甘塩)」や「辛口(辛塩)」とよく書いてあることがあると思いますが、これは塩分量を示しています。用途に合わせて購入しましょう。

甘口(甘塩)・・・3~5%程度の塩分量で加工処理したものです。塩を振っただけの『振り塩』
         と書かれている場合もあります。焼き鮭などそのまま食べることに向きま
         す。
辛口(辛塩)・・・5~8%前後の塩分量で加工処理したものです。保存性は甘口(甘塩)より
         高いですが、塩味が強いため、焼き魚とするには塩抜きが必要です。
         そのまま使う場合は、フレークにしておにぎりの具やお茶漬けなどに使う
         場合に向きます。

【簡単な塩抜き方法】
[材料]
・鮭・・・4切れ
・水・・・2.5カップ
・みりん・・・大さじ1
・酒・・・大さじ2

[方法]
1.鮭全体が浸るくらいの容器(バットなど)に鮭と調味料を入れ、ラップをします。
  ※容器がない場合は、ポリ袋などの袋でも構いません。
2.そのまま冷蔵庫で2~3時間つけておきます。
  ※しっかり塩抜きしたい場合は、1日程度つけておきましょう。
3.塩抜きできたら、キッチンペーパーで軽く水分をふきとってから、料理に使用したり、
  冷蔵や冷凍庫に入れて保存をしましょう。


冷凍保存の活用

鮭は塩加工されていることが多く、冷蔵庫のチルド保存でも甘口(甘塩)で
2~3日、辛口(辛塩)で4~5日程度日持ちしますが、冷凍しても比較的味が落ちにくい食品なので、まとめて買って余った分は冷凍しておくと、すぐに使えて活用の幅も増えます。

【生で冷凍】
[保存方法]
一度キッチンペーパーなどで水気を切ります。空気が入らないように1切れずつぴったりラップをします。ラップのまま冷凍庫に入れても良いですが、さらにジッパー付きの袋など密閉できるものに入れてから冷凍すると冷凍焼けを防ぎ、風味が落ちづらくなります。

[保存期間]
2~3週間程度

[活用]
凍ったままソテーにしたり、鍋に入れたりして使用できます。また、酒などを加えて蒸し料理にするとふっくらしておいしくいただけます。焼き魚にする場合は、凍ったまま焼くと身がパサつきやすいので、前日に冷凍庫から出し冷蔵庫に入れておいたり、密閉袋ごと水に浸したりして、解凍してから焼くと良いでしょう。

【調理して冷凍】
[保存方法]
そのまま切り身で焼くなどして粗熱をとった後、あとから使いやすいように1切れずつラップに包みます。生のときと同様、さらにジッパー付きの袋など密閉できるものに入れて保存すると、風味が落ちづらくなり、冷凍焼けを防ぎます。身をほぐして保存する場合は、大さじ1~2杯程度をラップに小分けにしておくと使いやすいです。

[保存期間]
1ヶ月程度

[活用]
レンジで温めてそのまま食べられます。朝食やお弁当の具など急いでいる時でも簡単に用意できます。


おすすめレシピ

今回は鮭フレークをご紹介します。鮭は「焼き鮭」にして食べられることが多いと思いますが、フレーク状にしておくとご飯にかけるなどいつでも手軽に食べやすく、さらに炒め物や和え物、お浸し、チャーハンの具にするなど、いろいろな料理に簡単に鮭をプラスすることができます。
今回ご紹介する鮭フレークは、鮭に豊富なビタミンDを活かし、カルシウムの多い食品とあわせた骨粗鬆症予防のオリジナル鮭フレークです。
また、そのフレークを使った炒め物レシピもご紹介します。旬のチンゲン菜を使い、よりカルシウム量をアップさせた一品です。

●オリジナル鮭フレーク

【材料】
・生鮭(甘塩) ・・・2切れ
・いりごま ・・・大さじ1
・ちりめんじゃこ ・・・大さじ1.5
・酒 ・・・大さじ1/2
・みりん ・・・大さじ1
・しょうゆ ・・・小さじ1/2
・顆粒だし ・・・小さじ1/2

【下準備】
鮭は下記どちらかの方法で火を通しておきましょう。
[方法1]ゆでる
     鍋に水を入れ、沸騰したら鮭を入れて、5分ゆでます。
[方法2]焼く
     魚グリル、またはフライパンで火が通るまで焼きます。

【作り方】
1.下準備した鮭は皮をはがして身と皮に分け、大きめの骨を取り除きます。
2.フライパンに鮭、いりごま、ちりめんじゃこを入れ、鮭をほぐしながら炒ります。
3.鮭に火が通ったら、酒、みりん、しょうゆ、顆粒だしを入れて、全体をよく混ぜます。
4.味が全体に混ざったら完成です。

※薬味(大葉、わけぎ、みょうが など)をみじん切りして一緒に混ぜても風味が豊かになり、
 おいしくいただけます。
※1.で分けた皮は、フライパンで少し焦げが付くまで焼くとパリッとしておいしくなるので、
 無駄なく食べましょう。


●チンゲン菜とオリジナル鮭フレークのピリ辛ガーリック炒め

【材料】(2人前)
・チンゲン菜 ・・・1株
・オリジナル鮭フレーク ・・・大さじ2
・にんにく ・・・1/2かけ
・鷹の爪 ・・・1/2本
・塩 ・・・少々
・こしょう ・・・少々
・油 ・・・大さじ1/2

【作り方】
1.チンゲン菜は2cm幅くらいに切っておきます。
2.にんにくはみじん切りにし、鷹の爪は輪切りにします。
3.フライパンに油と2を入れ香りがたったら、チンゲン菜とオリジナル鮭フレークを入れて、
  さっと炒めます。
4.最後に塩、こしょうで味を調えたら完成です。

※油は、オリーブオイルやごま油を使用するとより香りがよくなります。
※チンゲン菜以外にも、小松菜やほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、もやしなど色んな
 野菜と合わせてもおいしくいただけます。