空気が冷たく感じられる日が多くなり、冬の訪れを感じる頃になってきましたね。今回はブロッコリーについてのお話です。ブロッコリーは今では輸入の他、国内でも産地が増え、予冷施設や冷蔵輸送が整い、国産ブロッコリーの周年供給が確立されたことから、1年中購入することができる食材となっています。旬は11~3月なので、これからがおいしく食べられる時期となります。
ブロッコリーにまつわる野菜
ブロッコリーはもともとキャベツを品種改良して作られた野菜です。そんなブロッコリーをさらに品種改良して生まれた、ブロッコリーにまつわる野菜をいくつかご紹介します。
●カリフラワー
ブロッコリーが突然変異したものを、品種改良してできた野菜と言われています。花野菜や花キャベツなどとも呼ばれます。一般的には、白をイメージすることが多いですが、オレンジや黄緑、紫など様々な色の種類があります。
●ロマネスコ
ロマネスコの生まれについては、ブロッコリーとカリフラワーを掛け合わせてできた、あるいはロマネスコの方が実は歴史が古く、ブロッコリーやカリフラワーの起源となる野菜である、など諸説あります。日本でも「カリッコリー」と呼ばれ、スーパーで見かける機会も増えてきましたが、特にヨーロッパで普及している野菜です。
●はなっこりー
中国野菜のサイシンとブロッコリーを合わせて作られた、山口県生まれのオリジナル野菜です。菜の花のような見た目で、花から茎まで全て食べられます。
●ブロッコリースプラウト
ブロッコリースプラウトとは、ブロッコリーの新芽のことです。「スプラウト」は植物の新芽のことを指しており、これから成長するために必要な栄養を豊富に含んでいる状態ですので、成熟したものよりも栄養を豊富に含んでいるという特徴があります。
ブロッコリーの栄養
(1)ビタミンC
ブロッコリーは、ビタミンCを多く含んでいる野菜です。ビタミンCは、コラーゲンの合成に不可欠で、コラーゲンが合成できないと、血管や皮膚、粘膜などが弱くなり、出血や感染を起こしやすくなりますので、普段からしっかり摂取しておくことが大切です。他にも、鉄分を吸収されやすい状態にしたり、抗酸化作用により動脈硬化やがんの予防効果の期待ができるなど様々な働きがあります。ビタミンCは果物類が多く含まれる食品としてよくイメージされますが、その果物類と比べてもブロッコリーに含まれている量は多く、食品100gあたりで比較すると、例えば、みかんの3.8倍、キウイフルーツの1.7倍、レモンの1.2倍ものビタミンCが含まれています。
(食品100gあたり)
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)
(2)葉酸
葉酸はビタミンの仲間です。緑の濃い野菜に多く含まれることから、この名前が付いたと言われています。葉酸は、赤血球の産生に関わっていたり、新しい細胞を作るのに必要なDNAなどを合成する働きがあるので、体の成長や修復に重要です。また、胎児の発育にも影響するので、特に妊娠期の女性には欠かせない栄養素となっていますが、平成29年度国民健康・栄養調査によると、若い世代の女性でやや不足の傾向にあります。葉酸の多い食品は、他にほうれん草、菜の花、枝豆などがありますが、ブロッコリーは1年中購入しやすい食材で、日々の食事に取り入れやすくおすすめです。小房3~4個程度で、成人女性の1食あたりの必要量の3/4を摂ることができます。
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)
ブロッコリースプラウトの栄養について
ブロッコリーの新芽のブロッコリースプラウトは、スルフォラファンというファイ
トケミカル(※1)の含有量が高いことで注目を集めました。スルフォラファンには解毒作用や抗酸化作用があることが報告されており、摂取することでがん予防やその他様々な効果があるのではないかと期待されています。
もともと、成熟したブロッコリーに含まれるスルフォラファンやその他のファイトケミカルが先に注目され、アメリカ国立がん研究所が作成したデザイナーフーズ・ピラミッド(※2)の食品に取り上げられたのですが、ブロッコリースプラウトはブロッコリーよりもスルフォラファン含有量が多いとされています。また、ブロッコリースプラウトの中でも発芽して3日目のものは、よりスルフォラファン含有量が多いとされ、スーパースプラウトと呼ばれています。
商品によってスルフォラファン含有量の違いはあるようですが、米国のある公表値(※3)によると、ブロッコリースプラウトはブロッコリーの約7倍、スーパースプラウトではブロッコリーの約20倍ものスルフォラファンが含まれているようです。
※1:植物に含まれる天然の化学成分の総称
※2:ファイトケミカルによるがん予防が期待できる食品を約40種類ピックアップし、効果が期待できる順にピラミッド型に並べたもの
※3:米国ジョンズ・ホプキンス大学認定種子を使用した商品の公表値
ビタミンCの損失を減らす方法
ビタミンCは水溶性のビタミンで、水に溶け出るという性質があり、調理方法によっては摂取できる量に大きく差が出ますので、調理方法の選択は大切です。調理方法の違いによるビタミンCの変動を調べた報告の一部をご紹介します。
(出典:川越昌子他 「無水調理によりブロッコリーのミネラル・ビタミンの変動」生活衛生vol.42(1998) )
<報告内容>
ブロッコリーを10~15gの小房に切り分け、約100gずつ以下の方法で「ゆで調理」および「電子レンジ調理」を行い、調理後のビタミンC量を測定しました。
・ゆで調理:沸騰状態が続く程度の弱火で、フタをせずに4分30秒間加熱
・電子レンジ調理:軽く洗浄後、水気を残したまま食品用ラップで包み、
500wで2分間加熱
結果は以下のグラフです。ブロッコリー100gを「ゆで調理」「電子レンジ調理」した時のビタミンCの残存量を示しています。生の状態で106mgあったビタミンCは、ゆで調理では、ビタミンCは47mg程に減ってしまったのに対し、電子レンジ調理では、103mgのビタミンCが残っているという結果となりました。ビタミンCは数分間のゆで調理では、ほとんど分解されないことが分かっているため、失われたビタミンCはゆで汁へ流れ出たと考えられます。一方、電子レンジ調理の場合は、加熱時に水を使わないので、洗浄時に失われる程度のビタミンCの損失で済みます。
電子レンジ調理は、ビタミンCの損失を抑えるだけでなく、その他のビタミンやミネラルなど水溶性の栄養素の損失も抑えることができます。また、調理時間が短く、手間も少ないため、おすすめの調理方法です。
ブロッコリーの活用方法
(1)茎の活用
ブロッコリーの茎は食べることができ、花茎部分と同じ栄養があります。捨ててしまうのはもったいないので、捨てずに活用しましょう。皮も食べられますが、硬くて気になる場合は剥いて下処理してから使いましょう。調理方法によって食感が変わるので料理によって調理方法を使い分けるのがおすすめです。
<茎を使ったおすすめ料理>
・味噌汁の具、スープの具 など
乱切り、薄切りなどある程度大きさを残して調理するとホクホクした食感が味わえます。
・きんぴら、炒め物、ナムル など
細切りがおすすめです。歯ごたえのある食感が残り、料理の食感のアクセントになります。
(2)冷凍しておかずにプラスして活用
ブロッコリーはあまり日持ちがしないので、残りはすぐに冷凍して活用しましょう。火を通してから冷凍しておけば、解凍するだけで良いので手軽に使えます。料理の材料や付け合わせとして、また買ってきたお惣菜にプラスして活用しましょう。野菜不足が気になる人にもおすすめです。
<プラスにおすすめの料理>
サラダ、シチュー、スープ、レトルト(カレーやパスタ)の具 など
おすすめレシピ
これからの寒い時期に向けて、温かいブロッコリーのスープをご紹介します。ブロッコリーの茎も使って食材の無駄を減らし、また電子レンジ調理にすることで栄養素の損失も少なくて済むレシピです。ブロッコリーの緑色が映え、栄養がたっぷり詰まったスープです。
ブロッコリーのスープ
【材料・分量(2~3人前)】
・ブロッコリー:1/2株(150g)
・玉葱:1/4個(50g)
・油:小さじ1(4g)
・牛乳:250cc
・コンソメ(顆粒):小さじ2弱
・生クリーム:50cc
・バター:小さじ1強(5g)
※トッピング用
・生クリーム:2~3cc
・こしょう:少々
【作り方】
1.ブロッコリーの花茎部分は小房(10-15g程度)に切り分け、茎の部分は皮を剥き、5mm程度の薄切りにします。
2.ブロッコリーを洗い、水気を残したまま耐熱容器に入れ、ラップをかけ600Wで2分~2分半加熱します。加熱が終わったら、レンジから取り出し、粗熱を取ります。
3.玉葱は薄切りにし、フライパンに油を敷いて、弱火で焦がさないように注意しながら、しんなりするまで炒めます。
4.ミキサーに、2のブロッコリー、3の玉葱、牛乳を加え、ミキサーにかけます。
5.4を鍋に移し火にかけ温めながら、コンソメ、生クリーム、バターを加えて味を整えます。
6.器に盛り、トッピング用の生クリーム、こしょうをかけて完成です。
【アレンジ】
・牛乳を豆乳にすると、よりあっさりとしたスープになります。
・ミキサーにかける時に、茹でたじゃがいも(小1個程度)を一緒に入れ、とろみを増やしてポタージュのようにするのも良いでしょう。