ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

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栄養コラム

塩(食塩)について

No.187

2019年7月1日

管理栄養士 田口瑛里沙

梅雨が終わり夏本番の季節になりましたね。熱中症にならないように気をつけましょう。
私事ですが、先日石垣島へ旅行に行ってきました。その際、石垣島の海水を用いて塩を製造している工場の見学をしました。そこで造られている石垣塩の栄養成分を見て、塩の種類による成分の違いを改めて実感しました。
そこで今回は、塩(食塩)についてのお話をしようと思います。


塩と体の関係

塩の主成分はナトリウムという成分で、人間の体に欠かせないミネラルの一つです。ナトリウムは、体内の水分量を適切な状態に調整したり、神経や筋肉が正常に働くようにしたりする重要な役割を担っています。人間の体は約60%が水分で、そのうちナトリウムは約0.85%と言われています。体内のナトリウム濃度は、腎臓の働きによって常に一定に保たれていますが、ナトリウムをとりすぎると血液内のナトリウム濃度が増し、体は一定濃度を保とうと水分を増やします。そのため、血液量が増えて血圧が上がる原因になります。

厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、成人1日の食塩摂取量は、男性で8.0g未満、女性は7.0g未満と定められています。近年減塩意識は高まってきているものの、塩分過剰傾向が続いているので、引き続き減塩意識が必要です。

一方で、通常の食事をしていたらナトリウムは不足することがありませんが、高温下での重労働や、激しい運動などで多量に汗をかくと欠乏する場合があります。ナトリウムが欠乏すると体内の水分バランスが崩れ、脱水症や熱中症などを誘発させますので、その際は水分以外にナトリウムなどのミネラルを補給することが大切です。


食塩の種類

製造方法により塩は、大きくわけて3つに分類されます。

(1)精製塩

食塩や食卓塩としてスーパーで並んでいる一般的な塩です。海水から電気分解を利用して濃い海水をつくり、煮詰めて塩の結晶を取り出したものです。大量生産ができるため安価で、雑味がなくて塩辛く、サラサラしていることが特徴です。栄養成分は、ナトリウムが99%以上で、ナトリウムしか含まれていないものが多いです。

(2)再生加工塩

前述の精製塩などの塩を溶かし、塩辛い味を抑えるためのにがりの成分を加えたあと、加熱処理して再び結晶化して取り出した塩です。後述の自然塩に比べると価格は安く、ナトリウムだけでなく、にがりの主成分であるマグネシウムが豊富に含まれています。精製塩と同様にサラサラしていて、辛味と少し苦味を感じるのが特徴です。

(3)自然塩・天然塩

海水を自然乾燥、または平釜で煮詰めて濃縮を重ね、手間と時間をかけて自然の力を利用して作られた塩です。粒子がバラバラでしっとりとしており、固まりやすいことが特徴です。また、ナトリウム以外にカリウムやカルシウムなどの天然ミネラルが豊富で、下記栄養成分表をみると前述の2種に比べて、ミネラル分が多いことがわかります。様々なミネラルが含まれていることから、塩辛さだけでなく、まろやかでコクのある塩とされています。
自然塩・天然塩の中には、天日干しで作る「天日塩」、天日干しの途中で煮詰める「天窯塩」、地殻変動により海の一部が陸地に閉じ込められ結晶化した「岩塩、湖塩」などがあります。
※岩塩や湖塩には、固体化する間にミネラルが減ってしまい、ミネラルなどが残っていないことが多いです。

各食塩の栄養成分の違い(100gあたり)

 ナトリウム
(mg)
カリウム
(mg)
カルシウム
(mg)
マグネシウム
(mg)
食塩相当量
(g)
精製塩(添加なし)39,00020099.6
再生加工塩(添加あり)39,000208799.6
自然塩39,000100221899.5

(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2017年より)

精製塩や再生加工塩は、成分がナトリウムに偏りやすいので、カリウムなどのミネラルが多い野菜や果物などをとりいれるとミネラルのバランスがよくなります。


減塩しお

近年では、ナトリウム(塩分)量を抑えた「減塩しお」も多く出回ってきています。この塩はナトリウムをカリウムに置き換えて製造されたもので、塩気はありながら味がまろやで、普通の塩と変わらないものがほとんどです。減塩しおのメーカーにもよりますが、おおよそ50%程度の塩分がカットされていますので、ご家庭で使う塩を減塩しおに変えると簡単に減塩ができます。
しかし、減塩しおにはカリウムが多く含まれているため、カリウム制限がある方は医師にご相談ください。

●メーカー公表値「味の素 やさしお」参考(100g中)
※ナトリウムは食塩相当量より算出

 ナトリウム(mg)カリウム(mg)マグネシウム(mg)食塩相当量(g)
減塩しお  18,11027,30022046.0

塩の調理効果

塩は縄文時代後半頃からあるといわれており、古くからある調味料です。様々な調理効果がありますが、今回は代表的な3つの効果をご紹介します。

●防腐作用
塩には細菌類を死滅させたり、細菌が増殖する原因となる酵素の働きを抑制させたりする作用があります。塩をまぶしたり、漬けたりすることで保存性が高まり、昔から魚の塩漬けや野菜の漬物など、食品を長期間保存するために使われています。

●酸化・変色防止作用
塩に含まれるナトリウムは、ポリフェノール系物質の酸化や変色を防ぐ作用があります。例えば、りんごやごぼうは時間が経つと切った断面が茶色く変色しますが、食塩水に浸すことで変色せずキレイな色が保たれます。このときの食塩水は、塩分濃度0.3%(水400ccに塩1g)程度で効果があります。食塩水に浸けすぎると食材に塩分が浸透して濃い味になるので、浸けすぎには気をつけましょう。

●脱水作用
塩には食品がもつ水分を外へ出す働きがあります。水は塩分濃度が薄いほうから濃いほうへ移動するため、塩を表面につけることで水分を引き出すことができます。例えば、きゅうりを塩もみすることできゅうりの水分が出てやわらかくなります。漬物や和え物にする場合、塩もみして水を引き出してから使うと味が入りやすくなり、また水っぽくなりません。


塩の使い方

味を引き立てる塩を使うことで、食材がよりおいしくなります。塩の特徴を活かして上手に使いましょう。

●下味
魚や肉は焼く前に塩を用いることで料理がおいしくなります。魚では全体に塩を振ってしばらく置き、魚から出てきた水分をキッチンペーパーで拭きとる、または水で洗い流すと魚独特の生臭さがとれます。肉の場合は焼く直前に表面にまんべんなく塩を振っておくと、適度に身が引き締まりうまみを閉じ込めます。下味の食塩量は食材重量の0.8~1%程度が良いでしょう。

●煮物
煮物で塩を入れるタイミングは、調味料を入れる基本である「さしすせそ(さ=砂糖、し=塩、す=酢、せ=醤油、そ=味噌)」の順番で、砂糖の次にいれましょう。塩を最初に入れると食材が硬くなってしまう原因になります。砂糖を先に入れることで甘みがつき、塩の味も際立つようになります。また、湯豆腐に塩を入れると、より柔らかい豆腐ができます。

●炒め物
炒め物の場合は必ず最後に入れましょう。先に塩を入れてしまうと塩の脱水作用により野菜など材料から水分が出て水っぽくなってしまい、シャキッとした歯ごたえが減ってしまいます。

●青菜の下ゆで
ほうれん草などの青菜野菜の下ゆで時に塩を入れると、緑色が鮮やかになります。塩のナトリウムが青菜の緑色素であるクロロフィルという成分の酸化を防ぎ、キレイな緑色を保ちます。塩はお湯の量の1~2%程度が基本です。


おすすめレシピ

7月から熱中症が増えはじめるので、熱中症予防に良い冷たいドリンクをご紹介します。90%が水分で糖質やミネラルが適度に含まれるすいかに、酸味がありさっぱりするキウイフルーツとレモン汁を組み合わせました。すいかとキウイフルーツは凍らせて、暑い日に飲みたくなるドリンクです。

●すいかとキウイフルーツのスムージー

【材料】(2人分)
・すいか ・・・1口サイズ6かけ(約200g)
・キウイフルーツ ・・・1個
・レモン汁 ・・・小さじ2
・冷水 ・・・1/2カップ
・塩 ・・・5振り(約1g)
・はちみつ ・・・大さじ1

【下準備】
・すいかと皮をむいたキウイフルーツを冷凍庫で凍らせておきます。
・水は、1/2カップを半分ずつ(50cc×2)分けておきます。
・盛り付けるグラスは冷蔵庫で冷やしておくと良いです。

【作り方】
1.冷凍庫からすいかとキウイフルーツをとり出して、すりおろしやすい程度に半解凍します。
2.ボウルを用意し、半解凍したすいかをすりおろし器ですりおろします。(すいかの種は
  すりおろしながら取り除きます。)そこへ50ccの冷水と塩を加えて混ぜます。
3.別のボウルにキウイフルーツをすりおろし、レモン汁とはちみつ、冷水50ccを加えて
  混ぜます。
4.冷やしたグラスに3、2の順に入れて完成です。
  ※飲む時に、よく混ぜて飲むとおいしいです。

【アレンジ】
・すいかとあわせる他の果物として、パイナップルや桃、梨などでも美味しいですが、水分の
 少ないバナナなどは、すりおろしづらいのであまり向きません。
・水を牛乳に変えると栄養バランスがぐんとあがり、夏バテ対策にも向くドリンクになります。

※量を多く作る場合は、ミキサーやフードプロセッサー、ブレンダーなどを使うのがおすすめ
 です。