若葉が萌える好季節の5月を迎えると、様々な野菜が旬を迎えます。中には本来の旬より早めに収穫し、この時期ならではの瑞々しい食感や味わいを楽しめる野菜が出回ります。そのひとつが「新ごぼう」です。ごぼうの本来の旬は冬ですが、春から初夏に収穫される若取りの新ごぼうは、通常のごぼうとは違ったおいしさがあります。今回は新ごぼうについてのお話です。
新ごぼうについて
新ごぼうは初夏頃に収穫されることから「夏ごぼう」とも呼ばれています。一般的なごぼうの収穫時期は秋から冬なので、今の時期に収穫するごぼうは成長途中であり、通常のごぼうより白色で細く柔らかいところが特徴です。そのため、火を通す時間が短くて済み、さっとゆでてサラダやピクルスにしたり、天ぷらなどの揚げ物に使ったりと、通常のごぼうとは違った食べ方ができます。また、風味がよく甘味もあるため、炊き込みご飯や煮物にするとより新ごぼうの香りが引き立ちます。
新ごぼうの食物繊維
通常のごぼうと共通ではありますが、ごぼうの最も特徴的な栄養は「食物繊維」です。
同じ根菜類の中で比較しても、にんじんの約2倍、れんこんの約3倍、かぶの約4倍、大根の約4.5倍と最も多く含まれていることがわかります。
【根菜類の食物繊維総量(100g中)】
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)
現在の日本人の食物繊維量の不足分は、男性で5.5g、女性で4.1g(日本人の食事摂取基準2015年版、平成28年度国民健康栄養調査より)となっていますが、きんぴらごぼう小鉢1皿で4.6gの食物繊維がとれるなど、ごぼう料理を1皿加えることで不足分がかなり補えます。
また、食物繊維は「不溶性」と「水溶性」に分けられ、不溶性は胃や腸で水分を吸って膨らみ、腸を刺激して蠕動運動を活発にさせ、便通を促進させます。一方、水溶性は胃腸内をゆっくり移動するため、糖質の吸収を緩やかにさせ急激な血糖値の上昇を防いだり、コレステロールなどの脂質を吸着して体外に排泄したりする働きがあります。ごぼうには不溶性と水溶性がおおよそ均等に含まれていて、野菜類には少ない水溶性をしっかりとることができます。
【根菜類の食物繊維比較(100g中)】
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)
新ごぼうの良さ
栄養面は通常のごぼうと同じですが、新ごぼうには別の良さもあります。
●薄味で食べられる
通常のごぼうを使うときは、アクが強く独特の泥臭さを軽減させるために濃い味付けにすることが多いです。しかし、新ごぼうはアクが少なく香りも良いため、薄めの味付けでも泥臭さが気にならず食べられます。例えば通常のごぼうで作るきんぴらや煮物は、比較的しっかり味付けされて塩分が多めですが、新ごぼうで作るときは香りを活かして薄味にしても美味しく食べられます。また、新ごぼうはサラダやピクルス、和え物など、塩分を抑えた料理にも広く活用できます。
●下処理や調理がしやすい
新ごぼうは、皮が薄いため、泥を落とす程度にさっと洗うだけで下処理完了です。またアク抜きの必要もないため、そのまま調理して食べられます。アクが気になる方は、水につけてアク抜きをしても構いません。
●料理に取り入れやすい
泥臭さがあまりないため、様々な料理に活用できます。肉や魚、卵などのメイン料理になる食材と一緒に炒めたり、きゅうりやトマトなどと和えてサラダにすることもできます。また、柔らかく火の通りも良いため、天ぷらやごぼうチップなどの揚げ物としても使いやすいです。
新ごぼうの保存方法
通常のごぼうは常温で約2週間、冷蔵保存すると約1ヶ月は日持ちしますが、新ごぼうは傷みやすいため、すぐに使い切るか冷蔵保存する必要があります。また、冷凍保存することでより長期間保存できます。
【冷蔵保存】
適度な大きさにカットし、ラップに包んでポリ袋に入れ、野菜室で保存しましょう。保存期間は3~5日程度です。泥が付いている場合は、新聞紙に包んで野菜室に入れるともう少し長く保存できます。
【冷凍保存】
冷凍すると、おおよそ1ヶ月は保存できます。冷凍は下記2つの方法があります。
①切って保存
泥を落とした後、キッチンペーパーなどで水気をふき取り、ささがきや千切り、乱切りなどにカットして、フリーザーパックに入れて冷凍保存します。ごぼう同士がくっつきやすいので、小分けにしてラップで包んでおくと使いたい量を調節できて便利です。
~冷凍ごぼうのおすすめ料理~
きんぴら、煮物、炊き込みご飯、汁物(豚汁)、サラダ、天ぷらなど
※使うときは冷凍のまま調理しましょう。
※サラダや天ぷらに使う場合は、軽くゆでて水分をよく切ってから使うと
水っぽさがなくなります。
②料理して保存
きんぴらや煮物などを1人前ずつラップに包んで冷凍保存すると、食べたいときにレンジで温めてすぐに食べられます。また、ミニカップに小分けにして保存すると、お弁当にも使えます。お弁当に入れる場合は、そのまま入れて自然解凍させるか、少しレンジで温め半解凍にしてから入れましょう。
おすすめの組み合わせ食品
ごぼうの独特な香りを活かしたり、ごぼうに不足しがちな栄養を補うために、おすすめの組み合わせがあります。
●肉類や魚類
ごぼうと一緒に煮込んだり、炒めたりすることで、肉や魚の臭みをごぼうの香りが抑えます。例えば、昔からの伝統料理であるどじょうとごぼうを卵でとじた「柳川鍋」は、どじょうの泥臭さをごぼうの香りで消している料理といわれています。
また、ごぼうにはスタミナドリンクなどの成分であるアルギニンが含まれ、肉や魚などの良質なたんぱく質と一緒にとると疲労回復なども期待できます。
●緑黄色野菜
ごぼうにはビタミン類がほとんど含まれていないため、ビタミン類が多く含まれている緑黄色野菜と組み合わせることでより栄養バランスが整います。
【旬の緑黄色野菜例】
アスパラガス、豆苗、スナップエンドウ、いんげん、ピーマン、トマト、にら など
おすすめレシピ
ごぼうと組み合わせたいたんぱく質食品の一つ「ハム」と、旬の緑黄色野菜「豆苗」を使用したレシピをご紹介します。酢を使用し、気温が高くなりはじめ少し汗ばむ季節に食べたくなるさっぱりした味付けにしました。
●食べ応えばっちり!さっぱり新ごぼうサラダ
【材料】(2人前)
・新ごぼう ・・・2/3本(約80g)
・ハム ・・・2枚
・豆苗 ・・・1/4パック
[ドレッシング]
・酢 ・・・大さじ1.5杯
・しょうゆ ・・・小さじ1杯
・白だし ・・・小さじ1杯
・砂糖 ・・・小さじ1杯
・ごま油 ・・・小さじ1杯
【下準備】
ドレッシングの調味料を全て合わせてよく混ぜておきます。
【下処理】
泥付きの新ごぼうの場合は、たわしや丸めたアルミホイルで泥を落とすように軽く洗います。
【作り方】
1.新ごぼうはささがき、ハムは半分に切って細切りに、豆苗は根っこの綿の部分を切り落と
して1/3の長さに切ります。
2.新ごぼうと豆苗をそれぞれ耐熱容器に入れてラップをかけ、レンジ600wで新ごぼう2分、
豆苗20秒加熱します。
3.ボールに2の新ごぼうと豆苗、ハムを入れて軽く全体を混ぜます。
4.3にドレッシングを加えて混ぜたら完成です。
※新ごぼうはささがきした後、酢水に少し浸けるとキレイな白色に仕上がります。
【アレンジ】
・豆苗は、アスパラガスやスナップエンドウなど他の緑黄色野菜に変更してもおいしくいただけ
ます。
・アクセントに、赤とうがらしの輪切りを少し入れるとピリ辛のおつまみになります。