ハンバーガーや肉料理を食べるときに必ずついてくるピクルス。
ヨーロッパをはじめとする西洋のお漬物ですが、食材の栄養を逃さずに長期間保存できる賢い保存食のひとつなのです。冷蔵庫にピクルスのビンがひとつあれば、ちょっと物足りないとき、野菜が不足しているときにも手軽に1品プラスできますし、さらに酸味のきいたピクルスは、暑い夏に向け夏バテ対策にもおススメです。
今回は、ピクルスについてお話します。
ピクルスの由来と歴史
ピクルスは、欧米に古くからある野菜の保存食でいわば西洋の漬物です。ピクルスは、とても古い歴史を持った食べ物で、その原型は4000年以上昔から存在していたといわれています。
紀元前2000年頃には、インド原産のきゅうりがメソポタミア文明で栄えたチグリス川流域へ持って来られ、ピクルスとして保存され食べられていたようです。
その後、ヨーロッパ全土、アメリカへと伝えられました。保存食の中でも野菜のみずみずしさを保ちながら保存できるピクルスは、いつの時代も重宝されたものでした。
バリエーション豊かな世界のピクルス
日本では、きゅうりのピクルスがハンバーガーに入っている程度ですが、本場ヨーロッパやアメリカではほとんどの野菜がピクルスになります。おなじみのきゅうりのほか、たまねぎ、にんじん、ピーマン、トマト、カリフラワー、セロリーなど日本でも良く見る野菜のほか、オリーブやビート(砂糖大根)、すいか、バナナ、マッシュルーム、ヒヨコ豆などあらゆる野菜や果物、豆などがピクルスに加工され、食されています。ヨーロッパやアメリカでは、ピクルス専門店や専門メーカーもあり、色とりどりの野菜が詰まったピクルスのビンが並んでいます。さらに、野菜のほかではニシン、いわしなどの魚やうずら卵を高濃度の酢でつけこんだものもあります。これらは細かく刻んでサンドイッチやサラダの具にして食べられています。
ピクルスの種類と栄養・効用
【ピクルスの種類と加工方法】
ピクルスは、加工の方法によって大きく2種類に分かれ、それぞれの風味や効用に特徴があります。
☆醗酵を利用して作るタイプ☆ ~強烈な酸味と豊富な乳酸菌~
食塩に食材を漬け込んで数日かけて発酵させ、強い酸味と風味をのせます。ドイツ料理に
欠かせない「すっぱいキャベツ」、ザウワークラウトがこれにあたります。
発酵させて作ったピクルスには、整腸作用のある乳酸菌が大量に含まれています。
そのため、便秘や肌荒れなど腸内環境の悪化でおきがちな身体のトラブルには効果が
あります。しかし、日本の醗酵漬物にくらべ、酸味がかなり強く、日本人には、
あまり食べられておりません。
☆発酵させずに作るタイプ☆ ~酢、ハーブなど漬け込み効果で野菜の栄養を逃さず保存~
発酵させないピクルスは、一度塩漬けした野菜を塩抜きしてから酢やワインのような
保存性に優れた液に漬け込んでつくります。日本で食べられるピクルスのほとんどがこちらの
タイプで、日本に輸入されてくるほとんどのピクルスがスイート・ピクルスといって、
甘酢にハーブが入った液に漬け込んだものです。比較的まろやかな酸味が特徴です。
野菜に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素を破壊せずに保存できるので、
肌の調子を整えたり、疲労回復、整腸作用が期待できます。また、漬け込み液に含まれる
酢は、疲労回復、食欲増進、胃もたれや消化不良の防止、さらには血圧、コレステロール
低下作用があるとされています。
いずれのタイプも、ピクルスは生活習慣病予防のためにとりたい栄養素や成分が一気に取れる賢い保存食といえるでしょう。
オリジナルのピクルスを作ってみましょう!
漬け込む野菜、漬け込み用の酢やハーブを使い分けることで、お好みに応じた味を作り出すことができます。ご家庭でピクルスを作るのであれば、季節ごとのおいしい野菜を漬け込むとよいでしょう。これからの時期では、ゴーヤやとうもろこし、ミニトマトなどの夏野菜をつかったピクルスがおすすめです。
また、日本の漬物と異なり、漬け汁にさまざまな香辛料、酢を使うことで色んなバリエーションのピクルスを楽しむことができます。香辛料でよく使われるのは、ローリエ、丁字、シナモン、タイム、セージ、カルダモン、コリアンダー、唐辛子、コショウ、しょうが、にんにく、オールスパイスなどです。漬け込む酢では、穀物酢のほか、りんご酢やブドウ酢などの果実酢を使うと、よりフルーティーな仕上がりとなります。
いろいろ試してオリジナルピクルスを作りましょう。
銀座のシェフ直伝、おいしいピクルスの作り方
ここで、イタリアンのシェフに教えていただいたおいしくて手軽に作れるピクルスのレシピをご紹介します。
お野菜のひとつひとつの風味が上手く引き出されていて、漬け込んだ液にそれぞれの野菜のおいしさが引き出されている一品です。苦手なお野菜がある方でも、このピクルスならそれぞれの野菜の独特の香りや青臭さが抜けるのでおいしく食べられます。ぜひお試しください。
【材料】(大きめのジャム用ビン1つ分)
~基本の食材~
小たまねぎ レンコン 赤ピーマン 黄ピーマン セロリー にんじん きゅうり カブ
※赤ピーマン、セロリーを加えると漬け込み液に香りが移り、一緒に漬け込む他の野菜の味が良くなりますので、ぜひ加えてください。
~漬け込み液の材料~
白ワインビネガー 1カップ(200cc)
白ワイン 1カップ(200cc)
水 1カップ(200cc)
砂糖 大さじ4 杯半(40g)
塩 小さじ2(12g)
ニンニク ひとかけら
唐辛子 半分
あれば、
コリアンダーシード ひとつまみ
ローリエ 一枚
【作り方】
1.野菜の下ごしらえをする。
小たまねぎは皮をむき、ヘタの部分を取り除いておく。
ピーマンは、種を取り除く。にんじん、レンコン、にんじん、かぶは皮をむく。
全ての野菜を食べやすい大きさの乱切りにする。
2.漬け込み液の材料を鍋に入れて沸かす。
このとき、小たまねぎ、レンコンなど生で食べられないものは鍋に入れて7割ほど
火を通す。
3.残りの野菜を入れて再度沸かし、そのまま常温でゆっくり冷ます。
冷めたら保存用の瓶にうつす。
【ポイント】
☆1種類の野菜のみでもおいしく作れますが、野菜の種類が多いほうがそれぞれの野菜の
風味を引き出しておいしくなります。
☆保存期間は1週間から10日程度。冷蔵庫にて保管し、早めに食べきってください。
☆雑菌の混入を防ぐために、箸やまな板などの調理器具は清潔なものを使用してください。
また、瓶を沸騰したお湯で煮沸消毒して保存されることをお勧めします。
漬け込む野菜は、レタスやほうれん草などの葉物を除けば何でもよいので、旬の野菜を入れると季節感が出て、よりおいしくいただけます。
これからの夏に向けてであればミニトマト、ゴーヤが特にお勧めです。とくにゴーヤは独特の青臭さと苦味が適度に消えるので、苦手な方でも食べやすくなります。
ミニトマトなどトマト類は、ヘタをとって切らずにそのまま入れてください。