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栄養コラム

玉ねぎ

No.234

2023年6月1日

管理栄養士 渡邉美紅

玉ねぎは1年中手に入り、常備しているご家庭も多いのではないでしょうか。
生はとても辛く、加熱すると甘みが強くなるため、生・加熱それぞれの利用の仕方があり、また和洋中様々な料理に使えるオールマイティーな野菜です。今回はそんな多様な玉ねぎをご紹介します。


玉ねぎの普及

玉ねぎが初めて日本に来たのは江戸時代です。この時はまだ観賞用でした。食用として栽培されるようになったのは、明治時代以降の北海道と大阪で栽培が始まったとわれています。北海道では、開墾とともに品種改良が進み、栽培量が増えていきました。現在でも国内の玉ねぎ収穫量は北海道がトップを維持しています。そして、大阪でも玉ねぎ栽培の研究や品種改良が行われ栽培が盛んになったようです。また、明治時代にコレラが流行した際に「玉ねぎを食べるとコレラにかからない」という噂が広まったことも、普及したきっかけといわれています。


 玉ねぎの種類

玉ねぎは多種ありますが、大きく分けて以下6種類をご紹介します。それぞれの特徴を見ていきましょう。

①黄玉ねぎ
一般的な玉ねぎで辛みが特徴です。貯蔵に向いており、多くの場合干してから出荷されます。選ぶ際はふっくらと丸みがあり、先端がきゅっとしまってかたく、薄茶色の皮がしっかりと乾燥しており、重みを感じるものが良いです。先端がやわらかく感じるものは内側が傷んでいる可能性があるため、避けましょう。

②白玉ねぎ
生のままでも辛みが少ないのが特徴です。水分を多く含んでおり、果肉は柔らかいです。また、乾燥保存には向かないため収穫後すぐに出荷され、「新玉ねぎ」
として流通することが多いです。扁平形で程よくふっくらとしており、表面にツヤがあり、重量感のあるものを選ぶと良いでしょう。

③赤玉ねぎ
外側の皮が赤紫色をしており、切った断面も赤紫色と白色の層になっています。
一般的な玉ねぎよりもみずみずしく水分が多いのが特徴です。「レッドオニオン」や「紫玉ねぎ」と呼ばれます。玉ねぎ特有の香りや辛みは少なく、甘みがあるので、マリネやサラダなどの生食に適しています。外側の皮はよく乾燥していて、
ツヤがあり、赤紫色が鮮やかなもの、上部と根の部分が締まっていて、持った時に
重みを感じるものを選ぶと良いでしょう。

④新玉ねぎ
「黄玉ねぎ」や「白玉ねぎ」の早採りで、すぐに出荷される玉ねぎの総称です。
温暖な地域では3〜4月頃に出荷されます。水分が多く、通常の玉ねぎよりも痛みやすく鮮度も落ちやすい特徴があります。新鮮な新玉ねぎは皮がパリッと乾燥していてツヤがあります。先端がやわらかいものは傷んでいる可能性があるため、
しっかりハリのあるものを選びましょう。また、カビが生えやすいので、表面に
カビが生えていないか確認しましょう。

⑤葉玉ねぎ
玉の部分が膨らむ前に、葉付きのまま若い状態で収穫された玉ねぎです。玉の部分は辛みが少なく、葉は長ねぎよりもやや肉厚で太めで、甘味がありやわらかいです。玉の部分はやや膨らみ、しまりがあり、切り口が変色していないもので葉は青々としているものを選びましょう。

⑥ペコロス
直径3〜4㎝ほどの小型玉ねぎで、糖度が約11度とスイカ並みの甘さが特徴です。もともと小さい品種のものと、黄玉ねぎを過密状態で栽培することにより小さくしたものがあります。サイズが小さいため、丸ごとでの調理がしやすいです。
黄玉ねぎ同様に、皮にツヤがありハリのあるものを選ぶと良いでしょう。


玉ねぎの特長

玉ねぎは生で食べれば辛く、加熱すると甘くなります。
この辛みと甘みに注目して、それぞれの健康への効果をご紹介します。

辛み:アリシン

玉ねぎを生で食べると辛く感じるのは、玉ねぎに含まれるアリシンによるものです。
アリシンは揮発性が高く、水に溶けやすく、熱に弱いという特徴があります。
そのためアリシンを無駄なく摂取するには生で食べることがおすすめです。

<アリシンの効果>
効果①:血液をサラサラにする
血液中にLDLコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管に余分な
脂質が沈着し血液の流れが悪くなりますが、アリシンはLDLコレステロールを低下させる働きがあると考えられています。血液の流れを良くし血栓予防に
一役かっています。

効果②:ビタミンB₁の吸収をよくする
アリシンはビタミンB₁と結合すると、アリチアミンという物質に変化します。アリチアミンは、ビタミンB₁を分解する酵素の作用を受けにくく、ビタミンB₁の効果を持続化させる働きがあります。ビタミンB₁は、エネルギーをつくる際に必要なビタミンなので、エネルギーが素早くチャージされ、疲れにくい体にするために役立ちます。

<辛みを抑える方法>
玉ねぎを処理する際に、アリシンの特徴をうまく利用すると、辛みを抑えて生でも食べやすく
なります。その方法を3つご紹介します。

方法①:5分ほど水につける
アリシンが水溶性であることを利用した方法です。水にさらしすぎると栄養が抜けすぎてしまうので、5分程度にしましょう。

方法②:10~15分空気にさらす
アリシンの揮発性を利用した方法です。切った玉ねぎをできるだけ重ならないようにお皿に
広げ、そのまま10~15分置きましょう。

方法③:電子レンジで加熱する
最も短時間で辛みを抜くことができます。加熱しすぎると柔らかくなり、シャキシャキ感が失われてしまいますので、レンジは600Wで1分程度がおすすめです。

甘み:オリゴ糖

玉ねぎは、しっかり炒めるとあめ色になり、甘味が強く香ばしい香りを感じるようになります。これは、玉ねぎを加熱することで、辛み成分が揮発して水分が蒸発し、糖質が凝縮されて甘く感じるようになるためです。玉ねぎには、糖質の中でもオリゴ糖が多く含まれています。

<オリゴ糖の効果>
効果①:ビフィズス菌を増やして腸内環境を整える
ビフィズス菌は、腸内環境の調整や健康に重要な役割を果たす腸内細菌で、オリゴ糖を主なエネルギー源として利用しています。オリゴ糖は、
消化酵素によって分解されずに消化管に到達するため、ビフィズス菌の
栄養となることで、腸内のビフィズス菌を増やし、腸内環境を維持するのに役立っています。

効果②:血糖値を上げにくい
血糖値が急上昇すると、インスリンが過剰に分泌されます。インスリンには糖を脂肪に変える働きがあり、過剰に分泌されると体に脂肪をため込みやすくなります。さらに血糖値の急激な変動は食後に強い眠気や倦怠感をもたらすと考えられています。オリゴ糖は、ブドウ糖よりも消化吸収が遅く、ブドウ糖のように急激に血糖値を上昇させることはなく緩やかに上昇させます。玉ねぎに含まれるオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、図1で示す通り、砂糖と違って摂取後の血糖値が安定していることが分かります。


玉ねぎの皮にもある有効成分

普段捨ててしまう玉ねぎの皮にも栄養が含まれています。
特にケルセチンと呼ばれるポリフェノールが豊富です。ケルセチンは加熱してもほとんど
壊れず、調理後も摂取することができます。

●抗酸化作用

ケルセチンは強い抗酸化作用を持ち、活性酸素によるダメージを防ぐことが知られています。
活性酸素は他の物質を酸化させる作用があります。たとえば血液中の赤血球が活性酸素によって酸化すると、赤血球は柔軟性を失い、細い血管を通りにくくなるため血流が滞りやすくなって
しまいます。 ケルセチンはこの活性酸素によるダメージを防ぎ、赤血球の働きを活発にさせる効果があります。

●出汁として活用

玉ねぎの皮は、出汁として簡単に活用することができます。皮をよく洗い、ポットに皮を入れて熱湯を入れて一晩おく、あるいは、鍋で煮だします。とった出汁は、お茶として飲んだり、
スープの出汁として使用することができます。


涙が出にくい切り方

玉ねぎを切ると涙が出るのは、辛味成分のアリシンが関与しています。アリシンは催涙物質で
あり、目や鼻の粘膜に刺激を与えるため涙が生じます。涙が出ないように玉ねぎを切る方法を
ご紹介します。

方法①:冷たい玉ねぎを使用する
アリシンは揮発性のため、温度が低いとアリシンが飛びにくくなります。そのため、切る前に冷やすと効果的といわれています。皮むきした後、乾燥しないようにラップで包み、冷蔵庫で30分程度、冷凍庫なら15分程度冷やしてから切ると涙が出にくくなります。

方法②:水につけてから切る
アリシンは水溶性のため、水につけることでアリシンの量を抑えることができます。水を張ったボウルや流水にさらしてから切ると、涙の刺激が軽減されます。水っぽくならないように、つける時間は10分程度を目安にするといいでしょう。

方法③:よく切れる包丁を使用する
細胞が壊れるとアリシンが多く出てくるため、なるべく細胞を傷つけないように切ることが重要です。また、上から押しつぶして切るのではなく、包丁を斜め下から入れ、押し出すようにすると細胞を傷つけないように切ることができます。


レシピ

玉ねぎを茶色くペースト状になるまで、長時間水分を飛ばしながらしっかり炒めてつくる「あめ色玉ねぎ」を料理に使うと、料理にコクがでて美味しく仕上げることができます。あめ色玉ねぎを生玉ねぎの状態から作ろうとすると、火加減も難しく、かつ30分以上も炒めなければなりませんが、少し工夫をすることで簡単に作ることができます。

<あめ色玉ねぎを作る時短ワザ>
玉ねぎ1個分
1.玉ねぎをみじん切りにする
2.耐熱皿にキッチンペーパーを敷き、みじん切りにした玉ねぎを広げて600W4~5分
 ラップをせずに加熱する
3.フライパンに油大さじ1を入れて熱し、2の玉ねぎを入れ、へらで混ぜながら茶色く色
 づいてきたら弱火にし、約10分炒めて完成
 *小分けにしラップに包んでおくと冷凍で2週間程度保存可能。

●あめ色玉ねぎを使ったレシピ
オニオンスープ (1人分)
【材料】 
・あめ色玉ねぎ      大さじ2(約30g) 
・熱湯          150ml
・顆粒コンソメ      小さじ2/3(2g) 
・塩コショウ       少々

【作り方】
1.耐熱容器にあめ色玉ねぎを入れ、熱湯を注ぐ
2.顆粒コンソメを加えてかき混ぜる
3.電子レンジで600W1分30秒~2分加熱して完成 

【ひと手間アレンジするなら】
 耐熱容器に1,2を入れ、うすめに切ったバケットパンとピザ用チーズをのせて、
 7~8分トースターでこんがり焼くと、オニオングラタンスープが作れます。
 *こちらを作るときは、オーブントースター対応の容器を使ってください。
 *取り出す時に火傷する恐れがありますので、十分に注意してください。