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栄養コラム

ごま

No.165

2017年9月1日

管理栄養士 田口瑛里沙

薬味や料理の味付け、お菓子など幅広く使われている「ごま」は、日本では縄文時代から伝わり、昔から栄養価が高い食品として精進料理などに用いられ親しまれています。ごまを料理に少し入れるだけで栄養が補え、さらに風味が増しておいしくなる万能な食品です。


ごまについて

ごまは暑い季節を好み、アフリカやサバンナなどの熱帯地域や温帯地域で幅広く栽培されています。春に種をまき、9~10月頃に収穫され今頃が旬といわれますが、日本での栽培は極めて少なく、ほとんどが輸入品で年中購入することができます。
ごまの種類は約3000種ありますが、その中でも大きく3つに分けることができます。3種の栄養はほとんど同じですが、風味などの違いから合う料理が異なるので、用途に応じて使い分けるとよりごまの風味が楽しめます。

【ごまの種類】
白ごま・・・ほのかな甘味と香りで様々な料理に活用できます。
黒ごま・・・香りが強くコクがあるため、料理のアクセントとして使ったり、お菓子に使われる
      ことが多いです。
金ごま・・・香りがよく濃厚な味わいで、よりごまの風味を強めたいときにおすすめです。
      白ごまや黒ごまに比べると価額は高めです。


ごまの良さ

ごまは1粒の中に脂質やたんぱく質、ビタミンやミネラルなど様々な栄養が含まれており、特定保健用食品(トクホ)に認可されている「ゴマペプチド」や、サプリメントで注目されている「セサミン」など健康に良い成分も豊富に含まれています。豊富な栄養の中からごまの良いところをピックアップしてみました。

●体に必要な脂質がとれる
脂質の種類は、脂質を構成している脂肪酸によって大きく2つに分けられ、肉や乳製品などの動物性食品に多い「飽和脂肪酸」と、ごまなどの種子や植物油など植物性食品に多い「不飽和脂肪酸」があります。ごまの主成分の半分は脂質で、脂質の中でも後者の「不飽和脂肪酸」が7割以上を占めています。不飽和脂肪酸には「リノール酸」や「α-リノレン酸」という細胞膜やホルモンの原料になるなど体の機能を正常に保つには必要不可欠な「必須脂肪酸」があり、これらは体内でつくることができないため食べ物から摂取する必要があります。この「必須脂肪酸」がごまには特に多く含まれています。

平成27年国民健康・栄養調査によると肉や乳製品の摂取が増えており、飽和脂肪酸の摂取量は男女共に多めの傾向にあります。必須脂肪酸である「リノール酸」や「α-リノレン酸」は、肉や乳製品には少ないため、ごまなどの植物性食品を上手く組み合わせてとることが重要です。必須脂肪酸は熱や空気などにより酸化しやすいことが欠点ですが、ごまはビタミンEやゴマグリナンなどの抗酸化作用のある成分が豊富に含まれているため、他の植物性食品に比べて酸化しづらく、効率よく摂取することができます。また、ごまは植物油より様々な料理に使うことができ、少量でも体に必要な脂質がとれるため、ダイエットなどで脂質を控えている方はごまを活用することも良い方法です。

●骨粗鬆症予防
ごまには骨の形成に重要な「カルシウム」が多く含まれています。カルシウムが多いことで知られている牛乳と比べると、牛乳コップ1/2杯とごま大さじ1杯が同等量含まれています。また、ごまには牛乳に少ないカルシウムの吸収をよくする「マグネシウム」が含まれていることも特徴で、牛乳とカルシウム量が同等でもマグネシウムは3.3倍も多く含まれています。


(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)

●減塩効果
ごまの独特の風味がアクセントになったり、脂質が多い食品ならではのコクがプラスされるため、薄味でもおいしく食べられます。例えば、ほうれん草のお浸しをごま和えにすると約30%減塩できます。炒め物やみそ汁などの料理でも醤油や塩など調味料での味付けを薄めにし、ごまを加えて食べてみるもの良いでしょう。


(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)


ごまの保存方法

ごまは不飽和脂肪酸が多いため、空気に触れると酸化が進みやすいので、
封をあけたら早めに使いきることがおすすめです。一度開けたものは密閉できるビンを利用し、高温多湿をさけ、冷暗所で保存しましょう。また、湿気を吸うと風味が落ちカビなどが生えやすいため、乾燥剤などを一緒に入れると良いでしょう。


ごまの活用法

ごまは和え物だけでなく様々な料理に活用できます。いろんな料理に市販のいりごまや、すりごまなど使いやすいものを上手にプラスしていきましょう。

ご飯に・・・ごま塩のようにふりかけとして使ったり、ご飯と一緒に炊くとごまの香りがさらに
      増し、食欲増進に繋がります。

炒め物や汁物(みそ汁など)に・・・ごまを加えることで、味のアクセントになったり、まろや
                 かな口当たりになり、普段と違う味の料理が楽しめます。

牛乳や豆乳に・・・牛乳や豆乳に少ないマグネシウムを補い、カルシウムの吸収を良くしてくれ
         ます。


ごまをよりおいしく食べるポイント

ごまは独特の香りや風味が食欲を増し、料理をおいしくさせます。既に炒って販売されている「いりごま」も炒って使うことでより香りが強くなります。また、封を開けてから時間が経つと香りが少なくなりますが、一度炒ることで香りが少し戻ります。

※食べる際はすりごまに!
ごまは、かたい殻に覆われており消化が悪いため、すり鉢ですって食べることがおすすめです。また、することで栄養の吸収もよくなります。すり鉢などがない場合は「すりごま」や「ねりごま」など加工されているものを購入すると良いでしょう。


おすすめレシピ

9月6日は黒ごまの日ということで、黒ごまを用いたデザートをご紹介します。牛乳にごまを合わせることでカルシウム量が増え、さらにごまに多く含まれるマグネシウムによりカルシウムの吸収がアップします。
平成27年国民健康・栄養調査によると女性の1日のカルシウム平均摂取量は、20~30代で約430mg、40代で454mg、50代で499mgと、女性の1日の推奨量650mg(日本人の食事摂取基準2015年版より)に比べると151~220mg程少ない状況です。今回のレシピは、女性の1日に必要量なカルシウムのおおよそ1/3量をとることができ、40,50代女性のカルシウム不足分は十分に満たすことができる、間食などにおすすめの一品をご紹介します。

●牛乳寒天~黒ごまソースがけ~

【材料】(2人前)
[牛乳寒天]
・牛乳 ・・・180ml
・水 ・・・50ml
・砂糖 ・・・大さじ1強
・粉寒天 ・・・1/2袋(2g)

[黒ごまソース]
・すりごま(黒) ・・・大さじ2
・はちみつ ・・・大さじ2
・お湯 ・・・大さじ1

【下準備】
牛乳は常温にもどしておきます。
※またはレンジ600Wで30秒ほど軽く温めてください。

【作り方】
[牛乳寒天]
1.小さめの鍋に水と粉寒天を入れ、よくかき混ぜてから火にかけます。
2.かき混ぜながら寒天を溶かし、沸騰したら火を弱め、砂糖を入れてしっかり溶かします。
3.火を止め、常温の牛乳を鍋に円を描くようにゆっくり2に流し入れ、全体をよく混ぜます。
4.3を平たい容器(タッパーなど)に移し、粗熱をとった後、冷蔵庫に入れて冷やします。

[黒ごまソース]
1.すりごま、はちみつ、お湯を入れしっかり混ぜます。
2.全体がよく混ざったらソースの完成です。

冷やして固まった牛乳寒天を食べやすい大きさに切ってお皿に盛り、黒ごまソースをかけたら完成です。

【アレンジ】
・牛乳寒天にみかんなどフルーツの缶詰を入れると彩りが良くなり、フルーツの酸味ですっきり
 した味になります。
 ※フルーツの中でもパイナップルやキウイフルーツは、たんぱく質分解酵素をもち、寒天では
  固まらないので使うのは避けましょう。
・ごまのザラザラした舌触りが苦手な方は、いりごまをねりごまに変えると口当たりがなめらか
 になり、食べやすくなります。
・黒ごまを白ごまに変えてもおいしくいただけます。