ハンバーグやメンチカツ、餃子など、多くの日本人に好まれる料理に欠かせないひき肉。
ひき肉は、脂の少ない部位は赤ちゃんの離乳食から使うことができ、さらに、硬い物が食べづらい高齢の方にとっても、お肉より柔らかく食べやすい食品として好まれます。ひき肉は赤ちゃんからお年寄りまで、生涯に渡って私たちの食を支えてくれる万能なお肉と言えるかも知れません。今回はそんなひき肉について、ご紹介いたします。
ひき肉の基本知識
ひき肉とは
牛肉や豚肉、鶏肉など食用の動物の肉を細かくすりつぶしたり、切ったりすることで利用しやすくした食材のことを言います。ひき肉はミンチとも呼ばれますが、ミンチは英語の「mince(細かく切る、刻む)」が語源となって生まれた和製英語です。
ひき肉は、そのままでは硬く食べにくい部位や、肉を成形する時に出る切れ端などが使われていることが多いです。また、ひき方は「粗びき」「細びき」「二度びき」などに分類されています。粗びきは、最も粗いひき方で、お肉の食感とうま味をよく感じられるという特徴があり、スーパーなどで一般的に販売されているのは細びきです。二度びきは、細びきより柔らかく、より滑らかな食感が特徴となっています。
一般的に売られている種類
「牛ひき肉」「豚ひき肉」「鶏ひき肉」「合いびき肉」の4種類のひき肉について、それぞれの特徴や主に使われる料理を紹介いたします。
・牛ひき肉
もも肉、ばら肉、すね肉などが使われます。うま味が強く、弾力があるのが特徴です。豚や鶏ひき肉に比べると、水分が少なく崩れにくいので、ハンバーグやミートローフ、ミートボールなどこねる料理に向いています。その他、ミートソースなど洋食によく使われます。
・豚ひき肉
肩肉やすね肉などが使われます。牛や鶏ひき肉と比べてコクがあり、やわらかい食感が特徴です。クセが少なく使いやすいひき肉で、餃子や焼売、麻婆豆腐など、中華料理と相性が良いです。
・鶏ひき肉
もも肉やむね肉、肉をとった後の骨に付着している肉などが使われます。牛や豚ひき肉よりも
淡白な味わいでさっぱりとしているのが特徴です。つくねやそぼろ煮など、和食によく使われ
ます。
・合いびき肉
牛肉と豚肉を合わせてひいたもので、牛のうま味と豚のコクが合わさったひき肉です。牛と豚の割合によって味が変わります。合いびき肉は、「豚牛合挽肉」「牛豚合挽肉」など使用している割合の高いものから順に表示、または「牛・豚合挽肉(6:4)」などのように割合が表示されており、用途に合わせて選ぶことができます。ピーマンの肉詰めやドライカレー、コロッケなど、さまざまなジャンルの料理に使えます。
ひき肉の栄養
牛・豚・鶏ひき肉それぞれに含まれる特徴的な栄養素をご紹介いたします。
(1)鉄
鉄は、牛ひき肉に豊富な栄養素です。豚ひき肉や鶏ひき肉、炒め物やすき焼きなどで使われることが多い牛肩ロースと比較すると、牛ひき肉には、それらの2倍以上の鉄が含まれています。
鉄は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの成分として、全身に酸素を送る働きをしているミネラルで、不足すると鉄欠乏性貧血を引き起こすため、普段から意識して摂りたい栄養素です。ひき肉に含まれる鉄は、ヘム鉄といって体への吸収率が高い鉄です。赤身の部分に多く含まれていますので、貧血気味などで積極的に鉄を取りたい方は、見た目が赤く、赤身の多いひき肉を選ぶと良いでしょう。 (日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出)
(2)ビタミンB1
ビタミンB1は豚ひき肉に多く含まれています。牛ひき肉や鶏ひき肉と比べると、圧倒的に豚ひき肉のビタミンB1含有量が多いことが分かります。また、豚肉でよく使われる豚バラ肉や豚ロース肉ともほぼ同程度のビタミンB1ですので、ひき肉に加工されることで栄養素が減るということはありません。
ビタミンB1は、糖質がエネルギーに変換されるのを促したり、脳の中枢神経や手足の抹消神経の機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。不足すると疲れやすくなったり、集中力がなくなってイライラしやすくなったりしますので、毎日を健康的に元気に過ごすために、ぜひ豚ひき肉を活用していただけたらと思います。 (日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出)
(3)ビタミンA、B2、B6、ナイアシン
ビタミン類は鶏ひき肉に多いです。牛ひき肉や豚ひき肉と比較すると、ビタミンB2は同程度ですが、ビタミンA、B6、ナイアシンは鶏ひき肉が最も含有量が多いことが分かります。
ビタミンAは、粘膜や皮膚を健康に保ち、暗い中でものを見るときに必要となり、ビタミンB2、B6、ナイアシンは、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に必要となるビタミン類です。微量ながらも、体の中で重要な役割を担っている様々なビタミン類が、鶏ひき肉には含まれています。 (日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出)
ひき肉で栄養価アップ
ひき肉を料理にプラスすることで、手軽に料理の栄養価アップができます。例えば、野菜炒めとかぼちゃの煮物で、ひき肉のなし・ありを比べてみると、ひき肉ありの方では、特に、体を動かすためのエネルギー、筋肉量を維持するために必要なたんぱく質を大幅にアップすることができます。食欲が落ちている時や、食が細くなることでリスクが高まる高齢の方のフレイル予防などに、ひき肉のちょい足しをご活用ください。 (日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出)
※数値は1人前で算出
※ひき肉ありは、野菜炒めは豚ひき肉50g、かぼちゃの煮物は
鶏ひき肉20gをプラスした時の数値
ひき肉料理のすすめ
ひき肉は、料理のレパートリーを増やしてくれます。どんな料理にも合いやすいので、作る機会が多く、マンネリ化しやすいメニューこそ、ひき肉で作ってみると面白いです。お肉をひき肉に変えるだけで、いつもの食卓にちょっとした変化を感じられたり、違う味わいが楽しめたりしますので、ぜひお試しください。
・例1:ひき肉の肉じゃが
薄切り肉で作られることの多い肉じゃがは、ひき肉でも美味しいです。牛ひき肉はもちろん、合い挽き肉や豚ひき肉でも合います。ひき肉の種類を変えると風味が変わるので、いろいろ作って食べ比べてみてください。
・例2:肉野菜炒め
手軽に作れる定番おかずの肉野菜炒めも、ひき肉で作ると普段とは違う1品になります。少しとろみをつけるとひき肉と野菜がよく絡んで、食べやすさもアップします。そのままおかずとして食べるのも良いですが、丼にしてご飯にかけて食べるのもおすすめです。
・例3:ホイコーロー
中華の定番ホイコーローもひき肉で美味しく作れます。濃い味付けなので、コクのある豚ひき肉が良く合いますが、鶏ひき肉を使ってもさっぱりした味わいになり、いつもと違うホイコーローが楽しめます。ぜひ、ひき肉の種類を変えて様々試してみてください。
ひき肉の保存方法
ひき肉は、空気に触れる面積が大きいため、傷みやすく、味も落ちやすいです。そのため、使い切れない場合は、すぐに保存することが大切です。生で保存する場合、加熱して保存する場合、それぞれの方法についてご紹介いたします。使い方に合わせて利用しやすい保存方法を選択してください。
<生で保存する場合>
・保存には温度管理がとても大切です。冷蔵保存する
場合は、通常の冷蔵室(約2~5℃)より低い温度のチルド室(約0℃)やパーシャル室(約-3℃)などに保存し早めに使い切るようにしましょう。
・冷凍保存する場合は、100g程度を目安に小分けにして、空気が入らないようラップでぴったりと包みます。さらに、冷凍保存袋に入れ、できるだけ空気を抜くようにして袋の口を閉じ冷凍します。冷凍保存の目安は約2週間です。
<加熱して保存する場合>
・フライパンでひき肉を炒め、水分をしっかり飛ばします。下味をつける場合は、ここで味をつけましょう。
・バットなどに広げて粗熱を取り、100g程度を目安に小分けにしてラップに包みます。冷凍保存袋に入れ、できるだけ空気を抜くようにして袋の口を閉じ冷凍します。加熱してから保存した場合の保存期間の目安は約3~4週間です。
・加熱すると生で保存する場合より、保存期間が長くなります。また、解凍時のドリップも出にくいです。
おすすめレシピ
鶏ひき肉で作る柔らかい鶏団子の入ったスープです。鶏団子はふわふわとした食感で、小さいお子さんからお年寄りまで、どの世代でも安心して美味しく食べることができます。ぜひご家族皆様で召し上がってください。
<柔らか鶏団子スープ>
【材料・分量】(4人分)
・水 800ml
・小松菜 3株(約150g)
・しいたけ 3個(約45g)
・鶏ガラスープの素 小さじ3~4
(表示の量を基本に調整してください)
・ごま油 大さじ1/2~1
(お好みで入れてください)
<鶏団子>
・鶏ひき肉 300g
・たまねぎ 1/2個(約100g)
・生姜 大1かけ(約20g)
・卵 1個
・醤油 小さじ1
・酒 小さじ1
・片栗粉 大さじ1強
【作り方】
1.小松菜は食べやすい長さ(3~5㎝)に、しいたけは軸をとって薄切りにします。
2.鶏団子用のたまねぎはみじん切り、生姜はすりおろします。卵は割って卵黄と卵白に分けておきます。
3.ボウルに鶏ひき肉を入れ、たまねぎ、生姜、卵黄、醤油、酒を加え、具材が全体に行き渡るように、手で具材を掴むようにしてよく混ぜ合わせます。
4.具材が混ざったら、卵白を加えます。円を描くようにして空気を含ませながら混ぜます。
5.最後に、片栗粉を加え、余分な水分を吸わせるイメージでさっと混ぜ合わせます。1人3~4個になるようにタネを分けて、軽く丸めて団子にします。
6.鍋に水を入れ火にかけ、沸騰したら5.の鶏団子を入れて火を通します。
7.5~6分程経過したら、鶏ガラスープ、小松菜、しいたけを入れて2分ほど煮ます。
8.仕上げにごま油を加え、香りを立たせて完成です。
【ポイント】
・柔らかい肉団子にするには、4の卵白を加えてからの混ぜ方がポイントです。ふわっとした
タネになるよう、しっかり空気を含ませながら混ぜるように意識しましょう。
・スープに入れる野菜は、キャベツ、チンゲン菜、白菜、ほうれん草など、お好みの野菜や旬の野菜などご自由にお使いください。