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栄養コラム

桃カステラについて

No.207

2021年3月1日

管理栄養士 田中希歩

3月に入り、少しずつ暖かい日が増えてきましたね。3月3日の桃の節句には、桜餅やひなあられなど、行事ならではの食べ物がありますが、長崎県では「桃カステラ」と呼ばれる食べ物が食べられます。今月は長崎県の郷土料理、桃カステラについてご紹介いたします。

桃カステラとは

桃カステラとはその名の通り、桃をかたどったカステラで、長崎県の郷土菓子です。桃の果肉や果汁を使用しているわけではなく、カステラ生地の上を砂糖(すり蜜)でコーティングし、桃の形に見立てて飾りつけをして作られています。
長崎県では桃の節句や、出産祝いなど、お祝い事の贈り物として親しまれており、郷土料理を知る食育の一環で学校給食に出ることもあります。

桃カステラと長崎の歴史

カステラの原型は「パン・デ・ロー」という焼菓子で、南蛮貿易によってポルトガル人から伝えられたものです。その後、江戸時代、長崎に多くの砂糖が輸入されるようになり、砂糖を多く使った甘いお菓子として変化していきました。
一方、中国では桃は「不老不死の果実」とされ、長寿を願ってお祝い事で食べられていました。
南蛮貿易や鎖国の時代、長崎は西洋や中国との窓口であり、文化が伝来しやすい環境であったと考えられます。桃カステラはまさにその頃の、スペイン、ポルトガルや中国の文化を折衷した、長崎ならではのお菓子であるといえるのです。

シュガーロードと伝来菓子

鎖国の時代、唯一の窓口であった長崎・出島に荷揚げされた砂糖は、長崎から佐賀、小倉へと続く「シュガーロード」を通り、京や大阪、江戸へ運ばれました。シュガーロードでは砂糖や菓子作りの技法などが入手しやすく、外国から伝わったお菓子は各地域の文化を取り入れ発展していったといわれています。カステラ以外にも、シュガーロードで発展した銘菓は「日本遺産()」にも選定され、各地に残っています。一部ご紹介します。

()日本遺産ポータルサイト http://japan-heritage.bunka.go.jp/ja
地域の歴史的魅力を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として文化庁が認定しているもので、他には弘法大師空海ゆかりの札所をめぐる「四国遍路」や、
「東海道中膝栗毛」「東海道五十三次」に描かれた弥次さん喜多さんの駿州の旅などが認定されています。

・丸ぼうろ

一見、何の変哲もない焼菓子ですが、名前も製法も南蛮渡来の南蛮菓子です。伝来当初の丸ぼうろは、西洋人にとって船員たちの船内での保存食でもあったようです。佐賀県では婚礼の引菓子や弔事菓子としても馴染みが深く、素朴な甘さが広がります。

・金平糖

金平糖はポルトガルからもたらされた異国の品々の中でもひときわ美しく人々の目を引いたお菓子だったそうです。ポルトガル人がのど薬の代わりにしていたといわれ、当時はハッカが含まれていました。金平糖は白や黄色、赤など様々な色があり、見た目が美しいお菓子ですが、黄色はクチナシ、赤は紅花といった着色料を使用し、昔から色とりどりのものが好まれていました。

・小城羊羹  

佐賀県中部に位置する小城は、 羊羹の原料となる小豆やいんげん豆の産地であったことに加え、名水百選に選ばれるほど水が豊かな環境に恵まれ、羊羹作りが発展しました。小城羊羹の外側は白く糖化しているのが特徴で、防腐剤がなかった時代、日持ちを良くするための工夫であったとされています。外側はしゃりっとした歯ごたえで、中はねっとりとしており、2つの食感が味わうことができます。

桃カステラの栄養(1個当たり)

桃カステラには(大)(小)の大きさの違いがあり販売されていますが、(大)の大きさはケーキ1カットほどで、和菓子の中ではとても大きいです。砂糖が多く使用されているため、カロリーは高めです。(参考:https://www.castella.website/lp/000000000128/

カロリー:656kcal
たんぱく質:10.4g
脂質:7.9g
炭水化物:137.6g

おすすめレシピ

桃カステラは1個600円前後ととても高価なうえに、長崎県以外で購入できる機会はとても少ないですが、スーパーなどで購入できるカステラを使って作れるレシピを紹介します。伝統的な技術によって作られるものには劣りますが、飾りつけなどは小さなお子様でも楽しむことができます。

・自宅で作ろう!桃カステラ

【材料】(手のひらサイズ2個分)
〈生地〉
・市販のカステラ      8cm×8cm角、高さ4cmほどの大きさを2個
             (大きさはお好みで調節可)
・食紅          適量

〈すり蜜〉
・グラニュー糖      150g
・水あめ          5g
・水           60ml

〈マジパン(葉や枝)〉
・アーモンドプール    80g
・粉糖          80g
・卵白          1個分
・抹茶粉末        適量
・ココアパウダー     適量

【下準備1 すり蜜】
①すり密の材料すべてを鍋にかけて沸騰させる(温度計がある場合は114℃まで熱する)
②沸騰の泡が小さくなりクツクツとなったら火を止める
③ボウルに取り出し、粗熱が取れたら木べらで撹拌する
④白くなり結晶化したら手で練り、1つの塊にする
⑤④は使用前に湯煎でドロッとした液状になるまで溶かしておく

【下準備2 マジパン】
①アーモンドプールと粉糖をポリ袋に入れ、よく混ぜる
②卵白を溶き、①に7割くらい加え手でよく混ぜる
③耳たぶくらいの硬さになるように、残りの卵白を調節しながら加える
④2/3ほどの量に抹茶粉末を練りこみ、4cmほどの長さで葉っぱをつくる(4枚)
⑤残りの1/3にココアパウダーを練りこみ、2cm程の枝を作る(2個)

【作り方】
①カステラ生地を手のひらサイズの桃型に切る 
②①の上部を準備しておいたすり蜜にくぐらせ、乾かす
③食紅を少量の水で溶き、②の表面に薄く塗り乾かす
④③を再度すり蜜にくぐらせる
⑤中央部分に箸で桃の筋をつけ、マジパンで作った葉、枝を乗せて飾りつける