「ねぎを風邪のひきはじめに食べるとよい」「ねぎをガーゼにくるんで首に巻くと喉の痛みや鼻づまりがとれる」など、古くからねぎの薬効が利用されてきました。また、都合の良い状況を表す「鴨が葱を背負って来る」ということわざがあるように、理にかなった相性のよい食材と合わせる食べ方もあります。
今では通年買うことができますが、もともとは寒い地域が原産のため、日本では冬がねぎの旬にあたります。今月はねぎをご紹介します。
ねぎの歴史・種類
歴史
ねぎの原産地ははっきりしていませんが、中国西部あたりといわれ、日本には8世紀頃伝わりました。ねぎは耐暑、耐寒性があり適応性に優れていることから、江戸時代中期には各地で栽培されるようになりました。ちなみにヨーロッパやアメリカでは、ねぎよりも玉ねぎの方が普及したため、ねぎの認知は低かったようです。日本各地で栽培されたねぎは、その地方ごとに特徴ある品種が分化していきました。
種類
ねぎは大きく分けて、白い部分を食べる「根深ねぎ」と、葉の部分を食べる「葉ねぎ」があります。関東では根深ねぎが、関西では葉ねぎが好まれていますが、現在は地域色は薄まってきているようです。
<根深ねぎ>
根深ねぎは「長ねぎ」や「白ねぎ」と呼ばれ、太く白い部分が多いことが特徴です。成長に伴って葉の部分に土をかぶせて日が当たらないように栽培することで白い部分を多くしており、主に白い部分が食されます。「千住ねぎ」「下仁田ねぎ」「加賀ねぎ」「深谷ねぎ」「曲がりねぎ」などの種類があります。根深ねぎは、生だと辛味をいかして薬味に、また加熱すると甘味が出てくるので、鍋物、煮物、炒め物、和え物としても広く用いられます。
<葉ねぎ>
葉ねぎは「青ねぎ」と呼ばれるもので、全体的に細く、緑色の部分が枝分かれしており、葉先まで食べられることが特徴です。主に薬味として用いられることが多いですが、炒め物やお好み焼きなど様々な料理にも活用できます。青ねぎは寒さに弱いため、西日本で主に流通していましたが、ハウス栽培が広がり現在では東日本でも栽培されています。「九条ねぎ」「万能ねぎ」「やっこねぎ」「芽ねぎ」などの種類があります。葉ねぎは葉が軟らかくて香りがあり、薬味や炒め物、味噌汁などに使われますが、料理のトッピングに細かく刻んで散らすと、香りだけでなく彩りもよくなります。
ねぎの栄養的特長
栄養成分
根深ねぎ(白い食用部分)は「淡色野菜」、葉ねぎは「緑黄色野菜」に分類され、それぞれの栄養成分も異なります。ねぎに含まれる主な栄養成分はビタミンCやβ-カロテン、葉酸、カルシウムです。100gあたりで比較をするといずれも葉ねぎの方が多いですが、「1回に食べる量(*概量参照)」で比較すると、ボリュームが多い根深ねぎの方が多くなるため、100gあたりの栄養価にとらわれずに、普段使いしていきましょう。
<100gあたりの栄養成分>
*概量 根深ねぎ(1本約100g)鍋に入れるねぎだと3切れで約20g
葉ねぎ(1本5g) 小皿1枚分の薬味だと小口切りで約3g
八訂:日本食品標準成分表2020年度版 参照
におい成分「アリシン」
ねぎ、にんにく、にらなどネギ科植物の独特のにおい成分は「硫化アリル」といいます。
玉ねぎを切ると涙がでますが、これは揮発した硫化アリルが目や鼻の粘膜を刺激するためで、ねぎの辛みも硫化アリルによるものです。
硫化アリルにはさまざまな種類があり、その代表がアリシンです。
葉ねぎよりも根深ねぎに多く含まれています。
<アリシンの健康効果>
①冷え性の改善や風邪の回復を助ける
交感神経を刺激し身体を温める効果があります。血行がよくなり冷え性の改善や、発汗を促し風邪の治りを助けます。
②疲労回復を助ける
糖質をエネルギーに変える際に必要なビタミンB1。ビタミンB1は水溶性で体内に長く貯蔵できませんが、アリシンと結びつくと、アリチアミンという安定性の高い物質になります。それによってビタミンB1の働きが体内で継続され、疲労回復を助けたりスタミナ増強などの効果が期待されます。
③殺菌、抗菌
強い殺菌、抗菌作用があるため、ねぎは食中毒を防ぐ薬味として利用されてきたという歴史もあります。さらに、肉や魚の臭みもとることも薬味としてふさわしい食材といえます。
美味しいねぎの選び方と保管方法
選び方
根深ねぎは、重さがあり太く、表面が乾燥せずハリがあり、触ったときに弾力があり、巻きがしっかりしていたふかふかしていない物が良品です。さらに緑と白の境がくっきりしているものは丁寧に栽培されたものといえます。
葉ねぎは、葉がぴんとハリがあってみずみずしいもの、葉先から根元近くまできれいな緑色のもの、葉が折れていなくてまっすぐにのびているものを選びましょう。
保管方法
根深ねぎは新聞紙に包んで冷暗所で保存するか、2~3等分に切ってラップに包み冷蔵庫で保存します。葉ねぎは湿らせた新聞紙に包んでビニール袋に入れて冷蔵庫で保存しましょう。余ったときは、小口切りにして冷凍しておくと薬味がほしいときに便利です。
ねぎの栄養を上手にとるポイント
1.細かく刻む
ねぎの細胞が傷つけられ壊されるとアリシンが多く発生するため、
細かく刻むほどアリシンは増え、匂いも強くなります。
2.食べる直前に切る
硫化アリルは揮発性があり、時間とともにどんどん減ってしまいます。そこで、薬味で使うときは食べる直前に切るようにすれば、硫化アリルの損失を最小限に防げます。
3.水にさらしすぎない
硫化アリルやビタミンCは水溶性のため、水にさらすと栄養が溶け出してしまいます。辛みが気になる場合も水にさらす時間は短めにすると、栄養を無駄なく摂取することができます
4.ビタミンB1の多い食材と組み合わせる
前述<アリシンの健康効果>②でご説明したとおり、ねぎのアリシンとビタミンB1は相性抜群です。ことわざ「鴨が葱を背負って来る」は、鴨にはビタミンB1が多いので、鴨とねぎは理にかなった組み合わせです。鴨以外にもビタミンB1の多い食材がありますので、上手く組み合わせてみましょう。
ビタミンB1を多く含む食材・・・豚肉、ハム、ベーコン、赤身の肉、うなぎ、ぶり、
大豆、豆腐、玄米(雑穀米)、落花生 など
料理例:豚汁、納豆、なべ物、麻婆豆腐