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栄養コラム

初がつお

No.161

2017年5月1日

管理栄養士 田口瑛里沙

この時期になると旬を迎える魚介類が増え、様々な種類の魚が店頭に並びはじめます。現在は、養殖や冷凍技術により、1年中売られている魚もありますが、旬の時期に食べる魚は別格で最もおいしくいただけます。
今回ご紹介する「かつお」は、回遊魚で春~初夏と秋の2回旬があり、同じ魚でもとれる時期によって違ったおいしさが味わえる魚です。全長40~80cmの大きい魚なので、「さく」や刺身サイズにカットされて売られているため、調理の手間もほとんどなく食べられます。
かつお


初がつおと戻りかつおの違い

かつおは、春になるとフィリピン沖から黒潮に乗って日本海側を北上し、三陸沖まで北上したかつおは餌をたくさん食べた後、初秋頃から南下していきます。春に北上したときにとれたかつおを「初がつお(上りかつお)」といい、秋に南下してきたときにとれたかつおを「戻りかつお(下りかつお)」と呼んでいます。かつお違い
初がつおは、身が引き締まっていて、赤身が多く、さっぱりとみずみずしい味わいですが、戻りかつおは、餌をたっぷり食べて太って南下してきたもののため、「とろかつお」とも呼ばれることがあるほど脂がのっており、濃厚な味や食感が楽しめます。

それらの栄養成分を比較すると、脂質量の大きな違いからエネルギーも異なります。初がつおの脂質は戻りがつおの1割以下、エネルギーも7割程度です。

【初がつおと戻りかつおの栄養成分(100g中)】
katuo
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)  


初がつおの栄養    

5月は新生活や新年度の疲れがあらわれやすいときですね。疲労回復にも良い成分が、初がつおには含まれています。

●高たんぱく質、低脂質
たんぱく質は、筋肉や血液、皮膚などの体の様々な部分をつくるために必要な栄養素です。体や内臓の筋肉の修復などを行っているため、疲労回復にもつながります。
初がつおは、魚の中でも最もたんぱく質量が多いことが特長で、そのわりに脂質はほとんど含まれていないため、とてもカロリーが低い魚です。

【栄養成分(100g中)】
魚の各栄養素
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)

●ビタミンB6
ビタミンB6は、皮膚や粘膜の健康維持や、免疫機能を正常に保つ働きがあります。また体内の様々な代謝を助けており、特に肝臓に脂肪が溜るのを防ぐ働きがあるため、脂肪肝予防におすすめのビタミンです。
かつお自体にビタミンB6が多く、他の魚に比べると最も多く含まれていることがわかります。

【栄養成分(100g中)】
ビタミンB6
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)

●鉄
魚の中でもかつおは、赤みで血合いが多いため、特に鉄が豊富に含まれています。鉄は、血液中の赤血球を作るために重要な成分で、不足すると貧血に影響しやすくなります。野菜などの植物に含まれる鉄とは異なり、かつおの鉄は体内に吸収しやすいので、貧血予防にはとてもおすすめの食品です。

【栄養成分(100g中)】
鉄
(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年より)


かつおの注意点

かつおには皮と身の間に寄生虫がいるので、かつおのたたきのように表面を火で炙って殺菌することが必要です。スーパーなどで売っている刺身は、新鮮なものを冷凍殺菌しているため、生のままでも食べられるようになっていますが、鮮度が落ちるのが早く菌が増殖しやすいので、解凍したあとはできるだけ早めに召し上がるようにしましょう。菌
時間が経ってしまった場合は、煮物などにして十分に加熱して食べることをおすすめします。


生臭さを和らげる方法

かつおは身に血合いが多いため、魚の生臭いにおいが強く感じる魚です。生臭さが苦手な方は、下記の方法で臭みを和らげると食べやすくなります。

【薬味とあわせる】薬味
にんにく、しょうが、ねぎ、みょうが など
殺菌作用や強い辛味成分により、においの強い薬味はかつおの生臭さを隠してくれます。 

【酸味があるものを加える】酸味
柑橘系(レモン果汁)、酢 など
レモンなどに含まれるクエン酸や、酢に含まれる酢酸が、魚の臭みを和らげてくれます。


おすすめの食べ方

初がつおと戻りかつおでは、栄養成分が異なるため、おいしい食べ方も異なります。

●初がつお・・・刺身、たたき
脂がなくさっぱりと食べられるので、刺身やたたきにむいています。初がつおは戻りかつおに比べて腹身部分の皮が柔らかく冷凍加工されたものなら前述の寄生虫の心配もなく食べることができます。皮の部分はコリコリとした食感で、少し甘味があるため皮付きを選ぶのがおすすめです。加熱すると身がパサつきやすく、煮物などの加熱調理より生で食べる方が初がつおのおいしさを味わえます。

●戻りかつお・・・刺身、煮物
刺身の場合は、皮をむいて厚めに切ると身の旨みをたっぷり味わえておいしいです。また、脂がのっているので、火を通しても初がつおほど硬くなりにくいので、煮物にもむいています。


おすすめレシピ

かつおは、刺身などメイン料理として食べることが多いですが、大人数のときには野菜などと和えると、かつおの量が少なくてもボリュームのある1品になります。一緒に和える野菜をみょうがなどの味のある野菜にし、味噌で味をしっかりつけ、ごまの香ばしいかおりにより、かつおの生臭さが苦手な方でも食べやすいレシピになっています。

●初がつおのごま味噌和え

【材料】(2人前)無題
・初がつお(たたき切り身) ・・・100g(約6切れ)
・新玉ねぎ ・・・1/4個
・水菜 ・・・小1株
・みょうが ・・・1個

[タレ]
・味噌 ・・・大さじ1
・すりごま ・・・小さじ2
・しょうゆ ・・・小さじ1
・砂糖 ・・・小さじ1/2
・みりん ・・・小さじ2
・酒 ・・・小さじ1
・にんにくチューブ ・・・1.5センチ程度

【作り方】
1.初がつおは一口サイズに切り、水菜は3cm程度、みょうがは千切りにします。
2.新玉ねぎはスライサーなどで薄くスライスし、水にさらしておきます。
3.タレは材料を全て混ぜ合わせます。
4.ボウルに1と、よく水をきった2、3のタレを入れ、混ぜ合わせます。
5.お皿に盛り完成です。

【アレンジ】
・最後にごま油を加えるとより風味がよくなります。