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栄養コラム

きな粉

No.224

2022年8月1日

管理栄養士 板橋彩子

暑い日が続きますが、体調など崩されていないでしょうか。
今回は、きな粉をご紹介したいと思います。きな粉は昔から日本で食べられてきた食品で、今では様々な食べ物にアレンジして使われています。原料が大豆のため、栄養価が高く、普段から摂りたい食品であることはもちろん、今の時期のように夏バテなどで食欲が落ちる時でも、デザートや飲み物など、食べやすいものにさっと混ぜて栄養が摂れる便利食品でおすすめです。ぜひ、普段の生活に取り入れてみてください。


きな粉の種類

きな粉は、大豆を煎って粉にしたものです。砂糖と少量の塩を加え、もち、おはぎ、くず餅、
わらび餅など和菓子にかけて食べる際によく用いられており、日本人に馴染み深い食品になっています。
色は、黄色のものを多く見かけますが、実は大豆の煎り加減によって色が変わり、黄色から褐色のものがあります。また、青大豆からはうぐいすきな粉が作られ、淡く青みがかった色をしています。さらに、黒大豆から作られる黒豆きな粉は、外の黒い皮も粉にされているため、黒い点が混ざっているのが特徴です。
大豆は、みそ、しょうゆ、豆腐、納豆、油揚げ、卯の花(おから)、豆乳など、様々な加工品となって、昔から日本人の食生活を支えてきました。きな粉もそれら加工品の一つであり、良さがたくさん詰まっています。


きな粉の注目成分

きな粉には、さまざまな健康効果が期待できます。それらを担う注目の成分をご紹介します。

(1)イソフラボン

イソフラボンは大豆に含まれているポリフェノール類の一種です。イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをすることから、「植物性エストロゲン」とも呼ばれます。エストロゲンは様々な働きをしていますが、そのうちの一つに骨からカルシウムが溶け出すのを抑える作用があります。特に女性は閉経などで、エストロゲンが減少して骨粗鬆症のリスクが高まることから、エストロゲンの代わりの役目が期待できるということで、イソフラボンに注目が集まりました。

他にも、イソフラボンの摂取が多いと、更年期障害の症状が軽減したり、乳がんの発生率や胃がんの死亡率が低下するなどの効果も分かっています。また、イソフラボンには、コレステロールや血圧を下げる働きがあることから、動脈硬化を予防したり、脳卒中や心臓病などの重篤な疾患発症のリスクを下げることにもつながる可能性が考えられ、さらにイソフラボンへの期待が高まっています。
日本人のイソフラボン摂取量は、平成14年度国民栄養調査の大豆食品等の摂取量からの試算によると1日あたり18mgです。食品安全委員会で設けられている特定保健用食品等の摂取を含めた大豆イソフラボンの安全な摂取目安量は1日あたり70~75mgで、まだまだ安全な摂取まで
余裕がありますので、健康のためにも積極的な摂取がすすめられると言えます。
※妊婦や妊娠の可能性のある方、15歳未満の方は、十分な試験データが得られていないことから、サプリや特定保健用食品などで通常の食事に上乗せしてイソフラボンを摂取することは勧められていませんのでご注意ください。

(2)大豆たんぱく質、大豆ペプチド

きな粉は大豆から加工されたものなので、大豆のたんぱく質を摂ることができます。大豆たんぱく質は、肉や魚、卵などと同等に良質なたんぱく質であることに加え、血中コレステロールの低下や動脈硬化を予防する効果が期待できます。また、大豆たんぱく質が分解される過程で生成される大豆ペプチドにも血圧の上昇を抑制する効果があります。

そんな大豆たんぱく質を日頃から摂りたいところですが、手軽に摂取できるのがきな粉です。
例えば、きな粉大さじ1杯は、ゆで大豆15~18g(約15粒程度)に相当します。ゆで大豆は日持ちがしないので、買うと早めに使い切る必要があることなどから、ゆで大豆を頻繁に買うという方はあまり多くないかも知れません。一方、きな粉であれば、保存がきき、1袋購入しても何日にも分けながら継続して摂ることができるため、上手く利用することで、大豆そのものよりも手軽に大豆たんぱく質を摂れる食品としておすすめです。また、納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品と比較しても、きな粉大さじ1杯程度の量で、これら大豆製品の約1/3の大豆たんぱく質を摂ることができます。

(3)大豆オリゴ糖、食物繊維

きな粉の大豆オリゴ糖は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やし、腸内環境を良くしてくれます。また、きな粉は食物繊維も豊富で、特に腸の蠕動運動を刺激する不溶性の食物繊維が多く含まれていますので、きな粉を摂ることでお腹の調子が整い、便通も良くなります。


きな粉の保存

きな粉は、そのまま使うことができ、粉に加工されていて水分が少なく
保存が効く点で便利ですが、何回かに分けて使うことが多いため、開封後でも美味しさを長持ちさせるために、適切に保存することが大切です。
保存する際は、空気中の湿気を吸ってしまわないように、ジッパーの
付いたポリ袋などで、しっかり密封するようにしましょう。ジッパーのついた袋で売られている場合もありますので、その際は空気を抜い
て、ジッパーをしっかり閉めましょう。保存場所は、温度が低く湿気
の少ない冷蔵庫がおすすめです。開封後は賞味期限に関わらず早めに
食べるようにしましょう。


 きな粉の多様なアレンジ

今やきな粉はお餅や和菓子以外にも様々な食べ物にアレンジして使われていますので、そのいくつかをご紹介したいと思います。身近にも、きな粉を使ったものがあるかも知れませんので、ぜひ探してみてください。

●パン類
「きな粉揚げパン」
揚げパンにきな粉をまぶした、給食でもお馴染みの揚げパン
「きな粉トースト」
バターを塗ったトーストにきな粉やはちみつをかけたトースト
きな粉パンケーキ」
ホットケーキミックスにきな粉をプラスして焼いたパンケーキ
「きな粉のスコーン」
材料の粉にきな粉を混ぜて焼いたスコーン

●洋菓子
「きな粉クッキー」
生地にきな粉を使ったクッキー。卵や小麦粉を使わないで作ることもできるので、卵やグルテンアレルギーの方も安心して食べられます
「きな粉プリン」
卵液にきな粉を混ぜて作ったプリン。カラメルの代わりに黒蜜をかけて食べます
「きな粉のロールケーキ」
生地やクリームにきな粉を混ぜて焼いたロールケーキ。黒豆やあんこ、わらび餅などが一緒に巻かれているものもあります
「きな粉のバウムクーヘン」
生地にきな粉を使ったバウムクーヘン。食べる時に黒蜜をかけるタイプもあります

●ナッツ
「きな粉くるみ」
くるみをキャラメルでコーティングし、きな粉をまぶしたお菓子。コーヒーやお茶のおともにぴったりです。アイスなどのトッピングにもなります


思い立ったらすぐできる!簡単きな粉アレンジ

きな粉は、1回にたくさん摂るのは大変ですので、少しずつの量を継続して摂ることがおすすめです。とはいえ、きな粉を摂るために、デザートや飲み物が増えるようになってしまうと、カロリーや糖質の過剰摂取につながる恐れがありますので、食事の中で摂れる方法をご提案したいと思います。思い立ったらすぐにできて、気軽に日常的にきな粉を取り入れられる簡単なアレンジをご紹介いたします。ぜひご参考にしてみてください。

きな粉入り味噌汁
【材料・分量(1人分)】
・味噌汁(インスタントも可) 1杯
・きな粉           大さじ1/2(3-4g)

【作り方】
1.味噌汁をよそったお椀に、きな粉大さじ1/2を入れてよく混ぜます。きな粉が全体に溶けたら完成です。

【ポイント】
お椀によそった後に、きな粉をプラスするので、きな粉の量はそれぞれ好みに合わせて調整してください。きな粉を入れるとコクが出るため、味噌汁の味付けを薄めにしても美味しく食べられます。

小松菜のきな粉和え
【材料・分量(2人分)】
・小松菜    150g

<和えダレ>
・きな粉    大さじ1(6g)
・すりごま   小さじ1(2g)
・しょうゆ   小さじ1.5(9g)
・みりん    小さじ1.5(9g)

【作り方】
1.小松菜は洗って、熱湯でゆでた後、水に取ります。
2.軽く絞って水分を切り、食べやすい大きさ(3cm程度)にカットします。
3.ボウルに和えダレの材料を全て混ぜ合わせておきます。
4.3に小松菜を入れて和えて完成です。

【ポイント】
和える野菜は、他にもほうれん草、チンゲン菜、いんげん、ブロッコリー、もやしなどお好きな野菜でお楽しみいただけます。