暑さが厳しい季節となりました。冷房と外気温の温度差が激しく、体調がすぐれなかったり、夏バテをしている方も多いのではないでしょうか。今月はまだまだ旬の「すいか」についてご紹介します。旬の食材を食べて残暑を乗り切りましょう。
すいかとは
すいかは5~8月に旬を迎える、夏を代表する果物です。原産地は南アフリカで、4000年前のエジプトの壁画からもすいかの栽培がうかがえるなど、歴史は古く、ヨーロッパ、インド、中国と伝来しました。「西域から伝わった瓜」という意味から中国で「西瓜」と呼ばれるようになり、日本にも伝わったとされています。現在は皮の色が緑や黒、縞の有り無しなど、品種改良が進み、小玉の品種もあります。その中でも日本で一番親しまれていると言われるのが重さ5~8kgにもなる「大玉すいか」です。
赤色すいかと黄色すいかの違い
すいかといえば「赤い果肉」のイメージが強く、スーパーなどでも多く見かけるのは赤い果肉の品種ですが、黄色い果肉の品種も目にすることがあります。黄色すいかは、赤色すいかを品種改良や遺伝子組み換えなどで人工的に作られたものというイメージを持たれることが多いですが、実はもともとの野生のすいかは、黄色や白色であったと言われています。果肉の色の違いは含まれる色素の違いによるものです。
赤色すいか・・・リコピン(※トマトなどに含まれる赤色色素)、βカロテン
黄色すいか・・・キサントフィル(※パプリカなどに含まれる黄色色素)
100gあたりに含まれる栄養素は以下です。
水分 | カロリー | 糖質 | 食物繊維 | カリウム | βカロテン当量 | ビタミンC | |
赤色すいか | 89.6g | 41kcal | 9.5g | 0.3g | 120mg | 830μg | 10mg |
黄色すいか | 89.6g | 41kcal | 9.5g | 0.3g | 120mg | 10μg | 10mg |
(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)
比較してみると、唯一大きな差がみられたのがβカロテン当量で、他、水分、カロリー、食物繊維量、カリウム量、ビタミンC量などほとんどの栄養において差はないことが分かります。βカロテンは体内でビタミンAに変換され、粘膜の健康の維持などに関わる栄養素なので、βカロテンを補いたいときは「赤色すいか」の方がおすすめです。ただし、水分やカリウムなど他の栄養素に関しては、赤色同様「黄色すいか」でも十分補うことができます。
日本の夏の風物詩「すいか割り」にはルールがある!?
日本にはすいかを使った「すいか割り」という遊びがあり、誰でも馴染みがあるのではないかと思います。すいかを1つ用意し、目隠しした人が周囲の声を頼りに割る、といったものですが、この「すいか割り」に公式のルールがあることはご存じですか?これは山形県の「JAみちのく村山」の有志によって作られた組織「日本すいか割り推進協会」から発表されているもので、すいかの消費拡大を目的として定められたルールですが、ルールが定められるほどすいか割りは馴染み深く、同様に、すいかも親しまれている果物であることが分かります。
(参考:http://www.mitinoku.or.jp/tokusan/suika_wari_rule.pdf )
すいかの特長
・豊富な水分量と適度な糖分
すいかは、英語で「ウォーターメロン(watermelon)」と言われるほど、水分量が多く、みずみずしいのが特長です。果物全般において水分量は多いですが、すいかはその代表格です。
(日本食品標準成分表2020年版(八訂)の水分を参考)
夏は気温上昇などによる体温調節による発汗が多く、普段以上に体内から水分を排出するため、飲み物だけではなく食べ物からの水分補給も大切です。その点、すいかを食べることは水分を補う点でもとても良いといえます。
また、エネルギー消費が激しい夏場では、水分補給を水やお茶だけで行い、食事量の少ない状態が続くと、様々な栄養素が不足して夏バテの要因になります。なかでもエネルギー不足は体力を消耗させ、夏バテが進みやすくなるため、素早くエネルギーチャージすることが夏バテ対策には重要です。エネルギーに転換されやすい糖が含まれた飲料として「スポーツドリンク」がありますが、すいかにも体のエネルギーに転換されやすい「果糖」や「ブドウ糖」といった糖が含まれています。冷えたすいかは、水分を補給したり体を冷やす効果があるだけでなく、エネルギー源となる糖もとることができる“天然のスポーツドリンク”ともいえるのです。
・血管拡張が期待できる「シトルリン」(アミノ酸)
シトルリンとはすいかをはじめとするウリ科の植物に多く含まれるアミノ酸で、1930年にすいかから発見されました。シトルリンは体内に取り込まれた後、一酸化窒素という成分を産生促進します。一酸化窒素は血管を柔らかくして拡張させる働きがあり、血流を良くしたり、血流の改善によって酸素や栄養素が体のすみずみに運ばれやすくなる、むくみや冷えの改善、といった作用が期待されています。
シトルリンはすいかの皮(白い部分)に多く含まれています。塩もみをして下処理をすると野菜のように料理に使うことができるので、赤い実の部分だけでなく、皮までおいしくいただきたいですね。
すいかのおいしい食べ方
【選び方】
選ぶ際のポイントは以下です。
①重量感があるもの
②縞模様がはっきりしていて縞の部分が少しへこんでいるもの
③ヘタの切り口がみずみずしく、皮につやがあるもの
①と②は大きくたくましく育ち、栄養をため込んでいる目安で、③は新鮮さの目安です。
また、最近はカットされたすいかを目にすることも多いかと思いますが、店頭の「糖度表示」もおいしいすいかを選ぶカギです。甘いすいかの目安は12度以上とされていますので選ぶときに意識してみてください。
【保存方法】
丸ごと購入した際は、風通しの良い場所に常温で保存することがポイントですが、すいかは追熟せず、採りたてが一番おいしいとされ、時間がたつほど味は落ちてしまいます。夏場の暑い時期は収穫後7日程度までがおいしく食べられる期間ですので、早めに食べましょう。
また、一度切ったすいかは表面をしっかりとラップで覆い、乾燥しないように保存します。冷蔵庫だと冷えすぎてしまうので、野菜室での保存が理想的です。
【食べ方】
すいかの一番おいしい温度は8-10℃といわれています。冷えすぎると甘みが落ちてしまうため、購入後は食べる2時間ほど前に冷蔵庫で冷やすのがおすすめです。ただし、冷蔵庫で保存していたすいかを食べる際は、食べる少し前に冷蔵庫から出しておくと、温度が少し上がりおいしく食べられます。
また、切り方にもポイントがあります。すいかは中心部分が一番甘みが強いので、中心部分が均等にいきわたるように切るとおいしく食べられます。
(図)半分の場合 (図)カットすいかの場合
おすすめレシピ
普段は捨ててしまいがちなすいかの皮を使った、山形県の郷土料理「だし」のアレンジをご紹介いたします。火を使わずに簡単に作れる夏にぴったりなレシピです。先ほどご紹介したように、「シトルリン」はすいかの皮に多く含まれているので、皮までおいしくいただきましょう。
旬の食材で作る!洋風 山形だし
【材料】保存容器 タッパー1つ分
・きゅうり 1本
・なす 1本
・パプリカ(黄色) 1/2個
・すいかの皮 90g(2切れ分)
・みょうが 3個
・生姜 10~15gほど(親指大サイズ1個)
・白だし 大さじ3
・オリーブオイル 大さじ1
・レモン果汁 大さじ1/2
【作り方】
①すいかの皮は外側の硬い部分を取り除き、5-6mmほどの角切りにする
②きゅうりは5-6mmほどの角切りにする
③なすは5-6mmほどの角切りにし、水にさらしてあく抜きをする(3分ほど)
あく抜き後、水からあげて、水気を切っておく
④パプリカは種を取り、5-6mmほどの角切りにする
⑤みょうがは縦半分に切り、5mm幅の薄切りにし、生姜はみじん切りにする
⑥①-⑤をすべてボウルに入れ、白だしを大さじ1杯加えて軽く混ぜ合わせてしばらく置く
野菜の水気がでてきてボウルの底に溜まってきたら、それを捨てる
⑦⑥に残りの白だしを入れ、全体を混ぜ合わせる
⑧最後にオリーブオイル、レモン果汁を加えて、冷蔵庫で1時間以上味をなじませて完成
【ポイント】
「だし」のレシピは“100軒の家があれば100種類の味がある”というほど多彩で、各家庭で現在も食べられている料理です。今回はオリーブオイルを使って、洋風にアレンジしました。パスタソースとして使ったり、バケットの上にのせて食べるのもおすすめです。また、他の具としては、粘りがでるオクラや昆布などもこの洋風だしに合いますので、お好みの具を加えてみてください。