ベトナムは日本人が旅行しやすく、また魅力的な国として最近よくテレビや雑誌などで特集されています。ノスタルジックな異国情緒や歴史的な文化が味わえ、食事は日本人に親しみやすい味でおいしいということもあり、とても興味を持ち、この夏に訪れてきました。着いたときは、バイクの多さやクラクションを鳴らしながら走る運転にびっくりしましたが、ベトナム人の優しい人柄に触れ、歴史的な建造物や美しいビーチをゆっくり眺め、おいしい料理もたくさん味わうことができました。
<ベトナムとは>
ベトナムは、中国から続くインドシナ半島の南シナ海に面した国で、タイやフィリピンと同じような緯度に位置しています。縦に長い国なので場所によって気候が異なり、首都であるハノイを中心とした北部は、夏が暑く、冬が寒くなる日本のような四季があり、ホーチミンシティが有名な南部は、日中30℃を超える日が一年中続きます。私が行った中部のダナン・ホイアン・フエは、8月はかなり暑く、日中は40℃を超える暑さの日もあり、体力が奪われましたが、9月から2月頃は少し肌寒いと感じることもあるぐらいの気候です。
<ベトナムの食文化>
ベトナムはさまざまな国からの侵略などを経て1975年に独立しており、いろいろな国の食文化が入り混じっています。特に中国やフランスの影響が多くみられますが、他国の影響を受けながらもベトナム独自のスタイルが築かれています。
まず、中国の米食文化の影響から、古くから稲作が盛んで米を主食にしており、ご飯におかずという食事を箸で食べる習慣があります。そしてご飯以外でもベトナム料理で有名なフォーや生春巻きの麺や皮(ライスペーパー)は米粉から作られており、地域ごとに異なる種類の麺やライスペーパーが食べられ、米はご飯だけでなく加工品としてもよく食べられています。また炒める、揚げるなどの調理方法も中国からの影響と言われ、これに香草や調味料などが加わってベトナム料理がつくられています。
フランスからの食文化の影響としては、バインミーというバケットに具を挟んだサンドイッチが有名です。バケットは、皮がカリッと中がもちもちしていて、噛むほどに甘味が感じられておいしかったです。具は牛・豚・鶏肉、魚介類やいろんな種類があり、レストランでも食べられますが、屋台でも売られており、ベトナムのファストフードになっていました。他にも、コーヒーはフランスから持ち込まれ、濾してコーヒーを抽出するフランス人の習慣から、アルミやステンレス製の底に小さな穴のあいたフィルターで入れるベトナムコーヒーが定着しています。ベトナムはコーヒー豆の生産量がブラジルに次いで第2位ですが、ブラジルなどで栽培される有名な品種と異なり、インスタントやアイスコーヒーとしてよく使われる品種で、苦味が強いため砂糖や練乳などを入れる飲み方が多くみられています。日本ではベトナムの品種の豆があまり見られないため、お土産としてもよく買われています。
<ベトナム料理の特徴>
●香草類
使われる香草は日本で親しまれているパクチーだけでなく、オリエンタルバジル、赤しそ、ディル、ミント、ポリゴヌムなどがあり、料理には必ずと言っていいほど添えられています。特によく食べたのはオリエンタルバジルで、西洋料理で使われるバジルではなく、少しミントのようなスッとする味で、後味がさっぱりする香草です。これらの香草やライムなどを絞って食べることが多いためか、塩分は控えめな料理が多い印象です。ベトナムの人は肥満が少ないそうですが、香草などの野菜を良く食べることも影響しているようです。
●調味料~ヌクマム~
ヌクマム、ヌックマム、ニョクマムなどいろんな言い方をされていますが、魚介類(イワシやあじ)に塩を加えて発酵させた調味料です。しょっつるやタイのナンプラーと同じような調味料ですが、作り方や塩分の濃さなどが異なり、ベトナム料理には欠かせない調味料です。ごはんにヌクマムだけかけて食べる場合もあるそうで、酸味と旨味がどんな料理にかけてもとてもよく合う調味料です。料理のタレには、料理に合わせてヌクマムに砂糖やライム、ニンニクやトウガラシなどを入れて作られています。日本ではあまり流通していないのでナンプラーで代用されています。
<ホイアンの料理>
ベトナム料理は、同じ料理でも地域によって味や名前が異なり、地域に合った郷土料理として多くの種類があります。その中で私の行ったホイアンの料理を紹介します。ホイアンはベトナムの昔の街並みが残る場所として世界遺産に登録されています。昔は南シナ海とトゥボン川によって日本、中国、オランダ、ポルトガルなどの商船が行き来する貿易港として栄えており、外国人が多く住み、日本人も多かったそうです。ホイアンの中でも16世紀に居住していた日本人が建設に関わったとされる有名な来遠橋、別名日本橋は有名な観光名所です。
●カオラウ
伊勢うどんがルーツとも言われている麺料理です。太めの麺に焼き豚、香草、揚げたせんべいがのっており、甘辛なタレでいただきます。麺の硬さは伊勢うどんより少し固めですが、少量のタレに温かい麺を絡ませて食べる食べ方は伊勢うどんと同じでした。麺は米粉から作られていますが、ベトナムでよく食べられるフォーとは異なり、もちもちした食感でホイアンならではの麺です。揚げたせんべいの油のコクが麺や汁に加わるとさらにおいしかったです。
●ホワイトローズ
見た目が白いバラのようなことからこの名がついた料理です。米粉の皮に海老のすり身を包んで蒸した皮がぷりぷりしています。このホワイトローズと揚げにんにくや揚げ玉ねぎを一緒にヌクマムにつけて食べられています。
<ライスペーパーの活用>
日本で手軽に使えるベトナム食材としては、ライスペーパーがあります。身近なスーパーで取り扱われていることが多くなっており、乾物なので保存しやすく、水やお湯にくぐらせるだけでそのまま食べられますので是非活用していただきたい食材です。また、小麦粉を使用していないのでグルテンを消化しづらい方にはグルテンフリーなのでおすすめな食材です。
活用例)
○生春巻き
ベトナム料理定番です。ライスペーパーを水で戻し、お好みの野菜や肉、魚介などを巻くだけで食べられます。
○春巻き、餃子、シュウマイの皮として
生以外でも揚げる、焼く、蒸すこともできます。ライスペーパーを水で戻し、いつもの皮と同じように使うことができます。生と異なる食感も楽しめ、さらに中華食材の皮よりも脂質が少なく、さっぱりと食べ応えのある料理になります。
○デザートに
もちもちとした食感は、日本のもちや求肥と似ています。あんやフルーツを巻いても素敵なデザートになります。
<おすすめレシピ>
ライスペーパーを活用したレシピを2種類ご紹介します。生春巻きとして使うことが多いですが、余ったときにも使いやすいレシピです。
●簡単フォー風スープ
【材料】(2人前)
・ライスペーパー…小4枚(20g)
・鶏ささみ…1本(約40g)
・酒…大さじ1/2
・もやし…80g(約1/3袋)
・万能ねぎ…1本(約5g)
・鶏ガラスープ(顆粒)…大さじ1
・塩…小さじ1/3
・水…2カップ(400㏄)
【作り方】
1.鶏ささみに酒をふりかけ、ラップをして電子レンジで1分加熱し、粗熱がとれたらほぐしておきます。
2.ライスペーパーははさみで麺状に切り、万能ねぎは小口切りにします。
3.お湯をわかして、鶏ガラスープ、塩、もやしを入れて1分ほど煮ます。
4.鶏ささみ、ライスペーパーを入れて火を止めます。
5.器に入れ、万能ねぎをのせて完成です。
※ライスペーパーが割れてしまう場合は、水でさっと湿らせてから1枚ずつ包丁でカットしてください。重ねるとくっつきやすいので、すぐにスープに入れてほぐしてください。
※ライスペーパーには塩分が含まれますので、通常のスープより少し薄味にしましょう。
※インスタントスープに入れても手軽にできます。外出先などでは、ライスペーパーを一口大ぐらいにちぎってそのまま入れても使えます。
※お好きな方はパクチーやヌクマム、ライムを入れるとエスニックな風味が加わり、美味しくなります。
●きなこもち風アイス
【材料】(2人前)
・ライスペーパー…小2枚
・アイスクリーム…100ml(包める程度)
・きな粉…大さじ2
・砂糖…大さじ2
・黒蜜…お好み
【作り方】
1.アイスクリームは包む大きさにとりわけ、冷凍庫で冷やします。
2.きなこと砂糖を混ぜておきます。
3.ライスペーパーを水でさっと濡らし、お皿に敷きます。
4.柔らかくなったら、1のアイスクリームを載せて包みます。
5.2のきな粉と黒蜜をお好みでかけてお召し上がりください。
※アイスクリームは丸く形を整えてから冷やすと巻きやすくなります。