2020年のオリンピックに向けて和食がさらに注目されています。和食に欠かせないものの一つとして日本の伝統的な調味料があります。日本独自の調味料は様々ありますが、今回は意外とどういうものなのか詳しく知らない方も多い「みりん」についてお話します。
みりんについて
みりんの原料は「もち米」「米麹」「焼酎などのアルコール」で、これらを40~60日間熟成させると、米麹の酵素の働きによりもち米のでんぷんやたんぱく質が分解され、みりん独特の甘味や風味がつくられます。アルコール度数が14%前後あるため、みりんはアルコール類に分類され、スーパーなどでもお酒のコーナーに置かれています。みりんの歴史は長く、みりんがつくられるようになったときは、飲酒用で女性に人気の甘いお酒として親しまれていました。その後、料理の調味料として使われるようになり、和食の味付けには欠かせない調味料になりました。
みりんにも「本みりん」や「みりん風調味料」などの種類がありますが、昔の製造法を用いた本来のみりんは「本みりん」です。もう一つの「みりん風調味料」は、アルコールを使わず塩分を加えて、そのまま和え物に使用したり、アルコールが飲めない方などにも使えるようにしたみりんです。アルコール度数は1%未満でアルコール類には分類されないため酒税がかからず、本みりんより安価で購入することができます。
今回は、昔から親しまれている「本みりん」をご紹介します。
本みりんの調理効果
古くから伝わる本みりんは、調理に使用することで様々な良さがあります。
(1)照りやツヤ出し
料理をおいしく見せる照りやツヤをつけることができます。糖は加熱すると、食材の表面に膜をつくってコーティングし、水分を保持することで照りやツヤが生じます。糖が含まれる「砂糖」や「酒」でも照りやツヤを出すことができますが、本みりんには複数の糖が含まれていることから、照りやツヤをより効果的につけることができます。
(2)煮崩れ防止
芋や野菜など植物食品の煮崩れは、食材のペクチンという物質が加熱すると溶け出してしまうことで起こります。ペクチンは、細胞同士を繋ぎ合わせたりする役割があるため、ペクチンがなくなると形を保つことができず崩れやすくなってしまいます。本みりんに含まれる糖やアルコールが、このペクチンを溶けにくくしてくれるため、煮崩れを防止します。
また、本みりんに含まれるアルコールはたんぱく質を早く凝固させ、食材を引き締めるため、魚なども煮崩れしづらいです。
(3)臭み消し
熱が加わることで食材に染み込んだアルコールが蒸発しますが、その時に臭みも一緒に蒸発させ、魚などの臭みを消してくれます。
(4)色や香りづけ
糖とたんぱく質の元になるアミノ酸が加熱されると、キレイな焼き色に仕上がります。また、焦げると甘く香ばしい香りが引き立ちます。
本みりんを入れるタイミング
入れるタイミングによって本みりんの調理効果が異なります。
●先に・・・アルコールの働きが最大限に活かされ、煮崩れ防止や臭み消し、味のしみこみを良くします。
●後に・・・照りやツヤをつけるときは、最後に入れるときれいにつきます。
本みりんと砂糖の違い
同じ甘味をつける調味料の「砂糖」と本みりんは、それぞれ違う甘味をもち、成分も異なります。
(1)甘味成分である糖の違い
砂糖の糖質は、ショ糖がほぼ100%でストレートな甘みをもつのに対し、本みりんはブドウ糖や麦芽糖など9種類以上の糖質が含まれ、コクとまるみのある深い味わいがある甘みです。
糖は種類によって甘味の感じ方が異なるため、砂糖と本みりんの甘味度を比較すると、砂糖の甘味主成分である「ショ糖」は、本みりんの甘味主成分である「ブドウ糖」の約1.5倍の甘さを感じるといわれているため、糖分のつけ方によっては、砂糖と本みりんをうまく使い分ける必要があります。
(2)栄養成分の違い
砂糖には炭水化物(糖質)以外のたんぱく質や脂質は含まれませんが、本みりんはもち米を使用し米麹から発酵しているため、炭水化物(糖質)以外も含まれます。本みりんは砂糖にはないアルコールが含まれているので、同じ糖質量で比較すると、本みりんは砂糖の1.4倍カロリーが高いことがわかります。
また、前述のとおり砂糖なら少しの使用で済むものを、本みりんで代用すると本みりんの使用量が多くなり、カロリーも増えてしまうため、砂糖と本みりんを合わせて甘味を調整しましょう。
<比較>
エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | |
本みりん(大さじ1杯強) | 49 | 0.1 | Tr | 8.9 |
砂糖(大さじ1杯) | 35 | 0 | 0 | 8.9 |
※Tr・・・微量
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2017年より)
(3)発酵食品である
米から発酵して作られる本みりんは、アミノ酸などからコクや味わいがプラスされます。また、麹に含まれる消化酵素がたんぱく質やでんぷんを分解し、アミノ酸や糖を生成し、消化吸収を促してくれます。疲れたときや、食欲がなくあまり食べられないときでも効率よく体へ吸収され、エネルギーとして利用されやすいです。
煮切りみりんの活用
煮切りみりんとは、加熱してアルコールを飛ばした本みりんのことをいいます。煮切りみりんにすると煮物以外にも使うことができます。
●ドレッシングやタレ
煮切りみりんを加えると甘味のあるドレッシングがつくれます。
例)ドレッシング・・・油1:酢1:煮切りみりん1~2(お好みで)
ポン酢・・・醤油5:柑橘汁5:煮切りみりん1~2
●ケーキやお菓子
おかず料理だけでなくお菓子類にも使えます。砂糖の一部を本みりんにすると優しい甘さでコクのあるケーキやお菓子になります。同じ甘さで砂糖の代わりにするとしたら、重量(g)で砂糖1に対して本みりん3で用いると良いです。
おすすめレシピ
煮切りみりんを使用した甘さ控えめのデザートをご紹介します。残暑の残る9月にも食べやすい冷たいデザートです。
●まろやかな甘さの牛乳寒天(みたらし風ソースかけ)
【材料】(4個分)
[牛乳寒天]
・牛乳 ・・・1カップ
・みりん ・・・1/2カップ弱(100ml)
・水 ・・・1/3カップ
・粉寒天 ・・・小さじ1弱(2.5g)
[みたらし風ソース]
・みりん ・・・大さじ2
・しょうゆ ・・・小さじ1/3
・水 ・・・大さじ2/3
【下準備】
牛乳を常温に戻しておきます。
【作り方】
[牛乳寒天]
1.鍋に水と寒天を入れてかき混ぜたら火にかけ、寒天が溶けるまで煮つめます。
2.1にみりんを入れ、沸騰した状態で1分半ほど火にかけてアルコールをとばします。
3.火を止め、常温に戻しておいた牛乳をゆっくり加えてよく混ぜます。
4.バットのような平たい容器に入れ、粗熱がとれたら、冷蔵庫に入れます。
5.冷やし固まったら、一口サイズに切り、お皿に移します。
[みたらし風ソース]
1.小鍋にみりんを入れ、量が半量になるくらいまで煮つめます。
2.1にしょうゆと水を入れて軽く混ぜます。
3.火から下ろし、粗熱をとったら冷蔵庫で冷やします。
お皿に盛った牛乳寒天にみたらし風ソースをかけたら完成です。
※牛乳寒天に缶詰の果物など入れ、みたらし風ソースをかけずに食べてもさっぱりしておいしいです。