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栄養コラム

蛤(はまぐり)

No.42

2007年2月1日

国立健康・栄養研究所認定 栄養情報担当者(NR) 健康運動指導士 管理栄養士 須藤 律子

「蛤(はまぐり)」の歴史はとても古く、約一万年前の縄文時代の貝塚から殻が出土されており、日本人が古くから蛤を好んで食べていたことがわかります。「浜の栗」と呼ばれるほど色・艶もよく、この名前は栗のような形から由来していると言われていますが、旬は12~3月あたり。冬は成長が止まるので身は大きくなりませんが、栄養分が蓄えられているので旨みとコクが増して美味しく頂けます。今回は今の時期美味しく頂ける「蛤」に関する情報をお届けします。

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蛤と言えば・・・お祝いと洒落?

蛤の貝殻は同じ貝の殻しかかみ合わないことから、昔は「貝合わせ」bonbori-3
という遊びに利用されたり、また夫婦和合の象徴として婚礼の披露宴などの祝い膳に使われてきました。
またそのような意味合いから「女性が素敵な男性に巡り合えて幸せになれるように」という願いを込め、女の子の健やかな成長を祈る「桃の節句」にも欠かせないものとなっています。

また「その手は桑名の焼き蛤」という洒落文句もありますね。
『東海道中膝栗毛』の主人公、弥次さん喜多さんの珍道中で天下に知られた桑名(三重県)の「焼き蛤」は江戸時代の浮世絵にも描かれており、その時代は松笠(松ぼっくり)を焚いて蛤を焼いていたようです。
江戸時代に交通の要所だった桑名から富田にかけての東海道沿いで焼き蛤を食べさせる茶店は旅人の人気を集めていましたが、人気を集めていたのは「焼き蛤」だけではなく「茶屋女」も魅力の一つだったため、茶屋女の甘い言葉には騙されまいと、「その手は食わない」という意味のこの洒落文句が出来たそうです。


蛤の栄養

蛤などの貝類は、海水に溶けているミネラルや色んな栄養素を貝殻の中に閉じ込めています。
中でも蛤にはカルシウムが牛乳よりも多く含まれ、かつマグ
camgシウムも牛乳の約8倍も含んでおり、カルシウムとマグネシウムをバランスよく充分にとることができます。
また鉄分もほうれん草と同程度含まれているので、骨を強くし、貧血を予防する栄養素が摂れるという、女性にとってはとても嬉しい食材です。

さらに貝類の旨みの特徴であるコハク酸に加えて、グリシン、アラニン、グルタミン酸など旨みや甘味を出すアミノ酸が豊富で、あの品の良い味わいを作っています。蛤はこのエキス分が真髄です。味付けする際の塩加減は薄めにした方がより美味しい旨みを堪能できます。

その他タウリンが多いことも蛤の栄養の特徴です。タウリンはスタミナドリンクの主成分の一つで、疲労の原因となる乳酸が身体に溜まるのを抑え、疲労回復に効果を発揮します。
また肝臓の解毒作用を活発にしたり、コレステロールや中性脂肪を減らして血液の粘度を下げ、動脈硬化の予防、不整脈の改善や高血圧の抑制にも効果的です。
タウリンは熱や調理によってその性質が失われることはありませんが、旨みのアミノ酸と共に煮汁に溶け出やすいため、煮汁を生かす料理や汁ものなどで汁を頂くようにしましょう。

また蛤にはアノイリナーゼというビタミンB1を壊す酵素が含まれています。蛤が「生食は避けるように」といわれる所以ですが、この酵素は加熱すると働かなくなりますので、刺身で食べるよりも火を通した方が良いでしょう。


蛤の召し上がり方

蛤の旨みは身よりもエキス分に多いので、お吸い物や酒蒸し、炊き込みご飯などがお勧めです。
選ぶ際には口の閉じたものを選びます。口が閉じていても死んでいるものがあるので注意が必要です。殻と殻を打ちあわせてみて、澄んだ音がすれば良いですが、鈍い音がするものは死んでいるので除いて下さい。
また一つ傷んでいると他の貝も次々に傷んでしまうので、臭いのチェックも忘れずに。

○蛤のレシピ
☆潮汁☆
【材料】4人分osuimono1
蛤8個 
昆布(10cm角)
酒大さじ1
三つ葉8~12本
(A)塩水 水5C、塩大さじ1
(B)塩小さじ1弱、しょうゆ少々

【作り方】
①蛤は(A)の塩水に一晩浸して砂を吐かせ、たわしで殻をこすって洗い、ぬめりを取りましょ
 う。
②鍋に水4.5カップ、酒、昆布、蛤を入れて中火にかけ、静かに煮立たせ、殻が開き始めたら
 昆布を取り出し、アクを取って1~2分おいて火を止めます。
③蛤の口が全部開いたら蛤を取り出し、身をはずしておきます。汁はそのまま暫く置いて砂を沈
 殿させ、キッチンペーパーなどでこし、別鍋に移しましょう。
④お椀に蛤の殻を1個分入れ、身を2個のせておきます。
⑤三つ葉は茎を軽くお湯にくぐらせ、2~3本ずつ組ませて結び、④に入れます。
⑥③の汁を煮立たせて(B)で調味し、④のお椀に注いでできあがりです。
 お好みで松葉に切った柚子の皮をあしらいましょう。

※ 市販品は砂抜きしているものが多いですが、時間があれば薄めの塩水につけて砂を吐かせて
  から使いましょう。
※ 丁寧にあくをとり、澄んだ汁を作りましょう。