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栄養コラム

トマト

No.226

2022年10月3日

管理栄養士 瀬谷理絵

トマトはお好きですか。トマトは野菜の産出額の品目別割合が最も高く(*)、季節を問わず手に入れることができ、比較的価格も安いので食べる機会も多いと思います。全国トマト工業会は、トマトの普及・健康増進を目的として10月10日を「トマトの日(ト[10]・マ・ト[10]の語呂合わせが由来)」と制定しているそうです。今月はトマトの魅力をご紹介します。
               *2020年 農林水産省「令和2年生産農業所得統計」より


トマトの原産地と歴史

トマトはナス科ナス属の植物で、別名アカナスとも呼ばれます。原産国は南米のアンデス高原です。16世紀頃にスペイン人によってヨーロッパに伝えられたといわれています。当時は毒があると思われており、観賞用に過ぎませんでしたが、19世紀になり食用として広く栽培され始めました。
日本にトマトが渡ってきたのは17世紀(江戸時代初期)とされています。日本でもヨーロッパ同様観賞用でしたが、明治時代にキャベツや玉ねぎと共に改めてヨーロッパから輸入され、食用として利用されるようになりました。

 


トマトの特長

ヨーロッパに「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるほど、栄養価が高い野菜です。トマトに含まれる成分にはさまざまな健康効果があります。

①抗酸化作用が強い

抗酸化作用とは、活性酸素を害の少ない物質に変え、細胞の酸化を防ぐ作用を指します。活性酸素は、体内に取り込まれた酸素のごく一部が変化したものです。病気から身体を守るためには欠かせない成分ですが、過剰に発生すると細胞が傷つけられ、老化が進んだり病気のリスクが高まったりします。
トマトには、下記に記載した抗酸化力のある成分が豊富に含まれています。

リコピン
トマトの赤い色の素になる成分で、βカロテンの2倍・ビタミンEの100倍の抗酸化力があります。熱に強く、加熱による損失はほとんどないうえに、油に溶け込むと吸収率が3~4倍になります。他にもがん予防、コラーゲン生成促進、血糖・コレステロール低下作用があるといわれています。

βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変化する脂溶性の成分で、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。他にも目や皮膚・粘膜の健康を保つ働きがあります。また、βカロテン量が緑黄色野菜の分類基準(*)となりますが、トマトのβカロテン量は基準値以下でも、1回あたりに食べる量が多いことから緑黄色野菜に分類されています。
               *緑黄色野菜の基準値(厚生労働省制定):
                可食部100gあたりカロテン(βカロテン当量)600μg以上

ビタミンC
水溶性ビタミンの一つです。たんぱく質の一種であるコラーゲンの合成や鉄分の吸収促進にも関わっています。ヒトの体内では合成できないため、食品から摂取する必要があります。

②うま味成分がたっぷり含まれている

トマトにはうま味成分であるグルタミン酸・アスパラギン酸というアミノ酸が豊富に含まれています。特にグルタミン酸含有量は他の野菜に比べて群を抜いています。グルタミン酸は、日本でおなじみの昆布・椎茸などのだしや、しょうゆ・味噌などの調味料に多く含まれており、地中海料理ではだしのような感覚でトマトが料理に使われます。
また、イタリアの家庭でよく作られるトマトソースは、日々の料理のベースとして日本のしょうゆ・味噌の役割を果たしています。そのため、トマトは料理のうま味だしとしても幅広いメニューに利用できます。
さらに、うま味成分は単体でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれうま味が何倍にも強くなることが分かっています。同じくうま味成分であるイノシン酸の多い肉・魚類や、グアニル酸の多いきのこ類をトマトと一緒に調理すると美味しさがアップするのはこの理由です。



特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター算出値 参考

③血圧を下げる効果がある

トマトにはカリウムも多く含まれています。カリウムには体内の余分な塩分を排泄し、血圧を下げる働きがあるため、高血圧の予防・改善になります。


トマトの種類と栄養価の違い

トマトの品種は全世界で10,000種類以上あり、日本で品種登録されているものだけでも300種類を超えるといわれています。家庭でよく食べられているのは大玉トマトとミニトマトですが、ただ大きさが違うだけではなく栄養価も大きく異なります。

栄養成分を比較すると、大玉トマトよりもミニトマトの方が栄養価は高いといえます。βカロテンやビタミンCは大玉トマトの約2倍、リコピンは約3倍も含まれています。ミニトマトは手軽に追加できるので、サラダに追加したり、ミニトマトだけ食べるのでもとてもよい栄養補給になります。


トマトとミニトマトの100gあたりの栄養成分(八訂:日本食品標準成分表2020年度版 参照)


美味しいトマトの見分け方と保存方法

■ 旬のものを選ぶ
ハウス栽培などにより通年食べることができますが、旬のものを購入する方が美味しく栄養価が高いのでおすすめです。出荷量が多いのは夏ですが、味として最も旬といえるのは春から初夏の時期と秋のトマトです。これは日光をたくさん浴び、比較的乾燥した気候のなかでトマトが糖度を上げるためです。トマトは全国で栽培されているため、購入時に旬の産地のものを選ぶとよいでしょう。

■ スターマークのあるものを選ぶ
トマトのおしり部分から放射状に延びる白い線は「スターマーク(右写真)」といって糖度の高いトマトの証拠です。

■ ヘタがピンとしているものを選ぶ
ヘタが乾燥して縮れている場合は、収穫から時間が経っている可能性があります。

■ 保存する時はポリ袋に入れる
完熟したトマトはポリ袋に入れるかラップに包んで野菜室で保存しましょう。緑色の残っているトマトは常温保存し追熟させると美味しく召し上がれます。


トマトのお勧めの食べ方

トマトの栄養を効率よく摂取できる食べ方をご紹介します。

①そのままで

大玉トマトは半分または1/4にカットするだけで、ミニトマトなら包丁を使わずに手軽に取り入れることができます。お弁当のすき間に詰めたり、食事の際に追加したりすると野菜の摂取量を増やすだけでなく彩りを追加することができます。ぜひ冷蔵庫に常備してください。

②加熱する+油と合わせる

トマトは加熱すると柔らかくなり、細胞が壊れやすくなります。さらにここへ油を追加することで、壊れた細胞から出たリコピンやβカロテンが油に溶け、吸収率がアップします。特にオリーブオイルと合わせると中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが低下するという報告もあります。煮込み料理やスープ、パスタソースとして食べるのがお勧めです。


料理例:左から鶏肉のトマト煮、ミネストローネ、ペスカトーレ

③トマトの加工品を利用する

加熱するだけでなく、ミキサーにかけたりすり潰したりすることでも細胞が壊されます。そのため、トマトペーストやケチャップ・トマトジュースなどの加工品を利用することも一つです。リコピンは加工品の方が生のままの3.8倍の吸収率があるとの研究結果もあるそうです。
トマトジュースはそのまま飲んでもよいですが、トマトペーストと同様に料理に加えると、トマトのうま味成分により調味料を少なくしても美味しく召し上がれる減塩効果が期待できます。
また、トマトケチャップは、トマトにスパイスやお酢・塩を加え、うま味成分が凝縮された調味料で、家庭でよく使用される調味料と比べて塩分量が低いのが特徴です。

八訂:日本食品標準成分表2020年度版 参照

トマトケチャップはご自宅の冷蔵庫に入っていることも多いと思います。料理にかけたりつけたりするだけでなく、調味料として活用すると料理にコクを加えて減塩でき、トマトの栄養を手軽に摂取できます。洋食や中華はもちろん、和食の隠し味としても利用できますので、ぜひお試しください。

            料理例:左からエビチリ、ナポリタン、酢豚