風が冷たくなり、木の葉も少しずつ色づきはじめる頃ですね。食欲の秋でもあるこの時期は、
おいしい旬の食材がたくさんあります。
今回は秋の味覚の一つである「栗」についてのお話です。
栗の歴史
栗の歴史は古く、石器時代から栗の木があり、縄文時代から栽培が始まったといわれています。その頃から栗は食料として食べられており、そのまま干して乾燥させ、乾燥したものを臼で
ついて殻を割って食べる“かちぐり”という料理が主流でした。栗は1本の木に多くの実がなり
一度に大量に栽培することができ、さらに保存食にもなるため、人々に安定した食べ物を与えてくれることから、お祭りやお供え物として使われていました。また、かちぐりが「勝つ」に繋がるとして戦国時代では出陣や勝利の祝いなどで食べられており、昔から縁起の良いものとして親しまれてきました。現代でも栗を食べて縁起を担ぐ風習が残っており、おせち料理にある「栗きんとん」は、商売繁盛や金運を願った料理としてお正月に食べられています。
栗の種類
現在では、輸入栗や栗の加工品などが出回りいつでも簡単に食べられるようになりました。
栗は日本だけでなく、中国やヨーロッパなどにも自生しており、見た目は同じ様に見えますが、それぞれ異なった特徴があります。
●日本栗
日本で一般的に販売されている国産栗です。比較的大粒で、実は黄色っぽく、内側の薄い皮
(渋皮)がはがれにくいことが特徴です。日本栗は他の栗と比べて、水分が多く粘質なため、
ゆでて調理することに向いています。しっとりとした食感で風味が良く、甘味が少ないため、
お菓子だけでなく、ごはんやパン、料理などに入れて食べるのにもおすすめの栗です。
【向いている料理】栗ごはん、栗きんとん、甘露煮 など
●中国栗
日本栗と比べると小粒で、実は白っぽい色をしています。水分が少ないため、実が固くしまっており割れにくく、殻や渋皮を簡単にむくことができます。甘味が強く「甘栗」とも言われ、そのまま食べることに向いている栗です。
【向いている料理】焼き栗 など
●西洋(ヨーロッパ)栗
日本栗と中国栗の間の特性をもっています。大きさは中国栗と同様に小粒で、実は白っぽく、
しまっていて粘り気が少ない栗です。甘味は、中国栗ほど強くなく、ほんのり甘味があります。殻や渋皮も簡単に向けるため、主にお菓子などに使われることが多い栗です。
【向いている料理】マロングラッセ、モンブラン など
栗の特徴と栄養
栗の主成分は「炭水化物」で、脂質の少ないことが特徴です。その他にもビタミンやミネラルが豊富に含まれており、少量でも必要な栄養がとれます。
【特徴1】効率のよいエネルギー補給源
栗5個のカロリーは、ご飯茶碗小盛り1杯分と同等のカロリーに相当します。少量でもしっかり
エネルギーを補うことができます。また栗にはビタミンB1が多いことも特徴で、糖質を素早くエネルギーに変え、効率よくエネルギー補給ができるため、運動や、脳を働かすエネルギー源の食品として適しています。しかし、食べ過ぎるとエネルギー過剰になりやすいので、1日5個程度にとどめましょう。
エネルギー(kcal) | ビタミンB1(mg) | |
日本栗 5個 | 167 | 0.17 |
ご飯 茶碗小盛り1杯 | 168 | 0.02 |
(日本食品標準成分表2015より)
【特徴2】脂質が少ない
栗には脂質がほとんど含まれません。そのため、間食や夜食など、ちょっとエネルギー補給を
したい時にはおすすめの食品です。間食や夜食で食べがちな菓子パンやお菓子は、カロリーだけでなく脂質が多く、肥満などにつながりやすいので、旬の今の時期だけでも栗に変えてみるのも良いでしょう。
脂質(g) | |
日本栗 5個 | 0.6 |
メロンパン 1個 | 7.4 |
ドーナツ 1個 | 10.5 |
チョコクッキー 5枚 | 12.7 |
(日本食品標準成分表2015より)
【特徴3】食物繊維が豊富
野菜に多いイメージの食物繊維ですが、栗にも豊富に含まれています。食物繊維は、血糖値の
上昇を緩やかにし、コレステロールの吸収を抑えるなど、生活習慣病予防に役立ち、さらに栗に多く含まれる食物繊維は、便通を整えて腸を健康にする作用があります。腸を健康にすることは全身の健康に影響を与えるといわれているため、積極的にとりたい成分です。
栗1個分の食物繊維を野菜と比較すると、トマト1個分、キャベツでは2枚分、レタスでは6枚分と同等の食物繊維量となり、栗の食物繊維がとても多いことがわかります。
栗の渋皮に含まれる“タンニン”
栗の硬い部分の皮(鬼皮)をむくと、内側にある薄い皮のことを「渋皮」といいます。近年、
栗の渋皮にワインと同じポリフェノールの一種である「タンニン」が多く含まれていることが
わかり、注目されています。タンニンは強い抗酸化作用をもち、体内の老化を防止し、動脈硬化や生活習慣病予防、血管など体の老化防止効果があります。また、最近の研究では、栗の渋皮に含まれるポリフェノールは、糖分を分解するアミラーゼという酵素の働きを阻害することがわかり、血糖値の上昇を抑える効果が期待されています。ただし、タンニンは鉄の吸収を妨げるため、貧血気味や貧血症状があるときは控えるようにし、渋皮は切り取って食べましょう。
●渋皮もおいしく食べられる調理法
【甘露煮】
砂糖を用いて甘く煮ます。渋さも気にならず食べられ、おやつなどの間食におすすめです。
【栗油炒め】
渋皮のついた栗を油で炒めると渋皮がパリパリになり、気にならず食べられます。合わせて塩を振ると良いお酒のおつまみになります。
【渋皮茶】
生栗からむいた渋皮をお茶パックにいれ、沸騰したお湯に入れて数分置くと渋皮茶が作れます。渋みが強いので、水やお湯で薄めて調整しながら飲みましょう。
おすすめレシピ
渋皮付きの栗を使用したパンレシピをご紹介します。ホットケーキミックスを用いて簡単に作れます。朝食やおやつ、パーティーのときなどにおすすめの一品です。
●栗パン(渋皮付き)(4個分)
【材料】
・日本栗(殻つき) ・・・130g(約5個)
・ホットケーキミックス ・・・1袋(200g)
・牛乳 ・・・1/4カップ強
・溶かしバター ・・・適量
・塩 ・・・少々
・油 ・・・大さじ1
[アク抜きの際に必要なもの]
・重曹 ・・・大さじ1
・キッチンペーパー
【用意するもの】
・オーブンシート
【下準備】
1.栗のアク抜きをしておきます。
[方法]
① 渋皮を残すように、栗の硬い皮(鬼皮)をむきます。むいたものは乾燥しないように水に
浸けておきます。(※ むく前に熱湯にくぐらせると鬼皮がむきやすくなります。)
② 小さめの鍋に、①と浸るくらいの水、重曹大さじ1/2杯を入れ、中火にかけます。
沸騰したら弱火にして、3~4分程ゆでて、火を止めます。
③ アクが出てゆで汁が変色するので、ゆで汁を捨て、流水で軽く洗います。
④ スポンジなどで軽くこすり、硬い筋や厚い渋皮をとりのぞきます。
⑤ もう一度アク抜きを行います。(①~③の作業を繰り返す)
⑥ 最後に流水で洗ったあと、キッチンペーパーで栗の水分をよく拭きとっておきます。
2.オーブンを200℃に余熱しておきます。
【作り方】
1.フライパンに油を入れ、下準備した栗を入れて炒めます。
※このとき、栗に包丁で少し切り込みを入れておくと皮が破れずに炒められます。
2.栗に焦げ目がついてきたら、塩を振り軽く混ぜたあと、火からおろします。
3.2を1cm角くらいの大きさに細かく切ります。
4.ホットケーキミックスをボウルに入れ、牛乳を数回に分けて全体を混ぜながら入れて
いきます。
5.牛乳を全て入れたら、まとまるまで手で捏ねます。
6.5に3を入れ、栗が全体に混ざるようにさらに捏ねます。
7.4つにわけ、1つずつ丸めてドーム型に形成していきます。
(形はお好みで変えて構いません)
8.7をオーブンシートに乗せ、表面に溶かしバターを塗ります。
9.予熱したオーブンに入れ、200℃で約10分焼き、完成です。
【アレンジ】
・焼けたパンに、ホイップクリームを添えてはちみつやメープルシロップをかけると、
デザート感覚でおいしく召し上がれます。
・栗だけでなく、くるみなどのナッツを合わせて入れても食感が良くなり、おいしいです。