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栄養コラム

No.46

2007年6月1日

国立健康・栄養研究所認定 栄養情報担当者(NR) 健康運動指導士 管理栄養士 須藤 律子

そろそろ梅雨を迎える時期となりますが、そもそも「梅雨」という言葉は、中国で梅を収穫するこの時期に降る雨を「梅雨」と呼び、それが日本に伝わったという一説があります。
「梅」と言えば日本人にとっては古くから認められている「健康食品」です。
梅干し、梅酒、はちみつ漬け、甘露煮、ジャム、梅肉エキスなどを手作りされる方も多いことでしょう。梅雨入りの6月は翡翠色の青梅のシーズンですが、うっかりしていると熟して色づいてきます。新鮮な青梅も充分に堪能しましょう。今回は梅雨に因んだ「梅」がテーマです。
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梅の歴史・・・「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ」

これは平安時代に菅原道真が常に愛していた自宅の梅に別れを惜しuemehana
んで詠んだ「飛梅伝説」の有名な歌です。
梅の原産地は中国で日本へ伝わったのは奈良時代以前ですが、日本ではこのように観賞用として広まりました。
その後、梅の効用についても注目され始め、日本最古の医学書「医心方」に梅干しが記載されています。
一般的に食されるようになったのは鎌倉時代。公卿や武家社会のおもてなし「椀飯(おうばん)」に添えられた縁起物だったり、また禅宗
の僧には「茶菓子」として用いられていたようです。今とはちょっと
違いますね。
因みに、現在用いられている「大盤振る舞い」という言葉の本来の意
味は、このおもてなしで行う振る舞いからきていますので、正しくは
「椀飯振る舞い」のようです。

戦国時代になると、梅干しの果肉と米粉と砂糖を練った「梅干丸」が戦場食として活用されました。激しい戦闘や長い行軍での息切れを整えたり、生水を飲む際の殺菌用、また見るだけで口にたまる唾液で喉の渇きを癒すものとして使われたようです。
一般家庭にも江戸時代に入ってから普及され始め、冬が近づくと「梅干し売り」が街を呼び歩く、冬を告げる風物詩でした。
「日の丸弁当」なる言葉が生まれたのは明治時代。庶民の食卓に定着したという事ですね。


梅は三毒を絶つ

「梅は三毒を絶ち、その日の難を逃れる」と昔から言われています。三毒とは、食べ物の毒、水の毒、血液の毒です。
食べ物の毒とは食物中に付着するバクテリアなどの事、水の毒とは水に含まれる病原菌、血液の毒とは疲労のもとになる乳酸などを指し、梅に含まれる様々な成分がこれらの毒を絶って健康な体をつくるという事です。
古の日本人が梅をうまく活用していたことがうかがわれますね。


梅の効能

その他にも梅には様々な効能があります。

●疲労回復
梅はとても酸味が強いものですが、その主成分は豊富な有機酸です。gattu
中でも成熟するにつれてクエン酸が多くなり、脂質や糖質の代謝を活発にして乳酸の蓄積を防ぎ、疲労回復に優れた効果を発揮します。

●殺菌・抗菌効果
梅干しの酸は強力な殺菌効果があるので食中毒の予防にも有効です。お弁当のご飯やおにぎりに梅干しがつきものなのはご飯を腐りにくくするためでもあります。湿度の高い日本の風土にぴったりの天然の防腐剤ですね。
また胃腸内の病原菌の殺菌や繁殖を抑える効果もあります。明治時代にコレラが大流行した際にも梅干しの需要が伸びました。baikinn

●カルシウムの吸収を促進
日本人が慢性的に不足している栄養素はカルシウムですが、カルシウムは非常に吸収されにくい栄養素であるため、吸収率を高める必要があります。それを手助けするのが梅に含まれるクエン酸です。

●唾液分泌促進
梅干しは見ただけでも唾液が出てきます。唾液には消化酵素やホルモンhaなどが沢山含まれています。ご飯をよく噛んで食べると口中が甘くなるのは唾液中に含まれているプチアリンという消化酵素がデンプンを甘い麦芽糖に変えることによります。
またパロチンという唾液腺ホルモンは、老化防止ホルモン、若返りホルモンといわれ、骨や歯を丈夫にしたり、血管の若さを保ち、皮膚や毛髪の発育を助ける働きがあります。
その他、口中の殺菌・抗菌作用や食べ物のカスを歯に付きにくくするな
ど虫歯や歯周病の予防にもなります。


食べてはいけない食べ合わせ!?・・・「うなぎと梅干し」

この食べ合わせは如何なものか?
体調に悪影響を及ぼすという明らかな医学的根拠はありません。
うなぎは脂肪の多い食品なので、消化を高める梅干しとの組み合わせはマルです。
このような迷信は、贅沢や過食の戒め説や、梅の酸味によってうなぎの腐敗に気付かない事を恐れた食中毒の予防説とも言われています。


梅のレシピ

梅シロップは冷水や炭酸で割って飲むと夏バテ防止になり、梅の効能を得られます。手作りゼリーなどにも応用して下さい。

☆梅シロップ☆

【材料】
青梅  1kgnomimono
氷砂糖 1kg
食酢(米酢)又はホワイトリカー100-200cc


【作り方】
①青梅は丁寧に水で洗い、たっぷりの水につけて一晩アク抜きをします。

②保存瓶を用意します。綺麗に洗って水気を拭き取った後、リキュールをしみ込ませた
 キッチンペーパーなどで中を消毒して下さい。

③青梅はへたの部分を竹串などで取り除き、1粒ずつ充分に水気を拭き取ります。

④殺菌した保存瓶に青梅と砂糖を交互に入れます。最後に食酢(又はホワイトリカー)を入れ、
 梅や砂糖に充分になじませるようにしてから蓋を締め、なるべく涼しい冷暗所で寝かせます。

⑤時々瓶を揺すり、梅と砂糖をよく混ぜ合わせ、なるべく早く砂糖が溶けるようにしましょう。

⑥梅がしぼんできて3週間ほどすると、梅のエキスが抽出されてきますので梅を取り出します。

⑦できあがったシロップを保存瓶に入れ、冷蔵庫に保存してください。

※できるだけ早く砂糖を溶かすことがポイントです。青梅に竹串やフォークなどで穴を開けると
 梅のエキスが早く出ます。

※氷砂糖以外にはちみつでも作れます。グラニュー糖や上白糖、三温糖などの場合は、瓶の底に
 砂糖が沈んで溶けにくくなりますので、こまめに梅と砂糖を混ぜ合わせるようにしましょう。

※しわしわになった梅はエキスが出てしまっていますが、おやつ代わりにでもどうぞ。