今年の夏は残暑もかなり厳しい「酷暑」でしたが、10月に入りようやく秋らしい過ごしやすい季節になってきました。
さてこれからは「スポーツの秋」「読書の秋」・・・そして「食欲の秋」!!
市場にも数々の「秋の味覚」なるものが出回ってきます。今回は初秋の風物詩「戻りがつお」がテーマです。
堅い魚?勝つ魚?
かつおは日本書紀や万葉集に「頑魚」「堅魚」として登場するほど、古くから食されていたようですが、その頃の食べ方は干して加工したものを食べることがほとんどで、肉質がかたくなることからこのような呼び方がされていたとか。
とはいっても現在の「かつお節」とは異なり、どちらかというと干物に近いもののようで、かつお節が作られるようになったのは江戸時代からです。
また「かつお」という名前から、戦国時代では「勝負に勝つ縁起のよい魚」として、武士階級に需要が広がり、兵食用としても珍重されたようです。
旬は2回
かつおの旬は春と秋の2回あります。
まずは春。新緑の初夏に黒潮にのって北上し、日本近海にたどり着くものを「初がつお」といいます。
江戸時代前期に詠まれた「目に青葉 山ほととぎす 初がつお」という有名な句があるように、初がつおは春の代名詞だったんですね。当時は春のかつおが初物として珍重され、初物好きの江戸っ子は競って高価な初がつおを買い求めていたと言われています。
そして夏場に北上し、北の海で大きく育ち、水温が低下し始める秋口に南下してくるものを「戻りがつお」といいます。
初夏の「初がつお」は脂肪が少なく身がしまりさっぱりとした味に対して、秋の「戻りがつお」はよく成長していて脂がのり、赤身の中に脂が入り濃厚な中トロにも似た味わいとなります。
美味しい旨味・・・アミノ酸パワー
かつおは時速50-60km程の高速で泳ぎ続ける回遊魚のため、そのエネ
ルギーの元になるATPという物質が白身魚の3倍程もあります。
このATPが酵素によって分解されイノシン酸という旨味成分に変わる為、かつおはかつお節としてとても美味しいだしが出るのです。
また、かつおのたんぱく質にはアミノ酸がバランスよく含まれています。
特に、ヒスチジンとアラニンが結合した型で多く含まれている為、
疲労回復・集中力が高める効果が高いといわれます。
スポーツをする方や疲れやすい方にはお勧めの食品です。
栄養面は「戻りがつお」に軍配!
かつおには良質なたんぱく質が豊富に含まれています。またカルシウムの吸収を
助け、骨粗しょう症を予防するビタミンDや、貧血を予防する鉄分などが豊富なので、特に女性に嬉しい食材です。
また疲労回復のビタミンB1も多いので、わさび醤油ではなく、にんにくやねぎなどの薬味と合わせて食べることでビタミンB1が体内にとどまりやすい形に変化し、疲労回復効果が倍増します。
「戻りがつお」と「初がつお」の栄養的な大きな違いは脂質量。
「戻りがつお」には「初がつお」の10倍以上の脂質が含まれている
のです。
しかしその脂肪には血液をサラサラにするEPAや、脳の働きを活性化するDHAなどが多く含まれてますので、動脈硬化や血栓症を予防し、生活習慣病予防に大いに役立つ「メタボリック対策」の優れた食材といえます。
美味しいかつおの選び方
【サクの場合】
■身の色が鮮やかな赤紅色のもの
かつおの身は新鮮なときは、鮮やかな赤色をしていますが、鮮度が悪くなると色素の中の
鉄分が酸化して、黒っぽい赤色になります。
【まるごと1匹の場合】
■縞模様がはっきりしているもの
腹部の縞模様は鮮度が低下するとぼやけてきます。
■太っていて、身がしまっているもの
ふっくらと丸みを帯びているものほど脂がのっています。また、触ることが可能であれば
腹部を軽く指で押してみましょう。
身が戻ってこないものは鮮度が低下してやわらかくなっている可能性があります。
■目が澄んでいて、エラが赤色のもの
魚全般で共通ですが、鮮度が低下すると目が濁ってきます。
また、エラがきれいな赤色のものは鮮度がよく、鮮度が低下してくると黒っぽい色に
なってしまいます。
戻りかつおのレシピ
初がつおはさっぱりしているので表面をさっとあぶり焼きした「たたき」が美味ですが、今が旬の脂のたっぷりのった戻りがつおは「刺身」が一番です。
傷みやすい魚なので、新鮮なうちに刺身やたたき、またはマリネなどにしていただきましょう。抗酸化力の高い生姜やにんにくとあわせると脂質の酸化をおさえられます。
●韓国風かつおのサラダ●
【材料】4人分 ・かつお(刺身用又はたたき用) 1本 ・玉葱 1/4個 ・ミニトマト 8個 ・セロリ 1/4本 《ドレッシング》 ・味ポン酢 大さじ6杯 ・ゴマ油 大さじ1杯 ・コチュジャン お好みで適量 ・おろしにんにく 適量 ・パセリのみじん切り 適量 (大葉でも可) |
【作り方】
①かつおは沸騰したお湯にさっと通し、冷水にとって水気をふき、5mm厚さに切ります。
②玉葱はみじん切り、ミニトマトは半分に切ります。
セロリは薄めのせん切りにして軽く塩でもんでおきます。
③ドレッシング材料を合わせ、①、②をあえてできあがり。