冬の贅沢な鍋物と言えば、西の「ふぐ鍋」、東の「あんこう鍋」と、冬の味覚の代表「あんこう」。あの独特な風貌には一瞬ぎょっとしてしまいますが、食べれば美味。
これまではなかなか手に入りにくかったあんこうですが、最近では、スーパーでもぶつ切りにされた「あんこう鍋用パック」が並んでいるのを目にすることが増えてきました。
今回は、ちょっと贅沢感を味わえる「あんこう」についてご紹介したいと思います。
あんこうを漢字で書くと!?
あんこうと聞くと「お高い高級魚」というイメージがあると思いますが、漢字で書くと「鮟鱇」と魚へんに「安」と書きます。なぜこのような漢字を使うのでしょうか?
由来にはいくつかあるようです。
まず、あんこうは、激しく泳ぎ回るより海底でのんびり餌を待っていることが多く、その安らかでゆっくりとした姿かから「安康」→「鮟鱇」となったという説があります。
また、江戸時代の頃から食べられていたあんこうですが、旬である冬は値段が高く、庶民には手が届かないものだったため、春になって価格が安くなってから食べていたことから、それを皮肉った川柳「魚へんに安いと書くは春のこと」がもとになっているという説もあります。
あんこうは経済的な魚!?
あんこうの食べられる部分を「あんこうの七つ道具」と呼んでいます。7つ道具とは「身、肝、ひれ、えら、胃、卵巣、皮」で、この7つを見ても分かるように、捨てるところなく丸ごと食べられる魚なのです。
価格は高い高級魚ではありますが、意外に経済的な魚なんですね。
あんこうのさばき方「吊るし切り」
ニュースなどで、あんこうを吊るしてさばいていく場面を見たことがある方も多いと思います。普通、魚はまな板の上でさばくのに、なぜあんこうは吊るしてさばくのでしょうか?
あんこうは、水分が多いため非常に柔らかく、また、うろこが無いためうろこ代わりにヌルヌルで全身を覆って体を守っています。そのため大型のものになるとまな板の上では滑っておろすのが難しく、吊るしてさばくのが理に適っています。
この方法は独特なため、あんこうの宣伝にも欠かせない光景となり、軒
先で実演しているお店もあります。また、あんこう料理を提供するお店
などでは、自分のところでさばいている証拠として、さばいた後のあご
の骨を飾っているお店も見かけます。
あんこうの栄養
あんこうの身は80%以上が水分で脂肪分も少ないため、非常に低カロリーな食材といえます。一方、肝は脂肪がたっぷりなため高カロリーです。しかし、この脂肪には中性脂肪やコレステロールを下げ、血液をさらさらにして血栓予防に役立つ働きがあるEPA、DHAが豊富に含まれていますので、健康に嬉しい脂質といえます。
また、肝にはビタミンA(レチノール)、皮などにはコラーゲンが多く含まれていますので乾燥しがちで肌トラブルが起こりやすいこれからの季節にもぴったりの食材です。
本場のあんこう鍋
あんこう鍋をイメージすると、他の鍋料理同様に鍋のだし汁の中にあんこうや野菜を入れてぐつぐつ煮るというイメージがあるのではないでしょうか?
実際、お店で出てくるあんこう鍋もそのような鍋のことが多いと思います。
しかし、あんこうが水揚げされる地元のあんこう鍋はちょっと違うことをご存知でしょうか?
地元ではあんこう鍋のことを「どぶ汁」と呼んでいます。このどぶ汁、加える調味料は味噌だけ。水も酒もみりんも一切使わずに作ります。水分は、全て材料から出てきた水分のみ。また、入れる野菜も大根やネギ程度。つまり、新鮮なあんこうをたっぷり使ってつくる鍋ということです。
あんこうの本場だからできる贅沢な鍋といえますね。体の中から暖まります。
では、本場のどぶ汁の作り方をご紹介致します。
【作り方】
① 土鍋に肝のぶつ切りを入れて炒ります。肝を崩しながらほんの少し焦げる程度に4、5分
炒ります。
② 脂がにじんできたら、味噌を大さじ1杯程度入れます。
③ ぶつ切りにしたあんこうを加えて、焦がさないようにこまめに混ぜながら加熱します。
④ 徐々にあんこうから水が出てきて、あんこうに火が通ってきたら、一口大に切って下茹で
しておいた大根を加え、さらに味噌を加えて味を整えます。
⑤ フタをして10分ほど煮込み、食べる時に刻んだ長ねぎを散らせば完成です!
※本場のどぶ汁ではあんこうの他に大根程度しか加えないようですが、お好み
で水分の出やすい白菜や豆腐などを加えて頂くのも宜しいでしょう。また、
にんじんやごぼう、きのこ類などを加えると野菜もたっぷりとることができ
ます。