春は桜をはじめ、きれいな花がたくさん咲く季節ですね。新年度の始まりにもピッタリです。この季節になると働き蜂も忙しく花の蜜を集めるようになります。働き蜂が一生かけて集める花の蜜から作られるはちみつは、わずかティースプーン1杯分と言われています。今回は、そんな貴重なはちみつについてのお話しです。
はちみつができるまで
はちみつがどのようにして作られるかご存知ですか。はちみつが作られるまでの過程を見てみましょう。
はちみつ作りは、働き蜂が花の蜜を集めるところから始まります。働き蜂は、巣を出て数多くの花を訪れ、花の蜜をたくさん体内に蓄えて巣に帰ってきます。集めてきた花の蜜は巣の中で働く別の働き蜂に口移しで渡され、蜜を受け取った働き蜂は、少しずつ蜜を口から出し巣穴の中に蓄えていきます。この過程で、蜂の唾液や体内に含まれている酵素がはたらいて、花の蜜の糖が分解されてはちみつが出来上がっていきます。最後は、働き蜂が巣の中で羽ばたいて風を送ることで水分を蒸発させ、水分が20%程になれば、はちみつの完成です。
働き蜂が蜜を集める花は数えきれないほどたくさんあり、集めた花の蜜の種類によってはちみつの色や味、風味が異なります。働き蜂がはちみつを作るのは、巣で暮らす蜂が生きていくために食べる分として、また保存しておくために行っている自然の習性です。私たちはその恩恵を受けているのですね。
はちみつの特徴
はちみつの80%を占めている糖質には体に嬉しい様々な特徴があります。
①体に取り込まれやすい
はちみつの糖質は、作られる途中で蜂の唾液や体内の酵素によってブドウ糖や果糖に分解されます。ブドウ糖や果糖は、これ以上消化される必要がない糖で、すばやく吸収され効率良くエネルギーに変換されるという特徴があります。身体への負担が少ないので、速やかに疲労回復したいスポーツ選手や、体力の落ちている高齢者の栄養補給にもおすすめです。
②甘みを感じやすく低エネルギー
はちみつは砂糖よりも甘みを感じやすいという特徴があり、はちみつで砂糖と同じ甘さをつけるには、砂糖の80%の量で良くなります。さらに、はちみつは砂糖よりも低エネルギーのため、
はちみつを使えばエネルギーを抑えることができます。例えば、市販のサイダーコップ1杯(150ml)と同じ甘さになるように、はちみつを使ってサイダーを作ると、エネルギーは約40%少なくなります。市販の清涼飲料水は、砂糖の量が多めのものが多いので、手作りで飲み物を作ってみるのもおすすめです。
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より算出)
③腸内環境を整える
はちみつに含まれる有機酸や麦芽糖、オリゴ糖などは、腸内の善玉菌
(乳酸菌、ビフィズス菌)のエサとなり、これらを増やす働きがあります。
腸内環境を整えてくれるため、便秘や下痢の改善効果が期待できます。
はちみつの活用例
はちみつの主な成分は糖質ですが、その他にもたんぱく質、ミネラル、ビタミン等、様々な栄養素が含まれています。これらは、はちみつの原料である花の蜜を集める際に、一緒にまざる花粉に由来しているものです。
パンやヨーグルトにかけるなど、そのまま使用することが多いはちみつですが、料理などにも活用ができます。栄養豊富なはちみつを、日々の食事にも上手く取り入れたいですね。
●料理に活用
煮物や照り焼きに使う砂糖やみりんは、はちみつでも代用できます。肉の照り焼きや煮魚の煮汁などにも使え、はちみつを使うことでコクがプラスされて美味しくなります。また、マリネなど酸味のある料理では、酸味をやわらかくマイルドにしてくれるので、酢が苦手な方でも食べやすくなります。レモンや梅干し、ゆず、しょうがなどとの相性が良いので、合わせて使うのがおすすめです。
●ドレッシングやソースに活用
はちみつは様々な調味料類と合うので、ドレッシングやソースへの活用も良いでしょう。ドレッシングでは、レモン果汁やオリーブオイルと組み合わせるのがおすすめです。他にも、マスタードと合わせてハニーマスタードソースとしたり、タルタルソースを作る際にも使えます。はちみつを使って、いつもと違った味を楽しみましょう。
●飲み物に活用
コーヒーや紅茶、ホットミルクなどの温かい飲み物、炭酸飲料のような
冷たい飲み物どちらにも溶かして使うことができます。定番のはちみつレモンのシロップは、お湯や炭酸で割って飲み物にすることもできます。はちみつとレモンの組み合わせは、レモンのクエン酸と吸収の良いはちみつの糖が合わさって、高い疲労回復効果が期待できます。シロップは紅茶に溶かしてレモンティーにするのも良いです。
※注意点
1歳未満の乳児は、乳児ボツリヌス症を発症する危険があるので、はちみつを使った料理は与えないように注意しましょう。
はちみつの保存
はちみつは保存性が高く微生物などが繁殖しにくい食品のため、冷蔵保存は必要ありません。衛生状態を保ち常温で保存しましょう。
【保存の注意点】
(1)日が良くあたり、温度や湿度が高くなる場所は避けましょう。夏場は、風通しが良く直射日光が当たらない場所を選びましょう。
(2)水分やパンくずなどはちみつ以外のものが入ると痛みやすいので、開封後はしっかり蓋をして異物が入らないようにしましょう。蓋にも水分が付いていたりしないかよく確認しましょう。
(3)はちみつをスプーンなどでとるときに、他のものに使ったスプーンを洗わずにそのまま使うと、カビの原因になるので、清潔なスプーンを使うようにしましょう。なめたスプーンを使うのもダメです。
※外気温が下がった場合や、保管場所の気温差が生じた場合など、はちみつが白く固まることがありますが、これは結晶と呼ばれる現象です。結晶は湯煎で戻すことができ、品質には問題ありません。
おすすめレシピ
はちみつを調味料として使った煮魚のレシピをご紹介致します。はちみつは、醤油や味噌などの調味料とも合いますので和食にも使え、はちみつを使うことによって、魚の生臭さが抑えられたり、コクをプラスすることができるのが嬉しいところです。また、照りが出るので、見た目にも美味しそうに仕上がります。今回のレシピは鯖缶を使って手軽に作れる魚料理のご紹介です。鯖缶の活用にもなりますので、ぜひお試しください。
◆鯖缶のはちみつ入り醤油煮
【材料】
・鯖缶(水煮) 約150g(1缶分の固形量)
・しょうが 5g(小1カケ)
・鯖缶(水煮)の煮汁 40~50g
(商品によって異なります)
・水 40cc
・酒 40cc
・しょうゆ 18g(大さじ1)
・はちみつ 21g(大さじ1)※はちみつは種類によって甘さが異なります
ので、量はお好みで調整してください。
(付け合わせ)
・菜の花 30g(2枝分)
・塩(塩茹で用) 少々
【作り方】
1.生姜は薄くスライスしておきます。
2.付け合わせ用の菜の花は塩茹でし、冷水にとります。軽く水気をしぼった後、3~4cmに切りそろえておきます。
3.鍋に1の生姜と鯖缶(水煮)の煮汁、水、調味料を全て入れひと煮立ちさせます。
※はちみつは計量スプーンに残らないよう、最後までしっかり入れましょう。
4.3に鯖を入れ、煮汁をかけながら軽く煮ます。
※缶詰の鯖は身がほぐれやすいので、強火で煮立たせ過ぎないよう注意しましょう。
5.鯖を先に取り出し器に盛り、残った煮汁を5分程度煮詰めていきます。
6.煮汁にとろみがつき照りが出て来たら火を止め、5で器に盛った鯖に煮汁をかけます。
7.最後に、2の付け合わせの菜の花を添えて完成です。
【アレンジ】
・缶詰でなくても普通の魚の煮付けの時にも使えます。その際は、缶詰の煮汁分は水や酒に置き換えてください。
・醤油を味噌に変えて、味噌煮にしても良いです。