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栄養コラム

ほうとう

No.204

2020年12月1日

管理栄養士 田中希歩

先日、富士山で有名な山梨県へ行ってきました。間近で見る富士山の姿は圧巻で、とても感動しました。また、富士山の他にもきのこや果物などのおいしい食材やワインなどを堪能し、多くの魅力を感じた県でした。今回はそんな魅力ある山梨県の郷土料理「ほうとう」をご紹介します。

ほうとうとは

「ほうとう」とは、主に山梨県を中心とした地域で食べられている郷土料理で、小麦粉を練り平たく切った太いめんを、かぼちゃ、ねぎなどの野菜と共に、味噌仕立ての汁で煮込んだものです。山梨県では家庭料理として食生活に根付いており、家庭によって使う野菜、味付けに使う味噌が異なるなど、家庭ごとの味があると言われています。

ほうとうの歴史

山梨県の山間部は水田が少なく、米は貴重な食べ物であり、米に代わる作物として麦が栽培されていました。収穫した小麦をめんにし、季節の野菜と一緒に味噌で煮込んで食べるようになったのが「ほうとう」の始まりです。
語源には諸説あり、奈良時代に中国から伝来したうどんの原型ともいわれる「餺飥(はくたく)」が、語源となったという説がひとつといわれています。また、戦国時代の武将、武田信玄は、消化が良く栄養価が高い陣中食として「ほうとう」を取り入れたともいわれ、武田信玄が自らの刀で食材を切ったことから「宝刀(ほうとう)」と名付けられたことが「ほうとう」の名前の由来という説もあります。
2007年には農林水産省によって「農山漁村の郷土料理百選(※)」のひとつに選ばれました。
(※)全国各地に伝わる郷土料理のうち、現在も食されているものを対象とし、国民的に支持されうる料理として選定されたものです。他には岩手県の「わんこそば」沖縄県の「ゴーヤーチャンプルー」などが登録されています。

夏場のほうとう「おざら」とは

ほうとうは煮込んで作る料理で温かい料理であるため、寒い冬に食べることが多いイメージですが、夏場にはほうとうを冷たいめんとして食べる「おざら」というものがあります。めんを茹でた後に冷やし、肉や野菜が入った具沢山の温かいつゆにつけて食べる食べ方です。夏の暑い時季でも喉越しがよく食べやすいうえに、具沢山のつけ汁と合わせて食べるため、栄養が摂れるメニューとして親しまれているようです。

ほうとうの特徴・魅力

①うどんめんとの違い(塩分)

うどんめんは、小麦粉に塩と水を加えて生地を作りますが、ほうとうめんは製造工程で生地に塩分を加えずに作ります。一般的なうどんメニューは、汁に加えてめん自体の塩分も加算されるため、料理全体の塩分量が高くなりますが、ほうとうめんには塩分が含まれていないため、汁の塩加減や汁量で料理自体の塩分量を控えることができます。

   

②うどんめんとの違い(グルテン)

うどんめんは生地を打った後ねかせる際に、「グルテン」が形成されます。グルテンは小麦から生成されるたんぱく質の一種で、うどん特有の「もちもちとした食感」「しっかりとした噛み応え」を生み出します。一方、ほうとうめんは、生地を打って伸ばした後に寝かせる工程がなく、グルテンが形成されません。そのため、ほうとうめんは食感はうどんめんよりも柔らかく、加熱した際にめんからでんぷんが溶け出て、汁にとろみがつきやすいという特徴があります。汁にとろみがつくと料理は冷めにくく、温かさを保つことができます。また、やわらかく溶けやすいという特徴は、消化の際、胃にかかる負担も少なく栄養素が吸収されやすいということに繋がります。

③味付けに使う味噌

ほうとうに使われる味噌の主原料は大豆です。大豆は「畑の肉」といわれるほど、良質の植物性たんぱく質を多く含む食品です。たんぱく質を構成する「アミノ酸」のうち、私たちの体内では生産できない「必須アミノ酸」は食品から摂取する必要がありますが、大豆のたんぱく質には「必須アミノ酸」がバランスよく含まれています。そのため、味噌も必須アミノ酸のバランスがとても良い食品であるといえます。
一方、ほうとうめんに使用する小麦は必須アミノ酸のうち「リジン」が不足しており、アミノ酸のバランスが悪いことが知られています。味付けに使用する味噌は、ほうとうめんに不足する「リジン」を補い、ほうとうのアミノ酸バランスを良くしています。

④たくさんの野菜をおいしく食べられる

冷蔵庫の残り野菜どれをいれてもおいしく食べられると言われるほど、どんな食材でも合うことが良い点で、夏にはねぎ、たまねぎ、じゃがいも、冬ではかぼちゃやさといも、人参、白菜、ごぼうなど、その季節によって入れる野菜が異なるようです。
1日の野菜摂取量の目安は350gといわれていますが、野菜は加熱することでカサが減り、量をたくさん食べることができます。手軽な食材で様々な種類の野菜をたくさん食べることができるほうとうは、野菜の摂取量を増やす面でもお勧めです。

レシピ

スーパーで購入することができるほうとうを使った、これからの寒い季節やクリスマスメニューとしてもぴったりなアレンジレシピを紹介します。ほうとうめんのもちもちとした食感をいかし、ラザニア風にしました。生地を作る際にオリーブオイルを混ぜるラザニアの生地に対し、ほうとうめんは油分を含まないため、さっぱりとした出来上がりになり子供やお年寄りでも食べやすいです。また、ほうとうめんは一般的なラザニアの生地よりも比較的安価に購入できることも嬉しい点です。

簡単★ほうとうdeラザニア

【材料】2人分(グラタン皿2つ分)
・ほうとうめん   1人分
・たまねぎ     1/2個
・なす       1本
・鶏ひき肉     180g 
・サラダ油     大さじ1杯
・小麦粉      大さじ1杯
・牛乳       200㏄
・味噌       25g(小さじ4杯)
・コンソメ(顆粒)  小さじ1/2杯
・とろけるチーズ  お好みの量
・粉チーズ     お好みの量
・パセリ      適量

【作り方】
①たまねぎはみじん切りに、なすは1㎝角の角切りにする
②パセリは細かく刻んでおく
③オーブンを200℃に予熱しておく
④ほうとうめんを2~3分茹で、5㎝程の長さに切っておく
⑤フライパンにサラダ油をひき、鶏ひき肉を炒める
⑥⑤が色ついてきたら①を加えて炒める
⑦全体に火が通ったら、小麦粉を加えて素早く混ぜる
⑧牛乳、味噌、コンソメをいれ、とろみが出るまで混ぜる
⑨耐熱容器に⑧→④→⑧→④の順で何段か重ね、上にとろけるチーズ、粉チーズをかける
⑩200℃で予熱をしておいたオーブンで15分ほど焼き、上に刻んだパセリを散らして完成

【ポイント】
ほうとうを購入した際に味噌が付いている場合は、味付けの味噌に使用しても良いです。ほうとうめんを2㎝程に切ると、マカロニの代わりとしても使用でき、ブロッコリーなどの野菜と合わせてグラタン風にアレンジすることもできます。