日に日に寒さが厳しくなり、空気が乾燥する冬本番となってきました。喉の乾燥を防ぐために、のど飴を食べる機会が増えた方も多いのではないでしょうか。今月は、のど飴にも含まれている「キシリトール」についてご紹介します。
キシリトールとは
キシリトールについてご存じですか。「ガムやのど飴に含まれている」といったイメージはあっても、実際はどういうものかをご存じの方は少ないのではないでしょうか。キシリトールとは、自然界に存在する糖質の1種で、「熱・酸・アルカリに強い」「微生物の栄養源になりにくい」「消化吸収されにくい」といった特徴をもつ「糖アルコール」に分類されます。私達がガムなどのお菓子の形で口にするキシリトールは、白樺や樫といった、木から抽出される原料を加工して作られている人工甘味料ですが、実はイチゴやカリフラワーなど果実や野菜の中にもキシリトールは存在しています。
日本では、1997年に食品添加物として認可されており、人体にも安全であることが知られています。
特長
①砂糖とほぼ同じ甘味
キシリトールは砂糖と同程度の甘さがあるため、キシリトールを甘味料として使用した際、
むし歯の原因となりうる糖(砂糖など)で甘みを補わなくても十分な甘みを出すことができます。また、キシリトールのカロリーは、砂糖の約75%(3kcal/g)と言われており、余分なカロリー摂取を抑えることに繋がります。その他、水に溶けやすく、溶ける時に熱を奪う性質があり、スーッとした冷涼感、爽快感を感じます。
②むし歯の原因にならない甘味
一般的に食品の中に含まれる糖はむし歯菌のえさとなり、それによって食後の口の中では酸が生成されます。生成された酸は歯を溶かし、むし歯の原因となります。しかし、キシリトールはむし歯菌のえさとはならず、歯を溶かす酸も生成されません。(図1)
また、キシリトールは甘味が強く、唾液の分泌を刺激するという作用もあります。この、「酸を作らない」「唾液の分泌を刺激して酸を中和する」の2つの作用が、キシリトールがむし歯の原因にならない理由です。
(図1) 歯垢を集めた試験管内(酸素のある状態)において、ショ糖(砂糖)から生成される酸の量を100としたとき、キシリトールから生成される酸の量は0となっています。(実際の歯垢中は無酸素状態ですが、同様に酸は産生されません)
(参考 日本トゥースフレンドリー協会HP https://www.toothfriendly-sweets.jp/letter/kanmi/kanmi.html )
③むし歯を防ぐ甘味
食事をすると酸が産生され、酸によってカルシウムが溶け出しますが、キシリトールはその溶け出したカルシウムと結合することにより、歯の修復(再石灰化)を促します。
④血糖の急上昇を抑える甘味
キシリトールは体への吸収が遅く、血糖値の上昇が緩やかです。また、代謝するのにインスリン(血糖値を下げるホルモン)を必要としないため、血糖値のコントロールが必要な糖尿病の人にとっても、比較的安心して摂取ができます。ただし、0kcalではないので摂りすぎてしまうと、お菓子や甘いものを食べるのと同様に余分なカロリー摂取になります。食べる量には注意しましょう。
特定保健用食品の仲間入り
キシリトールは上記の特長②③の「むし歯予防」効果が認められ、2002年に特定保健用食品(*)の仲間入りをしました。現在、キシリトールが含まれる19の商品が特定保健用食品として認められており、それらの商品には「むし歯の原因にならない甘味料を使用しています」、「歯の再石灰化を増強し、歯を丈夫で健康に保ちます」という表記がされています。
(*)「特定保健用食品(トクホ)」とは・・・からだの生理学的機能などに影響を与える成分を含み、特定の保健の目的が期待できることが国の審査によって認められた食品を指します。
おすすめの取り入れ方
日本歯科医師会や厚生労働省において、むし歯予防のためには、キシリトール含有率が商品の炭水化物量の50%以上配合されているガム、またはタブレット5~10gを毎食後に摂取し、これを継続することが推奨されています。
★キシリトールの含有率(%)=キシリトールの量(g)÷炭水化物の量(g)×100
ただし、砂糖などの糖が含まれているものはむし歯の原因となる「酸」を産生してしまうので、逆効果となります。商品を選ぶ際は、キシリトールの割合の確認と、砂糖などの甘味料が含まれていないかを確認することが大切です。
また、口腔の健康を保つ手段として重要なポイントは、
①歯を磨く
②フッ化物配合歯磨き剤を上手に使う
③正しい食生活
④定期的な歯科検診
(参考:日本歯科医師会HP https://www.jda.or.jp/park/prevent/xylitol_05.html)
が基本となり、キシリトールを常用することで、①~④の効果を著しく向上させると言われています。①~④をしっかりと行ったうえで、より効果を得るためにキシリトールを取り入れるようにしましょう。